第四十六話 別空間へ
読書様方へのお知らせ。
これまで、毎日三話更新をしてきましたが……明日から二話更新になります!
時間は十二時と二十一時を予定しいます。
ライカ達と別行動をすることになったレンときらめは、それぞれ不思議なところはないかと倉庫内を調べている。
レンは、木箱などの隙間や棚の後ろなどを覗いている。そして、きらめはスマートフォンのカメラ機能を使ってあちこちを撮っている。
が、レンには何をしているのか理解できず、つい問いかけてしまう。
「きらめお姉ちゃん。今は写真を撮っている場合では」
「心配しないで、レンちゃん。私はただ写真を撮っているわけじゃないんだよ」
と、レンのことを撮影しながら答える。そう言われてもレンには、知識不足なためただ写真を撮っているようにしか見えない。
どういうことかと首を傾げると、撮った写真を確認しながら説明を続ける。
「私達の世界ではね。幽霊っていうのは、よくこうやって写真に写ることがあるの。心霊写真って言うんだよ。まあ大体は、インスタントカメラとかデジタルカメラとか、本格的なカメラが多いんだけど」
「つまり、撮影するために特化したカメラの方が幽霊は写りやすいということですか?」
「感覚的にはね。でも、こういうカメラで写ることもあるから……むう」
どうやらさっきまで撮っていた写真の中には幽霊は写っていないらしい。やっぱいないのかな? と、きらめは首を傾げる。
その後も、異変が起きないかどうか警戒。
十分が過ぎた頃に、きらめがこんなことをレンに問い掛けた。
「あのね、レンちゃん。これから一緒に旅をすることになったから、思いきって聞こうと思うんだけど……三人の旅の目的とか、あるのかな?」
きらめの質問にレンは、ピタリと動きを止める。
「旅をする理由は、主に二つ。気ままに旅をしたいか、何か目的があって旅をするか。私は前者だけど」
「……私達は、いえ主様は自分の力について調べるために旅をすることを決意しました」
「それって、ライカちゃんのこと、だよね」
はい、短く頷き、ライカとミィヤが居る方向へと目を向けるレン。
「主様は、どうして自分にこんな力があるのかと、ずっと疑問に思っているんです。主様の力のことを教えたのは、主様のお祖父様であるラゴン様でした」
「……」
きらめももう察しがついているようだ。レンもそれを理解し、説明を続ける。
「はい。すでにラゴン様はこの世にはいません。主様は、手紙で力のことを知ったのです」
「旅に出ているってことは、何か手掛かりを見つけたんだよね?」
レンは、こくりと頷く。
「主様の力について知っているラゴン様がいない今、頼りになるのは、かつてラゴン様と旅をしていた仲間達。主様は、可能性があるとすればその方々しか考えられないと」
ラルクの家族は、すでにいない。残っていた日記などを調べても力について書かれているものは一切なかった。そのため、後頼りになるのは力のことを教えてくれた祖父ラゴンのかつての旅仲間。
彼らは、今もなお生きており、一人になったラルクを心配して毎月のように手紙を送ってくる。
その手紙の中には、ラゴンとの旅話がいつも書かれていた。ラルクにとって、大好きな祖父の話が毎月聞けるのは、何よりの楽しみであり、励みだった。
「そっか……ラルクくんの力の秘密か。そもそも変身の仕方からして特殊というか……その」
「はい。主様もとても恥ずかしそうでした。まさか、おち」
「ストップ! レンちゃん! ストップだよ。女の子がそういうことを軽々しく言っちゃいけません! いくら大好きな主様でも!」
「しかし、私は主様の過去の記憶を受け継いでいます。そのため、男性のおち」
「むー! むー!!」
恥ずかしくもなく男のあそこを発言しようとするレンを、きらめは強引に自分の胸に顔を押し付けることで止めた。
「もがっ!?」
「もう、ラルクくんを困らせたくなければ、そういうことは控えた方がいいよ?」
「え? そ、そうなのですか?」
レンは、なんとか顔を上げ、きらめの発言に対して聞き返す。
「そうなんです。この際だからお姉ちゃんが教えて上げます。いくら記憶を受け継いで男の子のことを知っていても、レンちゃんは女の子です。そして、ラルクくんも可愛いレンちゃんから男の子の……を口にして欲しいなんて、思ってません。というか、嫌だと思います」
「そ、そういえばなんとなく微妙な顔をしていたような……!」
「ほらね? だから、ラルクくんに迷惑をかけないように、危ない発言はお姉ちゃんが教えて上げる!」
「覚えれば主様にご迷惑をかけないようになりますか!?」
その純粋で、真剣な眼差しにきらめは力強く頷き、親指を立てる。
「もちろん! きらめお姉ちゃんにお任せだよ!」
「よ、よろしくお願いします! きらめお姉様!!」
「お、お姉様!?」
ふいの進化した呼び方にきらめは、きゅんとなる。大好きな主のために、頑張るぞと言う意志が伝わってくる。
尻尾を全力で左右に振り、真剣で力強い眼差しだ。
こんな目をされたら、そんな呼び方をされたら……。
(やるしかない!!)
きらめの姉パワーが上がった瞬間だった。
「……あれ? きらめお姉様」
「なぁに? レンちゃん?」
若干テンションが上がり過ぎて、にやけ顔のきらめに、レンが鋭い眼差しで、彼女な背後を見詰める。
「後ろに何か」
「後ろ?」
真面目な雰囲気に、きらめも気持ちを切り替え、レンを抱いたまま振り替える。
そこにあったのは、さっきまで食料があった棚に……渦があった。
ただの渦じゃない。透明で、注意深く見ないとわからない渦だ。そこへ、食料が吸い込まれていた。
「あれが、食料消失の原因だね!」
レンを離し、即座に写真に納めるきらめ。
「主様! 異変が起こりーーーなっ!? 主様!?」
「どうしたの? レンちゃん!」
「主様とミィヤ様の気配が急に……消えました」
「え? それって」
あっちのほうでも何かがあったということだ。ならば、こっちは放っておいて二人のところに、と思った刹那。
「わー!? す、吸い込まれる!?」
「くっ!? なんて吸引力! こうなったら、私の炎で!」
ゴウ! と、手から黒き炎を生み出すが、きらめが慌ててそれを止める。
「待って待って! そんなことしたら喫茶店も燃えちゃうよ!」
「では、どうすれば!」
「……私に、良い考えがある」
それは? と、レンが問い掛けるよりも早くきらめが抱きついてきた。そして、そのまま自分達を吸い込もうとする渦を見詰める。
まさか……。
「いっくよー!」
「やはり自ら!?」
「心配しないで、レンちゃん!」
「な、何をですか?」
「私の勘が当たってれば、この向こうに二人も居る!!」
どれだけ自分の勘を信じているのか。自信たっぷりに言い切り、きらめは渦へと突っ込んだ。
「信じてますからねー!!」
「きゃー! レンちゃんもふもふー!!」
まるで緊張感のない空気で渦へと飲み込まれた二人。
しばらく不思議な通り道を流れ、流れて……辿り着いたのは。
「……ここは、どこでしょう?」
「なんだかお化け屋敷っぽいところだね」
不気味だが、どこかそうでもないと思えてしまうような屋敷が建っている不思議な空間だった。




