第七十話 水中で笑う
「たくさん撮れたねー。これはアルバムを製作して……保存! タイトルは妹達と戯れるお姉ちゃん(水着)にしようかな?」
「何なんですか? それ」
また勝手に妹にされている。
だが、僕達は深く突っ込まなかった。水遊び場で遊んだ僕達は、端っこに設置されているベンチに腰掛け休憩していた。
きらめさんは、スマホでたくさん写真や動画を撮ってほくほくだ。
僕達は屋台で買った飲み物を片手にその様子を見ている。
「撮った写真は、アルバムと言う本みたいなものに小分けして保存できるんだよ」
「なるほど。……いっぱいありますね」
スマホの画面を見ると数えきれないほどのアルバムがあった。
しかも異世界アルバムとかいうのもある。
「あれ?」
「どうかした? ライカちゃん。それにレンちゃんも」
喉を潤そうとした時だった。
外から嫌な気配を感じて、手が止まる。レンも僕と同じく外からそんな気配を感じているようだ。
海の方からか? 〈生命探知〉で確認……数は四十? なんだこの数は。今の今まで気づかなかったなんて。
「……海の魔物のようですね」
窓から外を見ると、武器、防具を装備した三人が海からの進軍してくる魔物達と対峙しているようだ。
「レン。行くよ」
「はい!」
「きらめさん! ミィヤ! もしもの時のためにここに残ってて!」
「はーい。いってらっしゃーい」
「ここは任せてください! お二人とも!!」
二人に後のことを任せて、僕はレンと共に飛び出していく。
正直あの剣はまだ使い道がわからないから、今回はスキルで対応しよう。
「レン! 僕は海に飛び込む! だから浜辺の魔物を!」
「承知!」
浜辺に居る魔物はざっと見て三十だ。だが、再度スキルで確認したところ海の中にはまだまだ魔物が潜んでいるようだ。
水属性のスキルを手に入れた今なら水中でも戦える。
「加勢します!!」
「だ、誰?」
三回ほど跳躍移動をして、海へと辿り着いた僕は戦っていた三人に一言伝え、海へと飛び込む。
すぐに中級スキル〈水の鎧〉を発動させる。このスキルは水の抵抗を和らげ、水中の魔物と同等以上戦えるようになるんだ。
(さて、地上はレンに任せて、こっちは海の中を担当だ!)
海の中では、魔物達が驚いていた。まさか人間が飛び込んでくるなんて思っていなかったんだろう。噂では、水中戦を得意とする部隊が存在するらしいけど。
「〈アクアブレード〉」
驚いているところ悪いけど、早々に片付けさせてもらう。まだまだ遊び足りないから。
「はっ!」
水の刃にて、僕は次々に魔物達を切り裂いていく。凄い……水中戦は初めてなのに、体が地上で戦っている時と変わらないように感じる。
これは、新しい姿の恩恵? それともスキルのおかげか?
どちらにしろ、このまま魔物達を一掃だ!
「でも、どうしていきなりこんなに大量の魔物が?」
半数ほど倒したところで、僕は周囲を見渡す。
もしかしたら首謀者が居るかもしれない。
……見当たらない。
さすがに、この場には居ないか。
「おいこら! このガキが! いきなり切り込んで来やがって!!」
「喋る魔物?」
首謀者、ではなさそうだが怪しい存在だ。喋る魔物ということは、ハーバで戦った《フェロモンゴブリン》と同じく特殊な進化をした奴に違いない。
見た目は魚が人になったような魔物。
つまり水中などによく生息する《フィッシュマン》という魔物だ。ただでさえ人の形をしている《フィッシュマン》が喋ると、戦い難いな、どうにも。
普通の《フィッシュマン》と違うところと言えば、ちょっと体が大きいのと、より人間ぽくなり、魚っぽさがなくなったってところか?
肌は青い、いや緑? とにかく肌色は人間のそれではなく魚っぽい。ヒレのようなものもあるし、鱗っぽいものも見える。
「ああ! 俺様は選ばれし魔物だ! よーく聞け! こいつらを指揮しているのは俺だ!」
「……個体名は?」
「《ハイフィッシュマン》よ!」
……なんだ。《フェロモンゴブリン》みたいに何か特殊な魔物かと思ったけど。
自慢げにしている《ハイフィッシュマン》とは《フィッシュマン》の進化系だ。つまり、別に特殊な進化をしているわけではない。でも、それでも喋っているってことは、ハーバの時のように魔族が関わっているのかな……。
「どうしたガキ! びびって声も出ねぇのか?」
「どうして喋れるようになったの?」
「おいおい、無視かよ。まあいいぜ。死ぬ前に教えてやるよ。俺に力を与えて下さってお方のことをよぉ!」
話すなら早く話してほしいんだけど。こういうタイプは、前ぶりが長いんだよな……。
「俺は、ここいらではちょっと名の知れた暴れものだったんだがよ。今日も子分達と一緒にどこかに喧嘩しに出掛けたんだ。すると、突然海の宝石とも言えるほどの美しさを持つお方が現れたんだ! そのお方は俺にこう言った! 力を与える。その力でちょっとハミッテに喧嘩を売って来いってな!!」
なるほど。その話が正しいのなら……この魔物は完全に利用されている。どうやらお調子者って感じだし。そのお方って輩は、ハミッテに何か恨みがあって、宣戦布告とばかりにこの魔物を筆頭に騒ぎを起こさせた、てところだろう。
「つーわけで、あのお方のためにてめぇらには死んでもらうぜ! 野郎ども!! やっちまぇ!!!」
自分ではやらないのか。
とりあえず、ハミッテに危機が及んでいるってことは理解した。
これから、どんな敵が来るか予想して、対策を練らないと。
……その前に。
「情報提供ありがとう」
「どういたしましてぇ!!」
一斉に襲ってくる魔物達に対し、僕は静かにマナを練り上げる。
それを魔力に変換し、とある上級スキルを発動させる。
「〈水帝の一閃〉」
練り上げた魔力を一気に解放。
煌めく水は魔物達を一掃。
「うおおおおっ!?」
そのまま後ろで高笑いをしながら指示をしていた喋る《ハイフィッシュマン》を巻き込み、彼方まで続く。
静かになったところで、水中から出て浜辺に着地すると、すでにレンが戦いを終え、先に戦っていた三人と僕を待っていてくれていた。
「こっちは終わったよ。貴重な情報も手に入れたし」
「こちらも魔物の相当を終え、待機しておりました」
「うん。ご苦労様、レン」
「い、いえそんな……」
レンの頭を撫で終えたところで、槍を持っている女性と目が合う。
「お話があります」
「……わかったわ」
僕の雰囲気で、どんな話なのかを察してくれた女性は静かに首を縦に振った。




