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第二十四話 不穏な未来

次章で、第一部的なものが終了となります。

「くっ! 道が……!」


 ミィヤの回復術のおかげで大分動けるようになった大剣使いの人がまだ気絶している弓使いの女性を抱き抱えながら言う。

 僕は冷静になってまず牢屋に囚われていた人達を救助し、傷が多い人達にはミィヤの回復術を受けてもらうことにした。


「リーグ!」

「アルメ! よかった……無事で!」


 感動の再会をしているところだが、状況は窮地と言っていい。どうやら、あの蝙蝠男が何かを仕掛けていたんだろう。

 自分が死んだと同時に発動する罠のようなものを。

 そして、周囲には何かの術式が刻まれている。下手な行動は避けた方がいいかもしれない。


「おい、嬢ちゃん。この状況、どうする? 情けねぇ話だが、俺達には何もできねぇ。傷が回復したとはいえ、まだ思うように動けねぇんだ」


 不安がっている女性達に対し、大剣使いの人は冷静に今の状況を見て、僕に判断を委ねようとしている。

 確かに、ここでまともに動けるのは僕とミィヤ、それにリーグさんか。ここは一気に崩れた岩を壊すか、天井を……いや待て。もしかしたら、衝撃を与えた瞬間に起動する罠かもしれない。


「あ、あの!」

「ん? ミィヤ、何か手が……あっ」


 どうするかと考えていたところ、ミィヤがあのスコップを手に持って、任せてくださいと言わんばかりの目を向けていた。

 そうか。あのスコップなら!


「ミィヤ。できるか?」

「は、はい! やってみます……いえ、やってみせます!!」


 気合いを入れたミィヤは、右側の壁へと近づき、一呼吸入れて、スコップを差し込む。


 さくっ。

 

 あの時と同じだ。まるで、砂場へと差しているかのように、スコップが入っていく。

 そして、冷静に人一人分が通れるぐらいの穴を掘っていく。掘ったものは〈ダークホール〉で吸収しながら、僕は皆を連れてついていく。


「あっ!」


 そして、しばらくしてついに崩れた岩の壁向こうへと到着した。


「よし! やるな、お嬢ちゃん! まさか岩の壁をあんなにあっさりと掘り進めるなんてなぁ!」

「い、いやぁ、えへへ。これは私のというか、このスコップのおかげというか……」


 だが、そのスコップの力を引き出しているのはミィヤだ。僕やレンが使ってもこんなにもあっさりと簡易的な穴を掘ることなんてできなかったはずだ。

 本当にこのスコップは何なんだろうな……岩を砂でも掘っているかのように。


「皆さん。さあ、外へ。仲間が、他の人達を救助して待っているはずです!」


 レンが《ゴブリン》達を倒し、誘拐された人達を救助したのは〈生命探知〉でわかっていた。今は、洞窟の前で待っているようだけど……おかしいな。反応がひとつしかない?


「レン!」

「主様!! おかえりなさいませ!!」


 外に出ると、レンだけがそこに居た。


「レン。囚われていた人達は?」

「それが、自分達で帰れると言って先に行ってしまったんです。申し訳ありません……」


 かなりタフな人達なんだな。謝るレンに僕は、そっと頭を撫でてやり、笑顔を向ける。


「大丈夫だよ。気にしないで。それにレンはちゃんと役割を果たしてくれたじゃないか。謝る必要なんてないよ。引き留めておいてって言わなかった僕が悪いんだ」

「そ、そんな! 主様は何も悪くありません!」


 そんなやり取りをしつつも、僕達はハーバへと戻っていく。戻ったさいに、リーグさん達はギルドへと今回のことを報告にいくと同時に死んでしまった仲間の埋葬をすると言っていた。

 

 


・・・・・



「……」


 その日の夜。僕は元の姿に戻って考え事をしていた。

 それは、あの蝙蝠男の言葉。

 この先、何かが起こると言う意味深なものだ。それに、レンから聞いた話だと蝙蝠男が言っていた《フェロモンゴブリン》なる魔物は、かなり変だったと言う。

 

 人の言葉を喋り、女性にだけ効果があるという特異な能力。今まで、そんな能力を持ったゴブリンなど聞いたことがない。

 確かに、植物系の魔物の中には、そういう匂いで相手を無力化するような能力を持った奴が居るけど……。


「レン。そのフェロモンゴブリンを見て、どう思った?」


 僕の前で膝をついたままレンは答える。


「進化した、というよりも進化させられた、ように見えました。主様が言っていた蝙蝠男の話を合わせると、その者、もしくはその背後に居る者の仕業かと」


 僕もレンと同じことを考えていた。そう考えると、この前の《クリスタルスライム》も誰かが意図的に解き放った魔物かもしれないと考えてしまう。


「考えすぎかもしれないけど、僕が力を手に入れてから変なことばかりが起こっている気がする……」

「主様……」


 それにあの蝙蝠男の言葉通りなら、僕のことが誰かに伝わっていることになる。

 もし、その誰かが今回の騒動を起こした張本人だったとしたら……。


「このまま街に居るのは、危険かな」


 もちろんハーバに住む人達が、だ。もしこのまま僕が滞在して、また変なことが起こってしまったら、次はどんな悲劇が起こるか。

 

「……だめだな、僕は。自分の力が謎過ぎて、強力過ぎて、どんどんマイナス方向に考えちゃう」

「ご心配なく! 何があろうとも、このレンが主様のお側に居ります!!」


 本当にレンは良い子だ。


「ありがとう、レン。しっかりしなくちゃね。僕には、悲劇を回避できるほどの力があるだから」


 弱気になっちゃだめだ。どんな力だろうと、それは使い手次第。

 決めたじゃないか。

 僕は、この力を正しいことのために使おうって。


「でも、また弱気になっちゃうことがあるかもしれない。その時は、また元気付けてくれるかな?」

「もちろんです! 主様のためならなんでもします!! もちろんミィヤ様だってそう言ってくれるはずです!!」


 ミィヤ、か。確かにミィヤだったら、言ってくれるかもしれない。けど、それはラルクではなく、ライカにだ。

 彼女は、僕の正体を知った時、どんな反応をするだろう。ライカの時みたいに眩しい笑顔を向けてくれるだろうか? それとも……。

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