第五十一話 旅の途中で
「それでは、ラルクさん。お先に失礼します」
「うん。おやすみ。きらめさん? ミィヤに手を出さないでくださいよ?」
「大丈夫だよー。ちょっと抱き枕にするだけだから!」
「ま、またですか?」
「今日は、苦しまないように気を付けるからー」
きらめさんを旅仲間に入れて数日。
旅立ってこれで何度目の夜営になるか。もう、慣れたものだ。今日の見張りは、僕もレンの二人となっている。
レンは木の上から。
僕は地上から見張りをすることに。
視線を上に向けると、月明かりに照らされたレンが木の天辺で、周囲を見渡している。
「おーい! やっぱり今日は冷えるけど大丈夫か!」
「大丈夫です! ちゃんと上に着込んでいますから!」
そう言ってフード付きの厚いジャケットをぎゅっと掴み笑顔を向ける。安堵した僕は、地上の見張りへ戻った。
「……」
こうして、見張りをしている間は焚き火を眺めているか、ステータスの確認をするかだ。
(……ラルクとしてのステータスは、相変わらず。スキルはちょっと増えたかな)
スキルは、レベルの割りに少ない。そして、全部が物理攻撃スキル。このレベルだともっと高いステータスになっているはずだし、スキルだってもっと……。
「それに」
僕は、筒を取り出し、ライカへと変身し、スキルを確認した。
「……やっぱり、気のせいじゃなかった」
ライカのスキルを調べるのは本当に久しぶりだった。
だって、あのレベルの時点ですでに数多のスキルを覚えていたうえに、レベルが上がってもスキルが増えることもなかった。
けど、実際に確認すると……増えていた。しかも、その増えたスキルが問題だ。
「これって、あの魔族のスキルだよね」
増えていたスキルは二つ。
ひとつは〈カラミティバースト〉だ。最後にサディアが放った高エネルギー玉。明らかにあれは上級スキルで、魔族特有のものだった。
これだけではない。
次のスキルが更に問題だ。
(〈真実の蒼炎眼〉って……あれかな?)
僕の脳裏に浮かぶのは、サディアが使った炎の目だ。確か、あの目は相手の隠し事、過去を見ることができるんだったっけ?
スキル説明も……やっぱりそうか。
「なんで、僕がサディアのスキルを……」
まず〈カラミティバースト〉は闇属性のスキル。〈真実の蒼炎眼〉は属性無しのユニークスキルだ。
もしかしたら、倒した相手のスキルを覚えたって思ったけど……それだと、今まで倒してきた魔物達のスキルだって覚えているはずだ。
じゃあ、見たスキル。それも僕の適正属性のスキルを覚えたと考えた。そう考えると、ミィヤのスキルやレンのスキルを覚えていないのに納得できる。
ユニークスキルは、僕も覚えているから、なのかな? けど、ユニークスキルって、その者の個人スキルってことになっている。
なのに、僕が使えるなんて……思っていたよりこの体はやばいものなのかもしれない。
ずっととんでもない体だと思っていたけど、これは本当に化け物染みてきたな。
「ふう……」
僕の考えが正しかったら、これから出会う者達の適正属性のスキルやユニークスキルをどんどん覚えていくことになる。
もちろん僕が、ライカが覚えていないスキルを。
・・・・・
「それで、ラルクくん。お祖父さんの昔馴染みさんは、どこに居るの?」
「ここからだと、後数日ほどで到着するハミッテという街に住んでいるみたいです」
次の日になり、僕達は移動を再開する。
僕達がこれから向かうのは、祖父の昔馴染みが住んでいる街だ。
今の場所だと、後三日か四日で到着するはずだ。
そこは水の街と言われているらしく、移動も小船を使って移動しないといけないところがあるとか。海が近いこともあり、魚も新鮮なものばかりだと、手紙には書いてあった。
僕も、行くのは今回で初めてだからなんだか近づくに連れて緊張してきた……。
「その方とは手紙のやり取りしかなかったんですよね?」
「うん。実際に会うのはこれが初めてなんだ」
「そっか。こっちには写真がないから顔もわからないんだよね。あっ! でも、絵とかは?」
「なかったですね。でも、男だってことは知ってます」
手紙では、何度も海に出ては海賊や魔物を倒してきた海の男だとか。手紙の文章や文字からも力強い意思を感じられた。
というか、豪快過ぎるのかちょっと読めない文字もあったなぁ。
そのことを話すとおー! と三人が声を漏らす。
「海の男かぁ。どんな人なんだろうね」
「豪快な人、だと思いますが。ラゴン様と同い年ぐらいなら、相当お歳を召していると思います」
「ラルクさんのお祖父さんって何歳だったんですか?」
「今年で七十六歳だったかな?」
手紙では年齢のことを書いていなかったから、正確な歳はわからないけど、じいちゃんと同じぐらいだとは思う。
「色々気になるけど、楽しみだねぇ……ん?」
会話をしながら平原を移動していると、きらめさんが急に立ち止まった。なんだろう? なに、見つけたのかな。
「見て、あそこ。何か明らかに怪しいところがあるよ」
きらめさんが指差す方向を見ると、確かに怪しい場所があった。どこまで続く原っぱなのに、一部だけ石で造られているような箇所がある。
近づいて確かめると、かなり大きめな円で、中央には何かを刺し込むような凹みがある。
「何かの遺跡跡でしょうか?」
「それにしては、他に何も無さ過ぎると思うけど……」
遺跡跡なら、周りにもっと何かが埋まっていたりするのが普通だ。とはいえ、例外というものもあるらしく、ここがその例外なのか?
それにしても、なんだろうこの作りは。
ただの石の床ってわけじゃなさそうだけど。
「やっばり、何かあるとしたらこの凹みだよね」
「辺りには、そこに刺せそうなものはありません、主様」
となると、刺すものはどこかべつの場所にあるか、別の何かを刺すのか……どちらにしろ、何もわからないしここから離れるしか。
「あっ! じゃあ、何かを剣とかでも刺してみない?」
「剣と言っても、誰も持ってませんよ?」
そう。この四人は剣を持っていない。ミィヤは、拳やスキルを駆使する。レンは、スキルで剣を生成するため必要ない。
きらめさんも、スマホがある。
……ま、まさか。
「きらめさん。まさかとは、思いますが」
嫌な予感がしたので、きらめさんに問い掛けると。
「ゴー!」
「ですよね……いや、まあいいか。予備の短剣ぐらいはあるし、そっちを刺そう」
僕は、近くにあった岩の後ろに隠れ、ライカに変身し、袖から予備の短剣を取り出す。
「じゃあ、刺しますよ?」
「うん。いっちゃえ!」
「主様、せめて私がやります!」
「大丈夫だよ、もしもの時は僕で対応できるから」
そして、僕は三人を円から出して、短剣を凹みに差し込む。
……が、何も起こらない。
ふむ、やはり特殊なものじゃないと無理か。
「どうやら、何も起こらないみたいだ」
「よし! じゃあ次は」
「……やらないと、だめですか?」
「うん! 未知へと挑戦するのが冒険者だよ!」
……しょうがない。どうせ、何も起こらないと思うけど、やるだけやってみよう。
「ほい」
どうせ何も起こらないと思い軽めに刺したつもりだったけど。
「へ?」
石で出来た床が輝いたではないか。
マジですか?




