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第二十六話 冒険者達との交流

「結局、お金を一杯貰っちゃったね」

「まあ、お金はいくらあっても困りませんから」


 領主アルサールさんと一通りの会話をした後に、僕達はこれまでの活躍を称えられしばらくは働かなくても暮らしていけるぐらいの資金を手に入れた。


 本当はいらないと言おうしたが、人の好意をあまり無下にすると、それこそだめだと思い、三人分受け取った。

 本当は、まだ色々と用意されていたようだけど、お金だけで十分ですと言って屋敷から離れた。時間があればまたいつでも遊びに来ても良いと言ってくれたけど、そう簡単に領主の屋敷に行くのはちょっと……また変な噂が広まりそうで怖いなって。


 そういえば、アルサールさん。帰る時に何か言いたそうだったけど……まさか、ね。


「……」


 屋敷から離れて、ふとミィヤの様子が変なのに気づく。


「ミィヤ? さっきから静かだけど、大丈夫? どこか具合が悪いなら」


 アルサールさんと話す前は、緊張はしていたけどいつものミィヤだった。けど、なんだかアルサールさんと話をしてから、様子が変になったんだ。

 妙に静かって言うか、何か考え事をしているというか。


「い、いえ! なんでもないんです。体調はこの通り万全ですから!!」


 ほりゃあ! と、フードが外れそうになるぐらいの拳圧を生み出すミィヤ。た、確かに元気一杯だ。

 というか、時々ミィヤがドワーフ族だってことを忘れることがあるから困る。普通にしていれば、普通の女の子にしか見えないからね。いや……普通の女の子が、鉱石や鉄製品が詰まったカバンを軽々と背負えるわけがないか。


「大丈夫なら、良いんだけど。何か困ったこととかあったら相談してね。僕達なら、いつでも力になるから。ね? レン」

「はい! ミィヤ様は主様の一番の親友! そして、美味しい料理をいつも食べさせてくれるいい人ですから!!」


 それは、餌付けをされているみたいだから止めておいたほうがいいよ、レン。事実だけどさ……。


「ありがとうございます、ライカさん、レンさん。えへへ、なんだかもっと元気になってきちゃいました!!」


 などと、喜びを拳圧で表現するミィヤ。うん、やっぱりこの子は、ドワーフ族だ。拳圧だけで、普通に戦えちゃうんじゃないのかな? なんて思えるほど、凄まじい拳圧が飛ぶ。


「うおっ!? ははは! こりゃあ、すげぇ拳圧だな。嬢ちゃん!!」

「あれ? 貴方達は」


 丁度街中に入るところで、見覚えのある顔ぶれが揃っていた。

 前回、女性誘拐事件で関わった冒険者達だ。

 まず話しかけてきたのは、大剣使いの丸刈りな大男。改めて近くで見ると、僕の二倍以上はあるんじゃないだろうか? 完全に見上げる格好になってしまっている。

 

「あの時以来だな。俺は、Cランクの冒険者でゴバックってんだ。まさか、そんな小さいなりをしてあれだけの力があるなんて……お前達、本当に子供か?」

「まあ、はい」

「たく、最近の子供はどうなってんだ……力だけが自慢だったのに」


 僕の場合は、見た目だけですけど。この中でまともな子供はミィヤぐらいじゃないかな?

 そして、次に弓使いの女性が話しかけてくる。茶色のふんわりとした髪の毛がよく似合い、お姉さんと呼びたくなる雰囲気がある。


「弓使いのラメサよ。あの時は、本当にありがとうね。あなた達が助けに来てくれなかったら、今頃は……特にミィヤちゃん、だったわね」

「は、はい!?」


 そっと、ミィヤと視線が同じになるようにしゃがみ、力強く手を包み込むように握り締めた。


「あれだけの傷を癒すなんて凄い回復術だわ。あなたから傷を治して貰っていた時、とても安心するような気持ちになったの」

「そ、そうなんですか? 私、ただ必死で」


 顔を赤くしながらも、答えるミィヤ。確かに、ミィヤの回復術は、日に日に効果が高くなっている気がする。

 正直、二人の回復具合を見た時は、驚いたよ。


「その気持ちが、影響したのかもね」

「でも……もう魔法使いの人は」


 だが、さすがのミィヤでも死んだ者は助けることはできなかった。ミィヤが悪い訳じゃない。あの時はもう手遅れだったんだ。

 

「……トロワのことは本当に残念だったけど。彼も冒険者。いつ死んでもおかしくないってわかっていて、この仕事をしていたの。だから、ミィヤちゃんが悔やむことはないわ」

「……はい」


 トロワとは、あの魔法使いの名前。ちゃんと、埋葬できたのかな?

 先輩冒険者達の挨拶が終わったところで、次に挨拶をしてきたのは、僕達に救助の依頼を出しリーグさんとその幼馴染みであるアルメさんだった。


「ライカさん。あの時は、僕の話を聞いてくれてありがとうございました。おかけで、またアルメと一緒に冒険者家業ができます」

「改めまして、アルメと言います。正直、あの時は覚悟を決めていました……このまま《ゴブリン》の玩具にされるんじゃないかって」


 後でわかったことだけど、アルメさんやあの牢屋に閉じ込められて居た人達は、服を脱がされていただけで、まだゴブリン達に犯されてはいなかったようだ。


 彼女達自身は、ゴブリンのことをよく知っていたため、捕まった時はもうだめかもと思ったようだ。

 逃げようにも、牢屋外には《オーガ》が二体に、ゴブリンの集団。武器がないのでは、さすがの冒険者や傭兵でも勝ち目は薄かったということだろう。


「全ては迅速な判断をしてくれたゴバックさん達と、助けを呼んだリーグさんの熱意があったからです」

「まあ、結局やられちまったけどな……たく、何だったんだ。あの蝙蝠野郎は」

「えぇ、まったく気づくことができなかった……そのせいで、トロワも」


 どうやら、ゴバックさん達があんな風にやられたのは、あの蝙蝠男の攻撃のせいだったらしい。オーガやゴブリンだったら、なんとかやれた実力があった。

 しかし、そんな彼らをあの蝙蝠男が襲い、トロワさんへと致命傷を与えた。それにより、陣形が崩され、そのまま……。


「それで、ライカさん。領主様に呼ばれたってことは、あのことを伝えたんですか?」

「はい、もちろん。そちらもギルドへの報告は?」

「もちろん伝えたぜ。けど、いまいちな反応だったな……」


 あのこと、とは。蝙蝠男のことだ。あの言い方から考えて、明らかに《フェロモンゴブリン》は、意図的に進化させられたと考えていい。そして、それをやったのは蝙蝠男が土産話をする者。

 何者かが僕達の知らないところで、何かの準備をしているかもしれないということを、僕がアルサールさんに。ゴバックさん達はギルドに報告することになっていた。


「あの反応は理解できます。何者かが裏で動いているにしても、情報が少なすぎますから……」

「そうね。ギルド長も、わかったとは言っていたけど、情報が少ないんじゃ、動きようがないものね」


 それは、アルサールさんも同じだった。僕が、このことを伝えた時は、真剣な表情でわかったと言ってくれたけど。情報が少ないと言うか、かなり曖昧なせいで、調べるにもどう調べればいいか迷いどころだろうな……。


「でも、なにもしないよりは、少しでもわかっていることを伝えるのは間違ってはいないと思います」


 と、リーグさんが言うと、ゴバックさんが笑いながら肩に腕を回す。


「だな。もしかしたら、意外とすんなりわかるかもしれない」

「楽観過ぎる、かもしれないけど。そういう考えも悪くはないわね」

「ですね」


 そういえば、誘拐事件以来、四人はパーティーを組んだそうだけど……なかなかいい雰囲気だ。

 微笑ましい光景を見ていると、レンが話しかけてくる。


「主様」

「ん? どうかした?」

「実は、まだ主様に話していないことがありまして」


 何だろう? あっ、もしかしてレンが助けた三人のことかな? 結局あの後、色々あり過ぎて聞く機会がなくなってしまったからな。僕も気にはなっていたんだ。


「そうだ! なあ、あんたら今時間は大丈夫か?」


 弟分を可愛がるかのように、リーグさんの頭を乱暴に撫でていたゴバックさんが急に僕達へ訪ねてくる。

 

「えっと、まあ大丈夫、ですけど」

「なら、これから戦闘訓練するんだが、あんたらも一緒にどうだ? いや、むしろ参加してくれ!!」


 え? 戦闘訓練? 


「ごめんなさいね? ゴバックったら、リーグからライカちゃんのことを聞いて、実力を見てみたい! ってずっと言ってるのよ」

「だってよ! リーグから聞いた情報じゃいまいちわからなくてよ」

「す、すみません……俺も、正直ライカさんの強さを言葉では表現しきれなくて」


 なるほど。今まで、実力を見たいって人達は……そういえば居なかったな。いつもは、三人で依頼をしていたし、他の誰かと関わるとしたら、戦闘以外だったし。


「主様。私のほうはいつでもいいですから」

「ごめん。というわけで、ありがたくお誘いを受けようと思います」

「おし! それじゃさっそく訓練場に行こうぜ!!」


 訓練場か。この姿になってからは一度も行っていないな、そういえば。

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