第10章
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「死ぬより、辛い事って。」
「・・・。」
「この世にあると、思う。・・・?」
「・・・・。」
なぎがおれを、見つめる。
「・・・。なに、それも。・・・」
「・・・。」
「カウンセリングってやつの。一部?」
すごく、困ったような。顔をして。なぎが、おれを見る。
「・・・。」
おれは、別に。
可愛いこいつを。
困らせたい、ワケじゃない。
ぃや。困った顔も。超絶、可愛いけど。
・・・可愛い、過ぎるけど。
それでもって。その可愛い顔を少しだけ、歪ませた。そんな顔は。少しだけ。・・・・
何か色っぽくも、あって。
身体に少しだけ。・・・熱がこもる。
体温、上がりそ。・・・・
そう、思った瞬間。
ぴぴっと。モニターが忠実に。それを音で示した。
「・・・。」
「・・・・。」
なぎが。
さっとおれのおでこに手を充てる。
冷たい。・・・・すごく。
ひんやり、とした陶器のような質感、の。・・・手。
火照った、身体に本当にちょうど。・・・気持ちいい。
「熱い?」
「ん、少し。」
手の平を、ひっくり返してくれる。
「あ、すげぇ、気持ちい。・・・」
「ふふ。熱、あるね。8度2分くらい。」
「すげぇな、触っただけで、わかるんだ。」
「あなたの事なら。」
「・・・。」
「だいたい、わかるよ。」
「・・・・。」
「なんてね。」
そんな事言って。なぎが席を立った。
・
「・・・。」
すぐに。戻って来たなぎがおれの、すぐ傍に立って。身体ごと、覆い被さる。・・・。あ、
すげぇ、いい匂いがする。・・・・
洗ったばっかの。シーツみたいな。・・・・
そして、そのまま、おれの頭を抱えるように。大事そうにそっと、手を入れて。持ち上げて。
「・・・・。」
うまく氷枕を、そこに充てて、置いてくれた。
・・・なんだよ。・・・・
おれ。おまえの手のが、いいのに。
「ありがと。」
「・・・。」
そう、心の中で手を合わせて。感謝しながら、告げる。
人に親切にしてもらったら、ありがとうと言う。
散々ちっちぇえ頃から。
親に言われ続けて、来た事だったから。
その時はできない事でも。その言葉は。
おれの。心の中にずっと、生き残って。ほらな。
今でも。優しくそう。おれを諭してくれる。
なぎがすっと。おれの横に座る。
「計画を、立てて行こうと思います。」
「あ、あれね。」
「・・・。」
「死ぬまでにしたい、十の事、って、やつ?あれ、百だっけ?」
「・・・。」
「あ。一ヶ月じゃ。そんなにできねぇか。ははは。」
「・・・。」
なぎがまた。困ったような、顔をする。
・・・。だから。
おれより先におまえが。そんな顔。・・・・すんなよ。
「会いたいひとは。・・・?」
「いない。」
「・・・。」
「いねぇよ、会いたいひとなんて。みんな、あっち行っちゃったし。」
「・・・。」
・
「じゃぁ。・・・食べたい、ものは。・・・?」
「母ちゃんの。ハムカツ。」
「・・・・。」
なぎが、ペンを口に添えて。真剣に考え込む。
「ハムカツか。・・・・」
「ただの、ハムカツじゃねぇんだよ。」
「知ってますよ、間に色々、挟んである。」
「・・・・。」なんで。・・・知ってんだよ。
「だから、言ってるでしょ。あなたの事なら。」
「・・・。」
「なんだって、知ってる。」
なぎが。にこっと、可愛い笑顔を作って、笑った。
・
「おまえ、」
「?」
「あいつに、なぎに。・・・ハムカツの事、言った?」
「え?」
今日もまたおれの、ベッドに座って。
毅がちゅぅちゅぅと。パックのヨーグルトを口にする。
「・・・。それ、美味そうだな。」
「飲む?」
「・・・ぃや、いい。」
「あ。」
「・・・。」
「大空翼には話したけど。」
「・・・。」
「毎日、その日あった事を、話すから。」
「うん。」・・・おれも。そう言われてる。
「絵、見たいって。言ってたよ!!」
・・・そっか。それでか。
「・・・誰にも。見せねぇよ。」
「え?」
「おまえだけ。今日は。おまえの食べたいもの、書いてやる。」
また戸棚から、色鉛筆を取り出した。それを見て。
毅が。凄く嬉しそうに、笑った。
・
その日の午後はまた、その、なぎのカウンセリングだか、何だかに付き合わされた。
「行きたいところ、」
「・・・。」
「ある。・・・?」
「・・・・。」
何も言わない、おれを見て。
「あるんだね。」さらさらと、メモを滑らせる。
・・・なに。書いてんだよ。
おれは、笑って。
「あるけど、教えてやーんない。」目を細めて、そう言う。
「なんですかその。言い方。」
楽しそうに、なぎが笑う。
穏やかな、秋の陽が差し込む午後だった。
「じゃぁそれは。・・・あとで、聞き出すことにして。」
「ふふ。言わねって、」
「やりたい事は、ある?」
「・・・。」・・・やりたい、こと。・・・・・・
「セックス。」
「・・・・。」
「セックス、してぇなぁ。」・・・おまえと。
「めちゃくちゃに、動物みたいにさ。夢中になってひと晩中。」
「・・・。」
「あっちこっち、ひっくり返して。」
「・・・幸田クン、」・・・ピピ、
「上から、下から、縦にしたり、横にしたり、して。・・・・」
「たけし。」
・・・・あぁーー・・・おれ、・・・・・・
もう天国かどっかに、いっちゃいそう。
・・・天国って。・・・ほんとに、・・あんのかな・・・・・
まだ何も。・・・・
してない、ってのに。
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