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初恋  作者: 月光
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3/3

白い紫陽花の花言葉

社会人になって七年が過ぎた。


六月。


久しぶりに母校の近くへ来ていた。


懐かしい坂道。


紫陽花は昔と変わらず咲いている。


その時だった。


ぽつり。


雨が落ちる。


そして数秒後には土砂降りになった。


私は思わず笑った。


「また?」


高校生の頃を思い出す。


幸い今日は折り畳み傘を持っていた。


その時。


坂の途中で立ち止まる男性が目に入った。


スーツ姿。


空を見上げながら困ったように立っている。


傘がないらしい。


私は近づいた。


そして声をかける。


「あの、もし良かったら折り畳み傘使ってください」


男性が振り返る。


私は息を止めた。


相手も同じ顔をした。


「……え?」


「……蒼汰?」


七年ぶりだった。


時間が止まったみたいだった。


蒼汰は驚いたまま笑う。


「まさかこんなところで会うなんて」


「本当に」


近くのカフェに入り、自然と昔話になった。


高校時代の話。


部活の話。


留学の話。


そして。


あの日の雨の話。


「実はさ」


蒼汰が少し照れたように言った。


「あの日、傘を貸した時から好きだった」


私は思わず固まった。


「え?」


「ずっと片想いだと思ってた」


私は思わず笑ってしまう。


「私も」


今度は蒼汰が固まる番だった。


「嘘」


「本当」


廊下で目が合った理由。


運動場で見ていた理由。


卒業式で言えなかった言葉。


全部繋がった。


片想いだと思っていた恋は。


最初から両想いだった。


気づくのが少し遅かっただけ。


カフェを出る頃には雨は小降りになっていた。


二人で紫陽花の坂道を歩く。


七年前と同じ場所。


蒼汰がふと立ち止まる。


「そういえば、あの時も同じような時期だったね」


私は笑う。


「紫陽花が咲いていて、雨が降ってたね」


蒼汰は坂の脇に咲く白い紫陽花を見つめた。


「白い紫陽花の花言葉知ってる?」


「知らない」


蒼汰は少し照れたように笑った。


そして静かに言った。


「一途な愛情、っていうんだって」


雨上がりの風が吹く。


白い紫陽花が、そっと揺れた。

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