幕間 鴉は白色
俺が所属するギルドは、『黎明の鴉』という名前だ。
今更、それがなんだという話なのだが、このギルドの創設メンバーは、俺を含めてこことは違う大陸出身である。で、何が起きたかというと。
「鴉って、白色の鳥だよね」
「え?」
俺たちのアイデンティティが脅かされた。
「え」
「え……?」
エミリアが首を右に傾ける。向き合う俺は左に傾いた。エミリアが首を左に傾ける。俺は動かなかった。
「なにやってるのよ、あんたら」
突然、隣に出現する魔法使い。
うちの食堂で飯を食ってるところだったから、こいつが出現するのもさほど驚きではない。よそのギルドで普通に飯を食っててもいいのか、という疑問は今さらだった。そんくらい人気だからな、うちの食堂部門。
「いいところに来た。鴉って、何色?」
「白色に決まってるじゃない」
「え」
衝撃の事実が確定してしまった。どうやら、この大陸の鴉は白色らしい。
エミリア一人なら、無意味に嘘をついてる可能性もないではなかったが、魔法使いが無意味に嘘をつく意味がない。
「鴉って白い、のか」
「それは、そういう『人の認識は曖昧』とかいう問いかけかしら?」
「普通に、鴉が何色の鳥かって話」
「そりゃ、白に決まってるよカイニス」
まじで、当たり前のことだったらしい。
俺は、鴉の色説明する。魔法使いとエミリアは、それで納得したらしい。
「逆に聞くけど、今まで路地とかでゴミ漁りしてる鴉は何だと思ってたの?」
「なんらかの鳥だなって」
「常識すぎで、疑問にすら思えなかったのね……」
鴉は黒いのが、俺にとっては当たり前だった。
ただ、ここで一つ気になることが。
「うちのギルドの紋章、めっちゃ黒色の鴉をモチーフにしてるんだが」
「「なんでもかんでも黒に染めたい時期に決めたのかって思ってた」」
「ええ……」
いや、確かにうちのギルドの名前とかもろもろ決めた時は、確かに俺たちは若かった。若かったが、そんななんでも黒色にしたいとか、そんな願望はなかった。
「何の話だ」
通りがかりのリーダーが話に混ざりに来た。魔法使いの姿が見えたから仕事を切り上げたんだろう。あと、普通に日替わり定食のお盆を持っているから、飯も食おうという魂胆だったのだろう。
当然のごとく、魔法使いのすぐ隣に腰掛けやがる。
「鴉って何色だ?」
「そりゃ、黒色だが」
「「なんでも黒色に染めたい歳頃なんですね、だいぶいい歳して」」
「は?」
なんでこいつらは、こんなときまで息ぴったりなのか。リーダーは、とりあえずなんかからかわれている、ということだけは理解できたらしく、すぐ隣の魔法使いの鼻をつまみはじめる。
「いい歳って、お前の方が歳上だろうに」
え?
「うっさい!あとそこ、いくつだこいつって顔すんな。というか、エミリアまでなんでその顔するのよ」
「え、だって君って、歳下には興味ないって」
なんか、鴉が白色とかどうでもよくなってきたかもしれない。
結局、うちのギルドは、黒色が好きな集団ということで、女どものなかで決着がついた。
なんでだよ。




