その10.存在の証
純人類とは、忌み子の抹殺と魔物狩りを生業としている。
朔也の両親は幼い彼を身体を挺して護ろうとした。だが執拗に加えられる攻撃に、幼い朔也自身も深い傷を負ったのである。
「力が欲しくて堪らなかった。復讐したかった。奴らも同じ目に合わせてやろうって、本気で捜した。」
朔也は魔力を使える様になり、剣の腕も上がった。だが、月日がかかりすぎたのである。
「十年…だな、気持ちも冷める。実際、人間は卑怯で弱いんだ。だから群れたがるし、自分と違う存在を排除したがる。」
朔也の言葉には、人間に対する明らかな嫌悪を感じた。
それ程までに苛酷な仕打ちを幼い身に受けてきたのである。
「朔也、その組織は見つけたの?」
静かに問い掛ける光樹は、彼自身の方が辛そうだった。
「…いや…。っうか、何でお前が泣きそうな顔してんだよ。」
光樹の変化に気付いて、朔也は気まずそうに頬をかく。
「あ、ごめんね。小さい朔也が可哀相で、心が痛くなって…。」
照れ笑いを見せるが、その瞳は潤んでいた。
「ばぁか、もう終わった事だろ。ってか、小さい言うな。」
朔也の生きる事が両親の存在の証だと心に決めた時から、復讐をやめた朔也である。
両親は忌み児と呼ばれる存在ではなく、魔力を持たない普通の人間だった。
普通に結ばれて、普通に子を授かって。
でも生まれた子は、人々から忌み子と呼ばれる赤銅色の髪と金色の瞳を持っていたのである。
「…俺が…。」
今まで幾度も思った事。もしも自分が、普通の人間として生まれていたならば。
思わず頭を抱えてしまっていた。
「朔也は悪くないよ。…泣かないで?」
光樹に抱き締められ、朔也は心臓がギュッとなるのを感じる。
「ばーろー、…泣いてなんかないや。」
光樹の肌の温かさに、忘れていた感情が呼び起こされた。
「あのね、朔也…。生まれてきてくれて、本当にありがとう。僕は、朔也と出会えて本当に良かったと思ってる。」
柔らかい言葉に触れ、感情が溢れ出す。
「…くっ…。」
今まで誰も受け止めてくれなかった。
嗚咽しながら涙を流す朔也は、自身にこれ程の感情があった事に驚きを隠せない。
それでも、抑え切れない感情の渦にひたすら翻弄されるのであった。




