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デビル・ミュータント  作者: 竹林十五朗
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    友じゃねぇ⑧

 エルフ以上の魔力を保有する人間。別段、奇妙奇天烈(きてれつ)な話でもない。無論、その辺によく()る訳でもないが。

「ツカサの中におられるアモン様のモノと勘違いしているのでは?」

 訊いたのはスコット。しかし、クリントはまたしても否定した。

「いや、オレも最初はそう思ったが、違った。明らかにあの兄妹から発される魔力だった」

 上級悪魔である此奴(こやつ)が、真剣に悩む程なのか。

「そんなに多かったの?」

「っていうよか“測れない”っつー感じだな」

「底知れないってこと?」

「そうとも言うな」

 クリントは此処(ここ)で一息入れ、ゼリーを一口。そのままデザートを食べ尽くし、話を再開した。

「アモン様の魔力は、この距離だと充分に感じ取れるし、質も量もある程度把握できる。でも二人の魔力は、質は分かっても量がまったく計測できなかった」

 我とて最上級悪魔の端くれ。有する魔力は豊富である。少なくとも、普遍的なエルフや上級悪魔が及びも付かぬ位には。

「それより多いって、一体どんぐらい有るんだ?」

 士は尋ねる。対するクリントの返答は、我々の予想を上回った。

「そうだな……オレの印象だと魔王様に匹敵するな」

「(「――!! 魔王?!」」)

 悪魔である我ともう二人は驚いたが、士は事の重大さを理解しておらずキョトンとしておる。

「まー、あくまでもオレの第一印象だからな? ホントにそうかは分かんねぇぞ」

「魔王並の魔力……ってやっぱスゴイの?」

 人間としての知識と、微々たる悪魔関連の情報しか持ち合わせておらぬ士。それでも尚、魔王と同等の魔力は桁外れであると容易に想像が付く。

「当然だ。オレたち悪魔の頂点におわす方々だからな」

「ああ、だからビックリしてんだ。人間がそれほどの魔力を宿してることが」

「ってなったら魔術師としか考えらんないよねぇ~」

「ああ、ただの人間が魔力を持つハズがないし、それほどの量を内包しているのであれば、在朝(ざいちょう)在野(ざいや)を問わずに魔術師たちが放ってはおかないだろう」

 士が明かすまでもなく、推測で二人の正体を看破された。

「でもまぁ、だからって二人をどうこうするワケじゃない」

「そーそー、ボクらには関係ないし、向こうもそんな気はないだろうし、普通に接してれば良いんだよ。人間の友人として」

 ケーキを食しながら、士は彼等の会話を黙々と聞いておる。その脳裏に、ある可能性が()ぎった。

「光たちがお前らの正体に気づいてるってことはないよな?」

 三人は一瞬ビクッとしたものの、直様(すぐさま)スコットがその主張を否定する様に、首を横に振った。

「それは、多分ないだろう。コチラも見破られないために、それなりに対策はしている」

 そもそも外見だけでは判別できぬ。不思議な能力も、精々がミュータントもしくは超能力者なのかと疑われるだけであろう。

「それに、オレたちが悪魔だって分かったのなら、なんらかのアクションは起こすハズ。当人たちに限った話じゃなく、その親族や関係者がな」

 古今東西、悪魔や妖怪等の異形は嫌悪・討伐の対象。そう簡単にやられはせぬが、最近は人間も力を付けてきた。油断・慢心は(おの)が死を招く。また、それだけではない。我々の持つ魔術や技術を得ようと、色々と画策する者も()ろう。その第一歩として、正体が白日の下に晒されるのは絶対に避けるべきである。

「そろそろお開きにするか」

 諸々の対話を続けた士達。空になった皆の容器を見て、スコットは解散を告げた。しかし、士はまだ物足りぬ様だ。

「いや、俺もう一品食ってから帰るわ」

 あれだけ飲み食いしても、まだ腹は満たされぬという。

「そうか。じゃあオレたちは先に帰らせてもらうぞ」

 そう言ってポケットから財布を取り出し、紙幣を一枚引き抜くスコット。彼はそれをテーブルの上に置き、他の二人を伴って立ち去った。

「じゃーまた明日ねー」

「オレら先に帰る意味あんのか?」

 手を振るバッキーも、ブツブツ言っておるクリントも、店外へ出て行った。

(これって……釣りはもらってイイのかな?)

 卓上の紙幣を横目で見て、士は迷った。

(良いのでは? 彼奴(あやつ)()も若いとはいえ貴族であるから、後で返金を要求する程、狭量な者達ではなかろう)

(そうなのか? じゃあ、ありがたく貰っとくか)

 我の言葉を鵜呑みにし、士は食事を再開した。

 五分位でアイスを全て平らげ、支払いを済ませようと席を立つ。ところが、レジ前への行き掛けに、先程渡された紙幣を確認するとある事に気が付いた。

「あっ!? これ二千円札じゃねぇか!」

 てっきり、福沢諭吉の描かれた一万円札であると思い込んでおった紙幣。だがそれは、その五分の一の価値しかない、首里城の守礼門が描画された二千円札であった。

 彼等はまだ、人間界に来て日が浅い。日本の社会や文化等に触れるのも同様。慣れるのには時間が要る。まあ、この国の先達(せんだつ)として大目に見てやるのだな。

「クソ……」

 士は泣く泣く自腹を切る羽目になった。二千円札を財布に収め、自前の一万円札で支払った。総額が五千円を超えておったものでな。大半は本人の腹の中だが。

「ありがとうございました~!」

 店員の見送りの声を背に、『明日会った時に請求しようか』とも考えた。しかし、尻の穴が小さい男とも思われとうはない。なので、今回は日本に生きる者の先輩として奢ってやろう。士はそう自身に言い聞かせ、慰めた。

(さっさと帰って寝よ)

 想定外に寂しくなった財布。凹み、トボトボと自宅に足を向ける。レストランからマンションまでは離れておらぬ為、十分程で帰宅した。階段を登り、自室が在る階に到着。すると、先程別れた筈の三人が、隣の部屋に入って行くのが見えた。

(ゲッ!? お隣さんかよ……?!)

 思い返せば今朝、出入り口で待ち伏せておったのは、それが理由であったか。此方(こちら)には三月に引っ越して来たが、当時はまだ空き部屋。それが知らぬ間に、四月に入る頃には埋まっておった。また、何の挨拶もなかった故、全く気が付かんかったのだ。

 監視相手と顔を合わせとうないのは分かる。しかし、『隣に引っ越して来ました。宜しくお願いします』と言いながら、菓子折りを渡すのは常識であろうが。それが美女ならば尚良し! ……ではなくて、仮面を着けて接触するのであるから、面が割れても問題ないのではなかろうか。

「お?」

 予想だにせぬ衝撃に立ち尽くす士。暫時(ざんじ)そうしておると、それに三人が勘付いた。

「なんだ、もう帰って来たのか」

「ふむ、では改めて……」

 彼等は声を揃えてこう言った。

「「「これからよろしくな」」」

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