第四十三話 異世界スマホの機能
「というわけで、今日はスマホの機能を色々公開しちゃうよ!!」
僕がライカだとばれてしまった日の翌日。
色々とスマホの機能を聞いたのだが、実際に見た方がわかるものもあるということで、町の外へとやってきていた。
作戦はうまくいっているようで、きらめさんから僕の変身についての話題は出てこない。
もう日も跨いでるし、忘れているんだと信じたい。
ちなみに、今回はギルドの依頼を請けている。ハーバでは諸事情で冒険者家業を休んでいたけど、今回からは解禁だ。
有名どころが何かあれば、他のギルドや冒険者達にも伝わるけど、僕の場合、そこまで有名じゃなかったというか、弱いわりには頑張っているねという評価の冒険者だった。
冒険者は死と隣り合わせな職業。
世界中のどこにでも居る存在。
僕のみたいな冒険者ももちろんたくさん居るはずだ。そして、気づいた時には、死んでいたことなんてこともよくあること。
「今回の依頼って、山賊討伐ですか?」
「うん。ほら、この前倒した人達。あの人達が山賊だったらしくてね。その生き残りがこの先に居るみたい」
生き残りって……あの人達は死んではいないんですが。
「ずっとアジトがわからなかったけど。昨日の山賊達から情報を引き出せたんだって。偶然とはいえ、思わぬところで貢献しちゃったは……
」
「その流れで、一気にアジトを襲撃して、山賊どもを殲滅するんですね!」
レンもなんとか復活してくれてよかった。でも、昨日の失態を挽回しようと空回りしなければ良いけど。
「ところで、ラルクくん」
「なんですか?」
丁度、アジトがある森に入ったところで、きらめさんが問いかけてくる。
「私の力を見せたら、ちゃんとライカちゃんに変身する瞬間を見せてね?」
「……」
その発言に思わず歩みを止めてしまった。
「お、覚えていたんですか」
「もちろん! 私、記憶力いいから。そのために、張り切って私のことを教えてあげるから!!」
これは、やらなくちゃならないのか? いやしかし、変身の仕方を教えればさすがのきらめさんでも、諦めてくれるはずだ。
そう信じないと、後は逃げるしかないから。
「主様。その時は、私が股間部をお守りします!!」
「え? あ、うん」
お守りしますって言われても……気持ちは嬉しいけど。
「ラルクさん! わ、わ、私も! その……」
とても恥ずかしそうに、レンに続こうとするので、僕は頭に手を置き、止める。
「ミィヤ……無理しなくてもいいからね」
「うぅ……」
とはいえ、二人が力を貸してくれるなら、なんとかなるはず。
それに、もしもの時は背を向ければなんとかなる。きらめさんに向けて露出しなければ……うぅ、今後はやっぱりライカのままで過ごした方がいいんだろうか。
確かに、ラルクで居るよりもライカの方が圧倒的に強いし、何があっても対処できる。けど……そうなると、ライカが本当の自分なんじゃないかと思い始めてしまうことがありそうで、怖い。
じいちゃん……なんでこんな変身の仕方なの? せめて、露出しなくてもいい方向にして欲しかったよ。
「よっと! もう! はぐれちゃうよ?」
先に行ったと思ったきらめさんが、目の前に現れる。
木の上から現れたのか、頭に木の葉がくっついている。僕は、すみませんと謝りつつ、頭の木の葉を取ってあげた。
「ありがとう、ラルクくん。君は、優しい子だねぇ。よしよし」
ただ木の葉を取っただけなのに、頭を撫でてくれる。きらめさんのお姉ちゃん行為は、継続のようだ。
「さっ! ここから慎重に行くよ!」
満足げな表情でスマホを取り出すと、アプリを開く。
ちなみにアプリとは、スマホに必要不可欠なものらしく、アプリの数だけ、スマホはどこまでも進化するんだと説明してくれた。
そして、今起動しているアプリは、どうやら地図アプリのようだ。
あの小さな板に、この辺りの地図が表示されている。
おそらく赤い点がきらめさんなんだろう。
「えーと、今がここだから……うん。ここから五分で到着だね」
「到着時間までわかるんですか?」
「まあね。けど、アジトがあるところって、何もないところだけど……」
僕達も、後ろから確認すると、アジトがあるであろう場所は緑色だった。確かに、何もないみたいだ。
「もしかして、情報はデマだったとか?」
「いや、もしかすると……地下じゃないかな」
今まで見つからなかったということを考えると、地下にアジトがある可能性が高い。
「なるほど。さすが主様です」
「じゃあ、その線で色々と考えてみよう。お姉ちゃんにお任せ!」
大丈夫なんだろうか? 本当に。
その後、アジトがあるであろう場所に到着した。見た感じ、何もない場所だ。特に拓けているでもなく、目印になるようなものもない。
あるのは、鬱蒼とした草木。
この地下にアジトがあるとすれば、掘るか?
「それで、どうするんですか? きらめさん」
「まあ、見てて!」
何をするのかと、様子を見ていると……どこからともなくスコップを取り出した。
「え? あのきらめさん」
「なに?」
僕と会話をしながら次は黄色いヘルメットを取り出し被る。
「もしかしてだけど、掘るの?」
思わず敬語を忘れてしまうほどのやり方だった。いや、僕も考えたけど。
「うん、掘るの」
「当然その後も考えてるんですよね?」
「掘ったら、大声で呼ぶ!」
……だ、大丈夫かな? そうこうしている内に、きらめさんはスコップを地面に突き刺し、土を掘り始めた。
いつの間にか衣装も炭鉱夫ぽくなってるし。
「私もお手伝いしたほうがいいでしょうか?」
「大丈夫だよ、ミィヤちゃん。それに、私って結構運がーーーお?」
最初のところをしばらく掘っていると、ぼろぼろ……と、穴が空いていたかのように土が落ちる。
「マジですか……」
「いえい! アジトの入り口発見! 褒めて褒めてぇ!」
地下にアジトがあるのもそうだけど、きらめさんの運の良さが凄い。まさか、一発で掘り当てるとは。
「さて、それじゃあ山賊さんを」
「ちょっと待ってください、きらめさん」
本当に叫ぼうとするので、僕はそれを止める。
「叫ぶのは止めましょう。もしかしたら、こことは別ルートの入り口があるかもしれません」
「あっ、そっか。もし他に入り口があったら、そっちから逃げちゃうよね……じゃあ、仕方ない。魔法で寝かせちゃおう! 【魔法アプリ】起動!」
叫ぶのは諦めてくれたようで、スマホを取り出し【魔法アプリ】を起動した。
そして、穴へ向けてスマホをかざした。
「〈スリープスモーク〉」
魔法を発動すると、地下室へ向けて白い煙が吐き出される。
どうやら睡眠効果のある煙のようだ。
「もくもーく」
「なるほど。眠ってから捕まえるってことですね」
「うん。しかも、この煙の広がりはかなり早いうえに即効性! 煙だから少しの隙間があれば、するーっと侵入しちゃうんだよ」
出会った時の大火力の魔法がインパクトが大き過ぎたせいか、凄く地味に見えるが、かなりえぐい。
気づいた時にはもう夢の中。叫ぼうにも叫べないってことだ。
「そろそろいいかな?」
三分ぐらいが経ったところで、きらめさんはスマホから煙を出すのを止めて、階段を下りていく。
僕達も後に続く。
「〈ダイソン〉!」
「だ、ダイソン?」
よくわからない名前を叫ぶと、スマホから渦が生まれ、地下室に漂っている煙が吸い込まれていく。
「よし! このまま煙を吸い込みながら突き進むよ!」
と、張り切るが。
「主様!!」
「レン?」
レンが何かを感じ叫んだ瞬間。
「おお?」
どでかい地響きが起こる。そして、すぐ獣の咆哮と共に地面が崩壊した。




