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第四十二話 異世界人について

「ふう……ミィヤちゃんのおかげで立ち直れたよ、お姉ちゃん」

「よ、よかったです」


 しかし、ミィヤはずっときらめさんに抱きつかれ、頬ずりをされていたため、妙に疲れているようだ。

 そして、相変わらずレンは僕に引っ付いたまま何も喋らない。たまに、頭を撫でてやると反応しているような感じがするが、まだ先みたいだ。


「というわけで、私がどうやってこっちの世界に来たのかとかを話すね」


 この口ぶりだと、普通に召喚されたわけじゃないみたいだ。


「まず、私は一度死んでいます」

「ん?」

「え?」


 まず、という言葉に続くものがとんでもないものだった。これには、二人とも眉を潜める。

 この人は何を言っているんだ? と。


「それが事実だとしたら、あなたは生き返った、もしくは生き霊となっていることになりますけど」


 死者を生き返らせることなんて、できるはずがない。死者や骸骨を動かすようなスキルは存在しているけど、生き返らせるなんてそんなの神様とかじゃない限り。


「うん。私ね、女神様に生き返らせて貰ったんだよ」


 う、うーん……これまたすごいことをさらっと言う。女神様ってことは、生命を司る女神クルティシア様辺りだろうか?

 

「クルティシアって名前でね」


 当たってた。まさか、本当にクルティシア様だったとは。


「実は、元の世界。地球って言うんだけど。そこに彼女が飼っているペットが迷い混んじゃったらしくてね」


 クルティシア様のペットというと、神獣カオンだろうか? 確か、白い毛が美しい狼だったはずだけど。


「そのカオンを偶然にも私が見つけて、車に轢かれそうになっているところを助けたら、お礼にってこっちの世界に転生させてくれたの! しかも、転生特典としてこのスマホをチート級にして!!」


 ……うん、ついていけない。まず、車というものをよく知らないし、カオンは助けられるほどの存在じゃないし、助けてくれたお礼に別世界に生き返らせてくれるって、そんなことあるのか?


 色々とわからないことが増え過ぎてミィヤなんて、固まってる。

 けど、わかったこともあった。

 最初に出会った時から気になっていた薄い板の名前はスマホ。どうやら、きらめさんの世界の道具らしい。チートという言葉は、きらめさんの言動とクルティシア様が関わっていることから察するに、最強という意味なんだろう、おそらく。


「えっと……まとめると、きらめさんは一度は死んだけど、クルティシア様のペットを助けたことにより、お礼としてこっちの世界に生き返らせてもらった、ということで良いんですよね?」

「うん!」

「そして、ただ生き返ったわけではなく、スマホという道具をクルティシア様の力により、チートにしてもらった、と」

「うん! うん!!」


 とりあえず、きらめさんの素性とここまでの経緯を知ったけど……正直に言おう。

 理解が追い付かない……! そもそも、別世界から来たってだけで、とんでもないのに、一度死んだ? クルティシア様のペットを助けたお礼に生き返らせて貰った? 


「ラルクくん?」


 落ち着け、僕。ここで、ダウンしていたら、話が続かない。そんなことになったら、彼女の前で変身しなくちゃならなくなる。

 ミィヤやレンが、ダウンしているのなら、僕がしっかりしなちゃ。


「すみません。もっと詳しく教えて頂けませんか?」

「お? ラルクくんはお姉ちゃんに興味津々みたいだね。よーし! そういうことなら、もっと話してあげるね!」


 よし、この調子で何とか場を繋ぐんだ。


「じゃあ、ラルクくんから質問して。それに私が答えるから」

「そういうことなら、さっそく……うん。車というのはどういうものなんですか? 話から察するに、動く何かのようですけど」

「こっちで例えるなら、馬を使わない馬車、かな?」


 それって、馬車って言わないんじゃ……ともかく、乗り物だということなんだろう。


「では、次にカオンを助けたと言っていましたが。僕が知る限りカオンは誰かに助けてもらうほど弱い存在ではないはずなんですが」


 神獣の中でも美しい毛並みを持ち、人が簡単には乗れるぐらいの大きさがある。世界中に伝わっているクルティシア様の絵には絶対カオンに乗っているものがほとんどだ。


「え? そうなの? 私が助けたのは子犬だったけど」

「こ、子犬?」


 てことは、姿を変えていた? いや、それともカオンの子供?


「……次です。クルティシア様に出会い、生き返らせて貰ったというのは事実なんですか?」

「うん。金髪で、おっぱいが大きな女の人だったよ。頭に草の被り物を被ってたかな?」


 合ってる。きらめさんが言ったのは、間違いなくこの世界に伝わっているクルティシア様の特徴だ。

 

「それで、どんな風に会話を?」


 ここが一番重要だ。相手は女神様。僕には想像できないけど、とても神々しい輝きを放ちながら、一言一言に重みがあるような。


「え? 普通にお喋りをしたよ? その髪留めの猫ちゃん可愛いですねぇ、とか。あっ、お茶でもいかがですか? とか。最近カオンがよくどこかの世界に迷い混みすぎて困っているんです、とか」


 おかしい。完全に近所のお姉さんとでも話しているようにしか聞こえない。こ、これが女神様の真実の姿? そんなまさか……ちょっと、僕の中のクルティシア様から神々しさがなくなってきたんだけど。

 想像してしまう。きらめさんと仲良くお茶をしているクルティシア様の姿を! 


「ラルクくん?」

「……それで、そのスマホでしたっけ? それはどういう道具なんですか?」


 ま、負けるな僕。ここからが本番じゃないか。ずっと気になっていたスマホなる道具についてだ。


「これ? いやー、これが凄いんだよ? こっちに来て使えなくなっちゃった機能もあるけど、クルちゃんのおかげで色々とチート級になっちゃったからさ」


 クルちゃん!? それは、クルティシア様のことだよね? そんな友達感覚で……。


「あっ、その前にラルクくんにはこれを見てほしいんだ」


 そう言って、きらめさんはスマホを僕に差し出す。

 これは、驚きだ。スマホにきらめさんらしき人の絵が描かれていた。らしき、というのは違うところがあるからだ。

 それは、髪の毛の色。きらめさんは桃色なのに、スマホのきらめさんは、黒髪なんだ。これはいったい……。


「それは、ここに来る前の私。そして、それがスマホの機能……力のひとつ。こうやって」


 僕からスマホを奪い取り、何故か僕に向けてきた。警戒するが、大丈夫だよと言うので、黙る。

 すると、パシャ! という音が響いたと思いきや、きらめさんがスマホを僕に再び手渡す。


「こ、これって僕?」


 なんと、返ってきたスマホには僕が居た。鏡というわけではない。完全にスマホに僕が居るのだ。


「うん。写真って言ってね。なんていうのかな……うん。一瞬で絵を描いちゃうって言えばわかるかな?」


 確かに、この僕はさっききらめさんがスマホを向けていた時の……。それにしたって、こんな精巧な絵を一瞬でなんて。

 写真。恐ろしい力だ。こんな力が世界中の絵描きに知られたら、どうなることやら。


「話を戻しますが、さっきのはどういうことなんですか? 髪の色が違うということですが」


 生前。つまり、元の世界に居た頃は黒髪だったのに、転生したら桃色なんて。転生したら、髪の色が変わるのだろうか?


「それはね……」


 何やら神妙な雰囲気になった。それだけ、深い意味があるってことなのか。


「せっかくのファンタジー世界なんだし、髪を染めちゃったんだぁ! 私の高校校則で髪を染めるとかだめだったからさ。思いきってね? いやー、自分で言うのもなんだけど、意外と似合ってるよね? 桃色。ちなみに、これもクルちゃんがやってくれたんだよ?」


 意外と深い理由ではなかったようだ。つまり世界観に合わせたってことなんですね。

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