69 俺の正義
「焼く前にお花を一緒に添えてあげたいのですが……」
マコトが言い出し俺も一緒に探した。
季節柄なのか場所柄なのか花は中々見つからない。
漸く見つけたのは白い雑草の花。
マコトはそれを必死に摘んでいた。
俺も真似をしてその花を摘む。
大量に摘んだ花を集めてリリィの周りに散りばめた。
花を摘むなんて昔、幼かった妹に付き合った時以来だ。
俺は決していい兄では無かった。
あの時だって嫌々付き合っていたように思う。
もっと優しくしてやれば良かったんだ。
いつだって後悔は絶えない。
村の惨状を目の当たりにしてから俺は花どころか周りをみる余裕すら失っていた。
それだけ必死になっても魔王には勝てない。
「これで少しは華やかに見えるでしょうか?」
呟いたマコトに俺は小さく頷いた。
そうだな、華やかに見えるよ。
俺が頷くとマコトは満足したのか近くの家の中に入って鋏を持ってきた。
鋏なんて何につかうんだ?
疑問に思って黙って見ているとマコトはリリィの長い髪をバッサリと切っていた。
「これ位は届けてあげようかと思いまして…」
そうか…マコトはリリィを森へ返してやるつもりらしい。
コレで終わりにしようとしていた俺とは違って本当に優しい奴なんだと。
「私には特にしないといけない事も無いですし、ね。」
しないといけない事。
そんな事は俺だって何も無い。
ただ俺がしたい事があるだけだ。
火を付け燃やす。
潤んだ目で煙を見上げるマコトは何を思ってるんだろうか。
俺には解らない。
嫌な思い出ばかりが蘇る。
破壊されつくした城。
何も残らなかった俺の村。
救えなかった潰された町。
全てが全て俺の所為の気がして。
煙を眺めながら俺達はただ黙ってリリィを見送った。
マコトはまた近くの家から小瓶を持ってくるとリリィの燃えカスを瓶に摘めコルクで栓をする。
ソレも髪と一緒に持って行ってやるんだろ?
「リューさん、リリィさんの森の場所ってご存知ですか?」
マコトの言葉に俺は驚きを隠せなかった。
場所も知らないのに行こうってのか?
大体リリィの森ってのは凄い有名なんだぜ、俺知らない奴なんて初めて聞いた。
良くも悪くもあいつは有名人だしどちらにも付かない中立の精霊だってそうだ。
「マコトは知らないのか?」
恐る恐る訊ねると大きく頷くマコト。
「ええ、宜しければ地図かなにか描いて頂ければありがたいんですが……」
ここからの道中は結構距離があるし危ない。
それにマコトは隣国の言葉しか喋れないから揉め事に巻き込まれる可能性もある。
放っておけばいいのかもしれない。
魔王を倒し復讐することこそ俺の全てだ。
だけど……
ここで放っておいてもしマコトが死んだら俺はきっとまた後悔する。
もうこれ以上後悔する事を増やしたくは無かった。
ならもう腹を括るしかない。
ため息を一つ吐き出して、俺は決断した。
何年もかかる道のりじゃない。
少し位遠回りした所で問題ないだろう。
「俺も行くよ」
マコトはキョトンとした顔になる。
余程俺の返事は意外だったんだろうか?
いいさ、こうなったら付き合うよ。
平和を唱えて……亡くなった奴の最後を送る位までは。
俺の知る限りリリィは最初から最後まで希望を捨てていなかった。
その意思を俺が継ぐ事は出来ない。
「ありがとうございます」
そう笑ったマコトに俺は頭を掻く。
別に礼を言われるような事は何もしてない。
ついでに使い切ってしまったアルウィストロの実の補充や他の道具も揃えて置いた方が良いし。
丁度良いんだ。
「ここから森までどれ位かかりますか?」
マコトの言葉に少し考える。
俺の足なら1ヶ月かからないだろうが…マコトを連れてとなるともう少し余裕を見た方がいいかもしれない。
倍はかからないかもしれないがここの所魔物の動きが活性化している。
道中何も無いとは限らない。
「そうですかだったら少し準備が必要ですね」
頷く。
準備は間違いなく必要だ。
道中の村で補給するにしてもここから少しばかり距離がある。
この村の物で使えそうな物があれば貰っていっても問題ないだろう。
どうせここは捨てられた村だしな。




