その52.完
「…おはよう、光樹。」
目覚めた朔也が一番初めに目にした人物。というか、顔を覗き込まれていたのである。
「あ…おはよう、朔也。」
少しバツが悪そうにしている為、何かをしていたのかしようとしていたのかだ。
「…何かした?」
半身起き上がりながら、じっと光樹を見る。
「あ、いや…別に…。」
顔を赤らめながらしどろもどろになる光樹に、朔也はわざと大きめの溜め息をついてみせた。
「はぁあ…。信じてるんだから、裏切る様な真似するなよな。」
真っ直ぐ光樹に視線を向けた後、はっと気付いて目を逸らす朔也。かなり照れているらしく耳が赤い。
「…ごめんなさい。」
深く頭を下げる光樹に、笑顔を向けて答えとした。
「俺、どのくらい寝てた?」
朔也は魔力回復の為、何日も眠り続ける。自分で期間を決められないのが魔力所持者の欠点だ。
「うん、五日だよ。けど、転移の魔法を使う前に限界来てなかった?」
朔也をいつも見ている為、身体の状態も良く分かっている光樹。
「かなり限界だった。光樹がいなかったら、あそこで寝てたな。けど結晶石を光樹に持たせてあったから、魔法の発動は簡単だったんだ。それより、光樹は大丈夫だったか?」
光樹の傷を治療する為の結晶石の力を使ったので、彼の体力も消費したずである。
「大丈夫だよ。強いて言えば、かよに二日くらい布団から解放してもらえなかったくらいだね。」
光樹は脇腹の傷を見せ、すっかり塞がったと朔也を安心させた。
「悪かったな、光樹。」
朔也は脇腹の傷痕に触れ、結晶石の状態も確認する。
「何言ってるのさ。結局僕は朔也に助けられてるし。もっと強くならなきゃね。あ、あの時朔也はいつもと違う感じだったけど…?」
光樹は、リラーデとの戦闘中の朔也を思い出した。
「あぁ…あそこは自然の力じゃなく、死者の力が溢れていたんだ。魔力所持者も魔物も、普通の人間もたくさん死んでいた。」
自然の力を使う魔力所持者は、周囲の力場を強く感じる事が出来る。
あの力の源は死者の想いであり、通常より魔力が増したのも魔力所持者の想いが溢れていた為だった。
「そっかぁ、だからその命の力に魔力を乗せたんだ。…頑張ったね、朔也。」
光樹は朔也の頭を撫でて柔らかい笑顔を向ける。
「…んだよ、それ。」
強がってみせる朔也だが、認識出来る分精神的な苦痛は計り知れなかった。
「…けど、あそこまではっきりと感じられたのは初めてだったな。向こうが透けていたから、あの集団は怖かったぞ。」
笑顔を見せる朔也に、光樹も微笑み返す。
「で、どうする?」
朔也の問い掛けに、いつもの様に光樹が何処からか仕入れて来る新しい情報を提示するのだ。
「純人類はとりあえず壊滅したみたい。リラーデが腑抜けちゃったからかな?でも組織の残党がまだ研究続けているみたいだから、その処理はどうかな。」
光樹は必ず朔也の意見を聞く。
「そうだな、あの組織のやり方は気に入らない。研究じゃなく、殺しが最終目的だからな。」
朔也と光樹は、再び旅立つ事を決めた。
朔也は光樹という居場所を見付け、光樹はギルミル山に一族を復興させる事が出来たのである。それぞれが出会った頃の目的を果たし、次の目指す所を見出だしていくのだ。
生と言う名の旅路を終えるまで。




