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第六十九話 海からの殺意

「あわわ! け、結構高いですね」

「このゆっくり上がっていく感覚! ジェットコースターを思い出すよ!!」

「ジェットコースター?」


 思う存分にハミッテの水遊び場を楽しんでいる僕達は、現在一番人気の水上滑り台を体験している。

 最初はゆっくりと水の上に乗って高いところへと向かう。


 そして、頂上へと到着したところで一気に滑り台で下へと滑る。

 かなり角度なので、上がっている時とは勢いが大違いだ。

 こうして、上がっている最中でも先に滑っている人達の姿が見え、声が聞こえる。


「それで、どっちに行くか決めた?」


 そろそろ頂上というところできらめさんが怖がるミィヤを抱き締めながら僕達に問いかける。

 滑り台は二つある。なので、二人一組となり分かれて滑ろうと言うことになった。僕とレン、ミィヤときらめさんだ。


「僕は特にこっちってこだわりはないので、きらめさんが左だと言えば僕は右を選びますよ。レンもそれで良いんだよね?」

「はい! 主様とご一緒ならば!」


 それに滑り台は左右に違いはない。微妙な違いがあるかもだけど、ほとんど同じ作りだと聞いている。


「じゃあ、私達は左に行こうね、ミィヤちゃん」

「は、はい!」

「もう! 怖くない怖くなーい。お姉ちゃんがついてるからねぇ」


 どうやらミィヤは、高いところが苦手な様子。

 けど、水上滑り台を体験したいという気持ちを胸に怖いのを我慢している。

 きらめさんもそれがわかっているからこそ、優しく抱き締めながら頭を撫でているようだ。


「主様。頂上です!」

「それじゃ、二人とも。下で」

「あーい」

「お二人ともご、ご武運を!」


 なんだ、その大袈裟な言葉は……。

 頂上に到達した僕達はそれぞれの道へと進み、滑り台へと向かう。手すりなどはなく、このまま一直線のようだ。

 まあ、ここに上がるまでが心の準備時間だったのだろう。


「レン。僕にしっかり掴まってるんだよ」

「はい!」


 レンは、僕の背後から手を回し、しっかりとしがみつく。ミィヤも、きらめさんにしっかり掴まっているようだし、心配はないな。


「いざ!」


 滑り台へと入った瞬間。


「わっ!」


 一気に滑り出す。

 ここまでゆっくり上がってきた分、より勢いがあると感じる。ただ滑るだけではなく、右へ、左へと曲がりくねることもある。

 視線を横に向けると、今まで僕達が上がっていた場所から次の客達が見えた。が、それも一瞬。

 加速する中、そろそろ終着だ。本来ならこのまま水壁に突っ込むのだが……テンションが上がっている僕は、レンを背負ったまま足に力を込める。


「レン。行くよ!」

「何をされるのかはわかりませんが、いつでも!」

「とう!」


 水壁にぶつかる前に、僕は跳躍。

 くるくると回転しながら、水壁へと着地した。


「はぶ!?」

「わぷ!?」


 それと同時にミィヤときらめさんが水壁へと突っ込んだ。

 

「おー! やるね、お嬢ちゃん!」

「だけど、他の人が真似するかもだからこれっきりにしてくださいよ」

「えへへ。すみません」


 テンションが上がりついやってしまったけど、注意されてしまった。わかっていたことだけど……なんだか体が、勝手に動いていたんだ。


「ライカちゃん、やることが派手だね」

「わ、私なんてそんなことする余裕ありませんでしたよ……」

「僕もかなり楽しんでいるって証拠かな?」

「そうみたいだね。あっ、そろそろお昼だね。あっちに屋台があるみたいだから食べに行こうよ」


 僕はまだお腹は空いていないけど、よく動き、よく休みだ。

 休憩を挟んで、またいっぱい遊ぶとしよう。


「そうだ! 見て見て! ミィヤちゃんの可愛い姿を!」

「はわわ!? あの速度の中で撮っていたんですか!?」

「これぐらい余裕だよ」


 屋台へと向かう僕達にきらめさんは、滑っている中でミィヤの様子を映像に納めていたようだ。さすがきらめさん。いつ何時でもぶれない。

 どうやら、滑っている間、ミィヤはずっと目を瞑っていたようだ。


「これは永久保存確定な可愛さだね」

「消してくださーい!!」



・・・・・



「ふう……今日も暑いなぁ」

「こんな日でも巡回警備をしなくちゃならないなんてなぁ」

「こら。口より足を動かす! これもここを拠点にする冒険者のお役目なのよ?」


 ハミッテから離れた浜辺では、冒険者の男女が警備のために巡回していた。

 ハミッテにとって海は、水は重要だ。


 海辺の街ならではの悩みだが、海から魔物達が攻めてくる時がある。おまけに漁業をしている時もだ。

 最近はそんなこともなく、平和そのものなのだが、逆にそれが不気味に思ってしまっている。


「そう言ってもなぁ……波は静か。周囲には海を荒らすような輩は見当たらない」


 と、腰に剣をぶら下げた無精髭の男が呟き。


「おまけに、俺達がこうして巡回している間にも、ハミッテの水遊び場では楽しい声が響いてる。ここらからじゃ聞こえないけど」


 弓矢を背負ったオールバックの青年が続くようにハミッテを見詰め、ため息を漏らす。

 そんなだらしない二人を見たリーダーである槍使いの女性は青い髪の毛を掻く。ハミッテではこうして、三、四人のパーティーを組み定期的に浜辺を巡回する。


 朝、昼、夕、夜と代わりがわりに。

 この役目はハミッテを拠点とする冒険者達の役目なのだが、あまりにも平和なうえに、観光地としても大反響なためにどうにもやる気が出ない仕事のようだ。


「あなた達ねぇ……お給料貰ってるんだから、その分しっかり働かないとただ飯ぐらいなんて言われるわよ?」

「わかってるって」

「けど、こうして青い海を眺めてると無性に泳ぎたくなるっていうかさ」


 小さい頃から海近くに住んでいるため、当然数えきれないほど泳いでいる冒険者達。

 今にも装備を全て外して泳ぎに行こうとしている。

 が、それを止めるように水面が動き出す。


「な、なんだ?」

「まさか」

「……構えて! 魔物よ!!」


 海中から出てきたのは、魔物。だが、ただの魔物じゃない。冒険者達は、それを瞬時に見抜く。

 明らかにこの辺りにはいない魔物で、なぜかはわからないが……かなりの殺意が向けられていると。

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