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第五十二話 遺跡へ落下

「おー! やっぱり何かの入り口だったんだね!」

「主様! 早くその場から」


 と、レンが言うがナイフが抜けない? やばい! こいつを置いていくわけには。


「あっ」


 なんとかナイフを抜こうとしたが、それよりも早く床が沈む。


「主様ー!!」

「ちょっ!? ファンタジー式エレベーター!?」

「ライカさーん!!」


 くっ! どういうことだ。ナイフが抜けないなんて……。これは今までどんなものでも切ってきたんだぞ。その刃が、完全に固定されて抜けないなんて……普通の石じゃないってことなのか?


「あーるーじーさーまー!!」

「え?」


 床も止まり、ようやくナイフが抜けたところで頭上からレンの声が聞こえた。あっ、これって。


「うわっ!?」

 

 嫌な予感はしたが、予想通り。上からレンが降ってきた。思わずキャッチしてしまったけど、レンだったら普通に着地できたんじゃないか? ……いや、待てよ。レンが来たってことは。


「あーぶーなーいーよー!!」

「おっと」

「なんで、受け止めてくれないのぉ!?」


 などと言いつつ、きらめさんは容易く着地を果たす。しかも、ミィヤを抱き抱えたまま。本当にこの人は、元普通の人だったのか? さすが女神様に肉体改造をされているだけはある。

 普通だったら、あんなところから落ちてきたら、骨折じゃすまなかったはず。


「主様! ご無事ですか!?」


 僕の腕の中で、安否を確認するレン。大丈夫だよ、と伝えゆっくりと下ろした。


「ねぇねぇ、なんで受け止めてくれなかったの? ライカたん」

「なんですか、たんって。……あんなところから、それもミィヤを抱えて落ちてくるような人を受け止める必要がありますか? それに、僕はレンで両手が塞がっていて、受け止めようにも無理だったんです。もう少し、間を置いて落ちてくれば可能でしたけど」


 そっかー、となんだか納得してくれたところで、僕は周囲を見渡して、状況の整理に入る。

 上は……すでに塞がっている。周囲は、どうやらマナが濃いおかげで、その光で辺りが照らされているようだ。まるで、壁の窪みを通って来ているような……何なんだ、ここは。


「不思議なところですね。もしかして、古代遺跡とかでしょうか?」

「私の予想だけど、ライカちゃんのナイフでファンタジー式エレベーターが起動したってことは」

「主様に関係する場所、ということですか?」


 僕もそうは思っている。けど、調べないことにはわからない。

 ここには、他に何もないみたいだし……先に進むか。


「〈ゴールドサークル〉」


 念のため不意討ち対策に〈ゴールドサークル〉を発動しておく。命令はもちろん、不意の攻撃を防げ、だ。

 三人に確認をとってから、僕が先頭。その後ろをミィヤ、きらめさん、レンと縦に並んで進む。


「ここは、マナの光だけしかないんでしょうか? これでも見えなくはないんですが」

「ちょっと足元とか頭上が心配だね。よし、ここは懐中電灯をっと」


 きらめさんが取り出したのは、筒の先端に円上のものが取り付けられたものだ。それを僕に渡し、使い方を説明してくれる。

 どうやら、筒にあるスイッチを押すだけで灯りが点くらしい。これも、地球のものなんだろう。

 ランタンや松明と違って中々便利なものだ。


「そんで、私はスマホで」


 まさかスマホで照らすことができるのか?


「この幻想的な場所を撮影!」


 どうやら、映像に残すようだ。まあ、後にこの遺跡をギルドなんかに教える時の証拠にはなるかな? 


「今のところは変わったところはなさそうだね」


 進みつつ、懐中電灯で辺りを照らしながら進んでいるが、今のところは変わった場所や箇所はない。

 念のため〈夜目〉も発動して、先の暗闇まで確認。

 懐中電灯で照らせない範囲から、攻撃が来るかもしれないからね。


「まさか、このまま一本道が続くだけなんでしょうか?」

「それはそれで、無駄に考えなくてこっちは助かるけど……どうやら、そうもいかないようだね」


 移動を初めて五分ぐらいが経った頃だ。

 ついに、変化が出てきた。

 上に向かう階段が現れた。僕達が落ちてきたことを考えると、これは確実に地上に向かう階段だ。


「さすが、この階段で一気に地上へ! なんて無理だよね?」

「おそらくは。行こう」


 ここまで、罠や魔物などが襲ってくる気配がないのが、逆に不気味だ。こういうところには、罠があったり、魔物なんかが住み着いているのが普通……。

 魔物はどこにでも現れる。例え、硬く閉ざされた場所だろうと、世界にマナが溢れている限り、魔物は出現するのだ。


「到着。……ここは懐中電灯なしでもよく見える場所みたいだ」


 階段を上って辿り着いたのは、天井で輝く膨大な光で照らされた広い空間。スタート地点よりも三倍ほど広く、普通に戦闘訓練ができそうなほどだ。

 そして、壁には何かの壁画のようなものが描かれている。


「なんだろう、この絵は?」

「何かの戦、だと思いますけど。ライカさんはわかりますか?」


 壁に描かれたものは、ミィヤの言うように何かの戦風景を描いたもの見える。

 しかも、かなり一方的なものだ。二人の男女に対して、数えきれないほどの戦士達が武器を持って戦いを挑んでいる。


「……」

「主様?」


 何だろう。知らない、はずなのに。なんだか、この絵から目が離せない。これは、知っているってことなのか?

 でも、こんな戦なんて今まで読んできたどの歴史本にも書かれてなんていなかったはず。なのに、僕は……。


「ライカさん!」

「え? あ……ごめん。どうしたの? ミィヤ」

「いえ、なんだかぼーっとしていたので、心配になりまして」


 レンやきらめさんの様子を見ても、どうやら僕は相当ぼーっとしていたようだ。

 

「この絵から何かを感じたの? ライカちゃん」

「わかりません。知らない、はずなんですけど。この絵を見ているとなんだかつい考えてしまうんです」

「よし。じゃあ、いつでも見れるように写真を撮っておこうか」

「……ありがとうございます」


 正直、この絵がなんなのか今はわからない。けど、ぼくのナイフで起動した床から、考えても僕に無関係ってことはないはずだ。

 この絵……それに、この場所をもっと調べれば僕の力について、何かわかるかもしれない。


 偶然か。それとも、必然だったのか。

 どちらにしろ。ここからは、十分に調べてから出ることになりそうだ。

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