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第五十六話 あっちむいてぽーん

「いざ!」

「勝負!」


 ノリノリな二人は、ただじゃんけんをするだけなのに、凄まじい気迫で構える。

 そして。


「最初はグー!」

「じゃんけん!」


 最初の一手が出る。


《ぽん!!》


 結果は、きらめさんがチョキ。メサリがパーだ。さすが、未来予知のきらめさん。相手の出す手を予知したんだ。

 じゃんけんで勝ったことで、きらめさんの目が光る。


「あっちむいて!」


 勝ったきらめさんが腕を動かすとそれに連動して背後の腕も動き出す。


「ほい!!」

「よっと!」


 きらめさんが選んだ方向は左。対して、メサリは跳躍することで回避する。


「ふふん。どうしたのかな? 未来予知のきらめさん?」


 着地したメサリは、きらめさんの挑発するように、どや顔を決める。


「……次は負けないよ! 今度はきらめお姉ちゃんが相手だ!!」


 まるで、未来予知のきらめさんが別人だったかのような言い方である。やっぱり、子供の頃のことだから勘が鈍っているんだろう。

 それにしても、柔らかい素材でできているとはいえ、かなり大きいから迫力が凄い。


「じゃあ、次いこうか! 最初はグー!」

「今度こそ! じゃんけん!」


 その後、両者の戦いは数分ほど続くが中々決着がつかない。

 見ていた僕は自然と拳を握り締めるほど、二人の戦いに熱中していた。こんなに目が離せないなんて……僕も以外も楽しんでいる?


「ふっ……やるね、きらめお姉ちゃん!」

「お姉ちゃんだからね!」

「なるほど!」


 いったい何がなるほどなのかわからないけど、この二人の戦いはまだまだ続いていて欲しいと思ってしまっている。

 それほど、熱い戦いなのだ。


「中々楽しめたけど……そろそろ終わりにするよ! お姉ちゃんパワー全開!!」


 そんなパワーがあるのか!? と驚いたところで、きらめさんの体から謎のオーラが溢れ出す。

 

「私だってこれ以上は負けられない! 道化師パワー全開!!」


 なぜかメサリもきらめさんに対抗するように謎パワーを体から出す。


「頑張ってくださーい! きらめお姉ちゃん!!」


 その熱意にやられたミィヤが、全力で拳を突き上げきらめさんを応援している。


「ここで勝てば、完全勝利間近ですよ!! きらめお姉様!!」

「よっしゃああっ!!」


 二人の応援により、更ならパワーが溢れ出す。が、なぜか僕の方をチラ見してくる。……僕の応援もってことだろうか。


「頑張ってくださーい! ……きらめお姉ちゃーん!!」

「妹達の応援で、お姉ちゃん! 覚醒!!」


 別に妹じゃないんですが。まあでも、あれだけの迫力だ。これは、負けないかもしれない。

 頑張れ、お姉ちゃん。


「くっ! なんてお姉ちゃんパワー!? ま、負けられない! アタン! 私達も双子の絆を!」

「わかったよ、メサリ! 受けとれ! 僕のパワーを!!」


 これまた対抗するように、メサリがアタンから絆パワーを受け取る。もはや、これはあっちむいてほいではないのでは?

 

「いくよ? メサリ!」

「これで、終わりにするよ! 最初はグー!」

「じゃんけん!」

《ほい!!》


 じゃんけんに勝ったのは、きらめさんだ。そこから、メサリに考える隙を与えないように、きらめさんが即座に動く。


「あっちむいてほい!!」

「速い!?」


 その速攻に、メサリは反応できず、下から突き上げられた手を回避することができず……吹き飛ばされる。


「あれー」


 本当に柔らかい素材のおかげで、吹き飛ばされたメサリは楽しそうに叫んでいる。

 そんな中、きらめさんは静かに勝利のガッツポーズをしていた。天へと拳を突き上げ、どや顔である。


「やりましたね! きらめお姉ちゃん!!」

「うん! これも可愛い妹達のおかげだよー!」


 ミィヤに抱きつきながら、僕達のことを笑顔で見てくるので、素直に微笑みで返した。


「さあ! きらめお姉様が勝ったということで、後はミィヤ様だけです!」

「う、うん! 頑張ります!!」

「ミィヤちゃんならいける! やっちゃえ!!」

「ミィヤ! 頑張って!!」


 なんとかメサリが戻ってきたところで、アタンが前に出る。ミィヤも、緊張している様子だが、何度か深呼吸をして気合いを入れる。


「メサリは負けたけど、この僕がいる限り勝ちは簡単には譲らないよ!」

「私だって、負けませんよ!」


 かなり自信があるみたいだ。ババ抜きの時とは段違いの気迫だ。

 まさか、きらめさんという強敵が最初に出てくるのを見越して、あっちは実力では劣る方を出してきたのか?


「前ぶりは、いいよね? さっそくじゃんけんといこう!」

「はい!」

「最初はグー!」

「じゃんけん!」


 さあ、最初はどっちが勝つ?


《ぽん!!》


 勝ったのは……アタンだ。

 刹那。

 ミィヤは、身構えた。


「いくよ? あっにむいて!」


 アタンの動きに連動し、腕が動き出す。


「ほい!!」

「こっち!」


 アタンが出した方向は右。対して、ミィヤはしゃがみこんで回避した。頭すれすれだったため、風圧で髪の毛が靡く。


「ほ、ほわぁ……思っていたより迫力がありますね」


 やはり、実際避ける方は、見ている時より迫力が違うようだ。若干身震いをしながらも、ミィヤはすぐ立ち上がる。


「よく回避できたね」

「負けられませんから!」

「その調子だよ! そして、何よりも楽しもう! これは遊戯なんだからさ!!」

「楽しまなきゃ損だよ!!」


 楽しむ、か。僕は、自分の力の秘密が知れると思ってずっと、純粋に楽しむってことをしてこなかった。

 ……あの二人は、何を考えているんだろ? 視線を向けると、双子と目が合い、笑顔を向けられた。


「てことで、次! 次!!」

「いきますよ! 最初はグー!」

「じゃんけん!」

《ぽん!!》


 今思えば、双子はずっと純粋に遊戯を楽しんでいた。もしかすると、ただ僕達と遊びたいだけなのかもしれない。久しぶりだって言っていたし……。


 今だって、後一敗で僕達の完全勝利だっていうのに、ミィヤと勝負を無邪気な笑顔で楽しんでいる。

 応援しているメサリも。


「次で決める! じゃんけん!」

「ほい!!」

「勝ち! あっちむいて!」

「よ、避けて見せます!」


 何度目かのあっちむいてほい。

 じゃんけんで勝ったアタンは、右へと腕を振るう。対して、ミィヤは右に動いてしまった。


「ひゃあっ!?」

「勝ちー! 仇は撃ったよ! メサリ!!」

「ありがとう! アタン!!」


 これで一勝一敗か……となると、勝敗は勝者同士で決着をつけることになるのか?


「す、すみません。負けてしまいました……」

「謝らないで、ミィヤ。それよりも、楽しかった?」


 飛ばされたミィヤを、キャッチし、そう問いかけると。


「はい。負けてしまいましたけど、凄く楽しかったです!」

「そっか……」


 ミィヤを下ろし、勝ったアタンがきらめさんへこっちに来るようにと手招きしている。やはり、ここは勝者同士の戦いになるか。


「これで、勝った方があっちむいてほいの本当の勝者だ!」

「妹の仇はお姉ちゃんがとってみせる!」

「お願いします! きらめお姉ちゃん!!」

「任せなさーい!!」

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