第六十五話 謎の美女
「なんで、この格好のままなんですか?」
「まだまだ謎は残されてるからだよ? ほら、特に武器とかね」
「……本音は?」
「まだ撮り足りないから! はい、そこで武器を構えて!」
「後にしてくださいよ……今は人前なんですから」
ウゴロさんの家で朝食を終えた僕達は、ハミッテを見て回ることにした。当初の目的が思っていたより早く片付いたので、後はハミッテを観光しつつ、物資の補充をして、次の旅をいつにするか考える。
ここはハーバ以上に大きな街だ。ここでしか手に入らないものや、見られないものがある。
特に、水の街というぐらいなので大きな水遊び場があるとか。
普通、水遊び場と聞くと子供が行くような場所だと思われるが、ここのは一味違うようだ。
ウゴロさんもオススメのひとつだと強く進めてくれた。
「はーい! まあでも武器が気になってるのは本当だよ? 前のと明らかに違うからね」
パシャッとスマホで僕が持っている剣を撮り、首を傾げるきらめさん。それは僕も同じだ。
筒によって違いがあるは理解した。
前のは特になんの変哲のないものだった。だが、今回のは見た目がかなり違う。
最初から鞘に収まったままで、その鞘の両側には隆起したものがある。そして、装飾としても中々のものだと思う竜。
剣の長さは、長剣ぐらいだ。
重さは……相変わらず軽い。柄の部分には特に変わったものはない。
「……あれ?」
「どうかしました? ライカさん」
「まさかそれ以上抜けないんですか? 主様」
とりあえず刃にも何かないかと丁度人気のないところに差し掛かったので、抜いてみたけど。
「んー!!! あ、あれ?」
筋力Sの力でも全然抜けない。ほんの少し抜けただけで、それ以上はいくら力を込めても抜けないんだ。試しに僕が鞘の方を持ち、他の三人に力を合わせて引いてもらったが。
「ぬ、抜けない!!」
「も、もしかして錆びちゃってるとか?」
「それはないと、思いますが……!」
やはり完全には抜けなかった。ミィヤの言うように錆びているわけでもない。試しに隙間から覗いてみたけど、変なところはなかった。
わかったことは、今回の刃はなんの変哲のない両刃だってこと。
後、鞘に納める時にチンと結構いい音が響くことだけど……これは関係なさそうだ。確かにいい音だけど剣なら当たり前だからね。
「この竜もただの装飾……にしか見えない」
「でも、前のと違って明らかに何か関係しているとは思うんだけどなぁ」
きらめさんの言う通りただのデザイン重視でってことはないと思うけど、全然わからない。前のやつもよく切れて、興奮すると伸びるとかすぐわかったのに……。
「まあ、これに関してはまた後で考えよう。今は、せっかく来た水の街だ。楽しもうよ」
「ですね! なんだか私、ここに来てから興奮しっぱなしで!」
そういえば、ミィヤはドワーフの中では唯一水を扱える。
その由縁が……まさか、この街に何かに関係するものがあるとか?
「あっ、そういえば」
「どったの? ライカちゃん」
ミィヤで思い出した。大きな街に来たら、やろうって思っていたんだ。
「ミィヤ。あのスコップのことを調べに行こう」
「あっ! そういえばそうでしたね。ハミッテほどの街ならレベルの高い鑑定士さんが居るかもしれませんね! えっと……これです!」
ミィヤが取り出したスコップ。見た目こそただのスコップにしか見えないが、あれはミィヤが使うと硬い壁だろうと、まるで砂でも掘っているかのようにさくさくと掘れてしまう不思議なスコップだ。
「なになに? そのスコップがどうかしたの?」
そういえばきらめさんには教えてなかったな。
なのでスコップ入手した経緯とわかっていることを話すと。
「へー、そんなスコップがあるんだね」
「はい。もしここに上位鑑定スキルを持っている鑑定士が居たら、何かわかるかもしれません」
なので、僕は通りすがりの人達に上位鑑定スキルを持っている人を知らないかと尋ねた。
すると、一人だけ使える者が居るとの情報を手に入れた。
その人は、これまで偽造して販売していた物や、破損して詳細がわからないもの、その全ての詳しい名前や詳細など正確に鑑定したそうだ。
それを聞いた僕達は、そんなに凄い人なら可能性があるかもしれないと、その鑑定士の店へと急いだ。
どうやら、今年で八十二歳になるご老人らしい。
「八十越えのおじいちゃんかー、大丈夫かな?」
「大丈夫! だと思いますけど……よく歳には勝てないって言いますもんね」
昔は凄腕の剣士だった者でも、歳を取って体が思うように動かなくなり、なんてことはよくある。
歳を取れば目を悪くし、耳も遠くなり、体も段々と脆くなっていく。生きている者としては当然の摂理なんだ。だから、僕も若干不安になっている。
「あれ?」
噂の鑑定士の店まで後ちょっとというところで、気になる女性が目に入る。橋の上で水面を眺めている緑色の髪の毛の女性。
前髪が長く左目が隠れており、その大きな胸からできる谷間をこれでもかというほど見せつけるようなドレスを身に纏い、今日は暑いのに赤いマフラーを巻いている。
「わー、綺麗な人ですね」
丁度女性が立っている橋の先に見える赤い屋根の店が目的地だ。
思わず立ち止まってしまったが、声をかけず後ろを素通りしていこう。
「ねえ、ちょっといいかしら」
しかし、背後に来たところで女性の方から話しかけられてしまう。
「僕達、ですか?」
「ええ、そうよ。聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
くすっと笑みを浮かべて、僕達をじっと見詰める女性。
……急いでいるわけでもないし、ちょっとだけならいいかな?
「はい」
「ありがとう。……答えて。この街は美しいかしら?」
なんだろう。この街を愛しているがゆえの質問のように思えるけど。それって、僕達が旅人だってわかってないと聞くようなことじゃない。
……いや、入り口でもおじさんに見抜かれてたし、わかりやすいのかな? 僕達って。
「はい。美しいと思いますよ」
「水の街って言われるだけあって、水も綺麗ですし」
「それに合わせて建物も映える色と形をしてるしね」
「……そう。ごめんなさいね、突然」
質問を終えた女性は名前も告げず、静かに去っていく。
何だったんだ? あの人は。
「レン。何か感じた?」
「先程の女性からですか? ……特には。少々掴み所のない雰囲気だなとは感じましたが」
僕もそんな感じだった。
気になるけど、とりあえず今は鑑定士のところに行こう。




