第二十三話 暗闇の中の戦い
レンと分かれた僕は、ミィヤ、リーグさんと共に駆けている。この奥には、誘拐された人達と《ゴブリン》達が居る。
生命反応からまだ生きてはいるようだけど、早いところ助けないと、何をされるか。それに、リーグさんのことも安心させたいしね。
「もう少しです。おそらく通常のゴブリンに、その進化系が待ち受けていると思います」
「そこにアルメも!?」
「おそらくは。この先にある人と思わしき生命反応は三人。それを護るように魔物の反応が複数。ざっと二十は居ますね」
その中でも、大きな反応が三体か……おそらく《ハイゴブリン》か、最悪の場合……《オーガ》が居る可能性がある。
ゴブリンは、ハイゴブリンに進化した後にそこから色んな進化を遂げる。術に特化した《ゴブリンメイジ》や物理攻撃に特化した《ゴブリンソルジャー》など。
オーガは、ソルジャーから更に進化した存在。
僕も図鑑でしか見たことはないけど、屈強な体は刃をも通さず、その拳は岩をも砕く。
とはいえ、これまで倒してきた《バーンブレードウルフ》や《バーサクモンキー》よりは弱い部類だ。
普通に考えたら問題はない。だが、ひとつだけ奇妙な反応がある。なんだろう……これはレンが向かった方向に居る反応と同じ、か? わからない。こんな反応は初めてだ。
「ど、どうかしましたか? ライカさん」
「……気をつけて。この奥に一体だけ変な反応の奴が居る」
「変な反応?」
僕の背中で首を傾げる中、目的地の到着した。
一応すぐ気づかれないように〈サイレント〉で音を消している。ゴブリンは嗅覚よりも聴覚が発達している。
ほとんど薄暗い洞窟に暮らしているため、目も良いみたいなので〈ダークコート〉で更に身を隠す。
ここから、誘拐された人達が囚われているであろう牢屋が見える。その前にはゴブリンや二体のオーガが居るが、ぎりぎり見える。
僕は〈夜目〉を発動させ確認させる。
「……居た」
「アルメは……! アルメは無事なんですか!?」
リーグさんから聞いたアルメさんの特徴に合う人を発見した。赤い髪の毛で、若干垂れている目の女性。
かなり衰弱しており、恐怖で震えているようだ。正直無事と聞かれると……無事ではないのかもしれない。
「大丈夫です。アルメさんは生きています。けど、このままだと危険かもしれません」
「そんな……!」
それに他の人達もかなり危ない状態だ。
ん? よく見たら、先に潜入した冒険者達が倒れている。……どうやら、魔法使いの人はもう……。
大男と弓使いの女性は無事なようだけど出血がやばい。
「だから、迅速に解決します」
念のため〈ゴールドサークル〉を発動させる。
「あの、ライカさん? まさかあの数を一人で?」
もちろん、と頷き〈シャドウゲート〉で一気に生きている冒険者達のところへ移動。ゴブリン達に気づかれないように、そのままミィヤ達のところへ戻る。
「ミィヤ。この人達の回復を」
「わかりました」
「す、凄い。あんなにあっさりと……ここまで来る時もそうだったけど、ライカさんって力持ちなんですね」
まあ、大自分の二倍もある人も居るし。驚きもするよね。こんな幼女が、大人二人を普通に担いで、敵に気づかれず戻ってくるなんて。
普通じゃないってわかっているから、敬語なのかな? ずっと気になっていたけど。
「じゃあ、次は」
二人の回復をミィヤに任せて、僕は再び動き出す。闇に溶け込みながら〈ライトニングステップ〉を発動させる。
「はっ?」
「よし。まずはゴブリン達を殲滅」
僕のことをずっと見ていたリーグさんは目の前で起こったことを理解できず唖然としていた。いや、リーグさんだけじゃない。突如として、目の前に現れた謎の幼女を見て、囚われた女性達も唖然としている。
「あ」
一番前に居た栗色の髪の毛の女性が話しかけようとするが、僕は静かにするように人差し指を立てる。
ちらっと背後を確認する。
二体のオーガ達は、突然ゴブリン達がやられたことで、何事かと困惑しているようだ。まだスキルの効果が続いているため、僕には気づいていないようだ。……そういえば、奇妙な生命反応はずっと動かないままだな。位置的にここに居るみたいだけど。
「……今、助けます」
まあ、動かないのならそれでいい。今は、目の前の脅威を倒すのみだ。
「〈エンチャントフレア〉」
ナイフに炎を纏わせ、すっと近づく。
「さようなら」
一閃。
二体まとめて首を跳ね、消滅させる。
本来なら、オーガ二体とこんな狭いところで戦闘するのはかなり困難だ。それこそ、さっき助けた冒険者達のようになることだってある。そんなオーガを気づかれることもなくあっさりと倒せるなんて……。
「さて、残るは」
今もずっと、動かない謎の生命反応。……いや、さすがに動いたか。けど一体どこに?
周囲を見渡すが、それらしき姿はない。
地上に居ないってことは。
「上!」
生命反応は、僕の頭上まで来ていた。視線を上に向けると、タイミングよく何かが僕に襲いかかろうとしていた。
焦ることなく炎をエンチャントしたままのナイフを振りかざす。
「避けられた? 空中で?」
天井に張り付いていたのも、空中で回避するのもゴブリンができるようなことじゃない。それに〈夜目〉を発動しているはずなのに、相手の姿がはっきり見えなかった……何かしらのスキルを使っているのは間違いない。
おそらく〈サイレント〉や〈ダークコート〉と言ったものを使っている。これは厄介だ……この二つは自分が使っているから恐ろしさはよく理解しているつもりだ。
「よし」
隠れるのがかなり得意のようだけど、狭い空間だったことが幸いした。
「どうも」
大体の場所がわかった僕は、天井で僕を狙っていた何者かへと〈シャドウゲート〉で近づき、ナイフを振りかざす。
そのまま悲鳴をあげることなく地面へと落ちていったそいつを確認すると。
「ぐげ、ぐげげ……」
見たこともない魔物だった。蝙蝠のようだけど、人に近い。けど、なんだか獣っぽい。
そんな生物が今にも消滅しそうな状態で、口を開く。
「い、やはや……《フェロモンゴブリン》の様子を伺っていただけでしたが……これ、はいい土産話ができそう、ですね」
「どういうこと?」
「それは、後にわかる、こと……ぐげげ……では、最後に置き土産……」
と言ったのを最後にそいつは消滅してしまった。
本当になんだったんだ? そう思っていると。
「うわわわっ!?」
なにが崩れる音が鳴り響いたと思えば、ミィヤの悲鳴も聞こえた。
「これは……どういうこと」
ミィヤ達のところに移動すると、僕達が来た道が天井が崩れて塞がっていたのだ。




