第三十七話 不思議な道具使い
皆さん! ロリの日にぴったりな話をどうぞお!!
台風が近づいてきていますが、どうかご無事でありますように!!
「わー! すごい! 凄すぎるよー! こんな壮大な草原初めてだよー! スクショ不可避!!」
何もないただの草原で、一人の少女が何がそんなに凄いのか、楽しそうに薄い板をいたるところにかざす。
パシャ、パシャ、と音を響かせながら、くるくると回っている。
「ふう……ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったなぁ。飲み物、飲み物っと」
額の汗はないが、拭う仕草をしてから、薄い板を親指で弄り始める。そして、しばらくするとお? と声を漏らし、たんっと板をタップする。
すると、どこからともなくコップが現れ、少女の手に収まる。蓋がされているようで、中には黒い粒状のものが入っており、ミルクコーヒーのような色をしている。
「んー! やっぱこれだよねー!」
ストローに口をつけ、ごくごくと勢いよく飲み、身を震わせる。
その後、コップを片手にまた薄い板を弄り始めるが、動きが止まった。
「あれ? あれは……」
薄い板を持った左手を額辺りに当てながら、目を凝らす。
少女の視線の先には、どうやら馬車が魔物達に襲われている光景が映っているようだ。
「わっ!? これってイベント発生っ!? ここはのどかだったから、ないと思ってたんだけど……でも、困ってる人あらば、助ける! それが、正義の味方ってやつだよね!!」
まだ飲み干していない飲み物をパッと一瞬で消し、薄い板を構える。
「さあ、バトル開始!」
たん! と薄い板にある複数の四角形の中から、魔と書かれたものをタップする少女。
刹那。
薄い板から眩い光が漏れ出した。
・・・・・
「いい天気だね、今日は」
「ですね。昨日は雨雲が多かったので、雨が降ると、心配していましたが、見事な快晴です! お祈りした甲斐がありました!!」
「何かをずっと呟いていたと思っていたけど、そんなことをしていたんですか? レンちゃん」
「少しでも、主様のためにと思いまして!」
ハーバから旅立ってももう一週間が経った。早いものだが、思っていたよりも快適な生活だ。
やはり、何度も野宿の練習をしておいたのがよかったのだろう。
とはいえ、そろそろ人里が見えてくる頃だ。
それにしても、今はライカの姿なのだが……三人で並んで歩いていると、旅をしているようには見えないよね……。
完全にピクニックしているようにしか見えないだろう。
「ん?」
念のため〈生命探知〉を使ったところ、こちらに近づく反応を複数感知した。ざっと数えて、二十と言ったところか。
これは完全に狙われている。
「主様」
「うん」
レンも気づいたようで、目を鋭くする。
僕は、ミィヤに止まるように指示をして、袖からナイフを取り出そうと構える。
「おんやぁ? お嬢ちゃん達、こんなところで何をしてるのかな?」
「親とはぐれたのか? だったら、おじさん達が一緒に探してあげようか?」
現れたのは如何にも悪そうな顔と格好をした男達。
大した相手じゃない。
ここは〈ライジングステップ〉で一気に。
バチッ、と雷を纏おうとした刹那。
「そこまでだよ! 悪党!!!」
どこからともなく、見知らぬ少女の声が響き渡る。
視線を向けると、ちょっと隆起した場所に不思議な格好をした少女が立っていた。
桃色の髪の毛を猫の装飾が可愛い髪留めで一本に束ね、肩から垂らし、ぱっちりとした目は輝いているように見える。
黄色のもこっとした上着の袖はかなり長く、手が半分ほど隠れている。スカートも短めで、日差しで焼けた小麦色の素足はすらりと長く、ライカと比べると何もかもが違う。
特に、胸の部分は圧倒的だ。別に気にしてはいないけど、二倍、いや三倍? 四倍はあるか? ミィヤよりも大きな胸だ。
とまあ、格好だけでもかなり珍しいが、一番気になっているのは、彼女の右手にある薄い板だ。
何やら、普通じゃないことはわかるんだけど……まさかあれが武器とか?
「なんだぁ!? 俺達の邪魔しようってのか!」
「当然! 無垢な幼女達を取り囲むなんて、絶対許さないんだから!! 【魔法アプリ】起動!!」
男達と、会話をしながら少女は薄い板を指で叩く。何やら聞き覚えのない単語を言ったけど、スキルを発動させたのかな?
ここからじゃ、遠くてよく見えない。あの薄い板に何か変化が生まれたのか?
「構うな! あの女をやっちまえ!!」
特に何も起こらないことを良いことに、近くに居た男達が少女へと襲いかかる。手助けをするか? ナイフの柄を掴んだところで、少女が再度叫ぶ。
「座標確認! 〈ショートワープ〉!!」
「え?」
「はわぁ!?」
先程まで、かなりの距離が離れていたのに、少女はまるで転移したかのように、僕達の目の前に突然現れた。
あまりの衝撃に、ミィヤは僕の腕にしがみつく。
「な、なんだ!? 何が起こりやがったんだ!?」
これには、男達も動けなくなるほど驚いている様子。魔力を練り上げた瞬間がなかった? スキルを使うと体から魔力が漏れ出すはずなのに……それに、彼女が使ったのは転移。
そんな高等スキルを使えるなんて、何者なんだ?
「君達!」
というか、こうして近くから見ると……そこまで大きくなかった。あっ、胸がじゃなくて身長がね。
なんだか距離や存在のでかさから、身長もかなり高いように見えていたけど、こうして近くで見ると百五十ちょっとと言ったところだろう。ライカの姿なら十分大きいんだろうけど。
「お姉ちゃんが助けに来たからもう安心だよ!」
僕達だけでも十分倒せる相手だけど、この人の力が気になるし。
「はい、ありがとうございます」
と、様子見をするためにお礼の言葉を言う。すると、なんだか表情が急にだらしなくなる。
まるで、さっきの言葉に気分が高揚したかのように。
「お姉ちゃん! が、あんな悪者すぐやっつけちゃうからね!!」
なんだかやたらとお姉ちゃんを強調したような気が。
「なめんじゃねぇぞ! おらあ!!」
「たった一人で何ができるってんだよ!!」
鋭い目付きで睨み、大声で威嚇してくるが、少女はまったく動揺しているようには見えない。
というか、男達の言葉が耳に入っていないのかもしれない。
なんだか興奮しているようだし。
「これだけの数だから……これで決まり!」
何やらまた薄い板を弄っている。そして、たん! と親指で板を叩く。
「やっちまえ!!」
「今度こそ、ぶっ殺してやらあ!!!」
武器を構え、こちらへ突撃してくる男達。少女は、その場から動くことなく、薄い板をなぜか男達に向けて構えた。
「まとめて、吹っ飛んじゃえ!! 〈マジカルブラスター〉!!!」
刹那。
板から膨大なエネルギーが放出。男達は成す術もなく、光に飲み込まれた。
「……死んじゃったんでしょうか?」
草原に焼け焦げた溝ができ、男達の姿がないのを見て、こっそりと耳打ちをしてくるミィヤ。
それに対して、僕は〈生命探知〉を使って男達の安否を確かめる。
「……どうやら、相当吹っ飛ばされたみたいだけど、全員生きてはいるみたいだね」
「あれだけのエネルギー砲を受けて生きているとは。運が良いのか。それとも彼女が手加減をしたのか……不思議ですね、主様」
色々と謎が多いけど、ひとまずは。
「よし! これで悪党はやっつけたよ! もう心配しなくていいからねぇ!!」
僕達が、さっきの男達を怖がっていたと思っているのか、戦いが終わると、三人一緒に抱きついてくる。
特に抵抗することもなく、さて、どうしたものかと思考。
悪い人ではないみたいだけど……色々と謎が多過ぎて、すぐには受け入れられない。特に、あの板だ。
見たところ魔法の杖のような代物みたいだけど。あんな形状は、見たことがない。そもそも杖には見えないし。
「こんなところで、どうしたの? 親御さんとはぐれちゃったの?」
さっきの男達と似たようなことを言うが、まったく悪意がないので、僕達も自然に答えてしまう。
「いえ、実は三人で旅をしているんですよ」
「ええ!? この三人で!?」
「は、はい。そうですけど」
そりゃあ、驚くよね。こんな小さな女の子三人でなんて。本当は、一人だけ男が混ざっているんだけど。
「それは危険だよ! さっきみたいに悪い人達が誘拐しようと近づいてきちゃうんだよ!?」
まるで、小さな子に教えるように言う少女。心配してくれるのは嬉しいけど。
「大丈夫ですよ。僕達は」
「僕っ娘!?」
「へ?」
なんで、こんなに驚いているんだろ? 確かに、女の子で僕という一人称は珍しいかもだけど。
「……こほん。よし! だったら、お姉ちゃんが護ってあげる!!」
「あ、あの」
「悪い奴等が来ても、お姉ちゃんがさっきみたいにやっつけちゃうから!! 安心してね!!」
……仕方ない。これは、完全に人の話を聞いてくれないパターンだ。
期待の眼差しでこっちを見ている少女を見て、僕は二人に確認の視線を送る。
二人が首を縦に振ったので、僕は。
「わかりました。では、お言葉に甘えようと思います。あっ、僕はライカって言います」
「私はレンと言います」
「ミィヤです。これでもドワーフ族なので、よろしくお願いします」
僕達の自己紹介を聞いた少女は、自分もと立ち上がる。
「私は、きらめ! 都野きらめだよ!! 気軽にきらめお姉ちゃん! って呼んでね!!」
これは、言わなくちゃならない流れなのだろうか?
「はい。よろしくお願いします。きらめお姉ちゃん」
「はうっ!?」
「お世話になります、きらめお姉ちゃん」
「うぐっ!?」
「だ、大丈夫ですか? きらめお姉ちゃん?」
「だ……大丈夫、だから!」
本当に大丈夫なんだろうか、この人?




