第26話
マガツ国の首都。そこは想像しておったものとは少し違った。洋館が立ち並ぶ――これは想像通り――に加え、天幕群が立っておったのだ。
少し遠いけど、とても大きな天幕がいくつか。これらは一カ所に固まっておるようだった。
更には、それより小さいとはいえ、それでも相応に大きな天幕が、ところどころに散らばってあった。
案内の隊長に聞いたところでは、
マガツ国の王族は先祖伝来の遊牧生活を未だ続けておるとのこと。それゆえ、厳密に言えば、ここは冬の首都に過ぎぬこと。そして、とても大きな天幕は王及び王族のもの、それ以外は随行する家臣団のものとのことであった。
私たちは、皇子の客ということで、天幕の方を滞在先として勧められたのだが、洋館に代えてもらった。
公爵家に来て、少しとはいえ洋館に慣れておったし――厳密に言えば父上のは、立派な2つの塔付きの大きな城館だけど――更に『黒林』に至るまでの小天幕宿泊で、もう天幕はこりごりとなっておったのだ。
狭いし、寒いしと。
その洋館の2階――といっても、ここが最上階――その一室にてのこと。私は、皇子に会う前に、ゴリねえに手伝ってもらって、ドレスに着替えることにした。
ところで、私はここに至るまで、近衛隊の服をまとっており、更にはヒゲを付けて顔の半ばを覆っておった。服はお二人に合わせたものだった。
この二人、少なからず目立ち、
――1方は少女にも見紛う可憐なる美少年振りで
――1方は、なかなかおらぬガタイの立派さで、
――更には、顔も知られておる。
ならば、お二人はいっそのこと、正体を隠さず、あえて近衛隊の制服に身をまとい、正規の任務に赴くとしよう――その方が、行き交う者に妙な疑心をかき立てずに済むのでは――との結論に達したのだった。
よって、旅の口実も、『公爵側近のお二人が辺境の巡視をなすことを命じられて』となった。ゆえに、お二人の私への賜りも公にされておらぬ。
そしてヒゲの方であるが――私自身がその付けた顔を鏡で見る限りは、想わず笑い出したくなるものであったが――遠目からならば十分に見る者をごまかせた。
そして、なにかを不審に想ってか、近付こうとする者がおっても、お二人――特にゴリねえが間に入っては、あえてそれを成し遂げようとする者はおらなかった。
私は『男装の麗人』なのだよ、と悦に入っておった。何せ、エリザベトの美貌ならば、その字句通りに他ならなかったから。




