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デビル・ミュータント  作者: 竹林十五朗
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    友じゃねぇ③

 そんなこんなで午前の授業が(とどこお)りなく終わり、今は昼休み。食堂にて昼食に有り付く次第である。本日のメニューはカツ丼大盛り。

「士クン、大丈夫?」

「どうした? 顔色ワリィぞ」

 六人掛けの長方形テーブル。其処(そこ)で、士と向かい合わせになって弁当を広げておるのは、光兄妹である。久々に再会した幼馴染三人で、食卓を囲んでおるのだ。

「あー、ダイジョブだいじょぶ」

 その通り、肉体面は問題ない。眠気はもう覚めた。精神も充分に休められた。数少ない不安材料は、来週からの中間試験位のものである。という事を、昨夜のイベントを伏せて彼女等に伝えた。すると、意外な返しが。

「う~ん、テスト勉強ぐらいなら私が見てあげられるけど……」

「マジで!? た、頼んでもイイか?!」

 願ってもおらん美輝からの申し出に、士は飛び付いた。あー、健児も()る為、これから我だけ美輝と呼ぶ事にする。貴様も早く昔の様に呼んでやれ。

「うん、良いよ」

(よっしゃぁ~っ!!)

 勉強の教授を快諾してくれた美輝に、有頂天の士。実に分かり易い構図である。彼女からの発案である事も、士にとっては喜ばしい。

「なぁ、美輝、俺の勉強もみてくねぇか?」

 健児は追い詰められた様な声色で、妹に教えを請うた。この兄貴、大丈夫か?

「お兄ちゃん、一コ上の授業内容なんて分かるワケないじゃない。それこそ、彩香(さやか)さんに教わったらどう?」

「(さやかさん?」)

 初めて聞く名前である。いや、女性らしき名前から推察するに、もしや……?

「あー、彩香は俺の彼女だ。そうだな、そうすっか」

 頭上に疑問符を浮かばせておる士に、健児は弁明した。やはりそうか。というか、普通は真っ先にその思考に至らんかね。

「あぁ、脳内彼女じゃなかったんだ」

「なんだ? 負け惜しみか? もしかして悔しいのか? 俺が先に彼女つくったのが悔しいんだろ?」

「年上の人にそんなイキり方されてもな……」

 大人気(おとなげ)なさ過ぎる台詞(せりふ)を吐く健児を、士は冷めた目で見てしまう。何時(いつ)もであれば、激しく動揺する筈であるのに。

「もうお兄ちゃん! 士クン、気にしなくてイイからね?」

 兄のその態度を注意し、美輝は優しく言った。出来ればもう一声頂きたい。『じゃ、じゃあ私が彼女になってあげる』と! 勿論、羞恥心に頬を紅く染めながら! ……無論、残念無念、言ってはくれんかったが。

「すみません、相席、良いですか?」

 美輝との勉強会に思いを馳せる士に、声を掛ける者が()った。

「ゲェッ!?」

 お察しの通り、あの三人組である。代表して金髪が訊いたのだ。

「おう、良いぜ」

「あ、はい。どうぞ」

 健児は許可を出し、美輝は兄の方に寄って席を譲った。仕様がなく、士も端っこへ移動する。

「ありがとうございます」

「いやぁ、悪いね」

「オジャマしまーす」

 三人は次々に着席。偽装茶髪は美輝の隣に、金と銀は士側に座った。

「オイ、他にも席あいてんだろうがっ」

 コソコソした音量で、士は隣席する金髪に問う。

「まぁそう水臭いこと言うな」

「そうそう、ボクらとキミの仲じゃないか」

「死闘を演じた仲じゃねーかっ!」

 一見、良好な関係を築いておるかの様に内緒話をする三人。対して、偽茶髪は大人しい。

「お、なんだ、士? 友達できたのか?」

「うちのクラス、じゃないよね? お隣さん?」

 光兄妹は、士に新しい友ができて嬉しい様だ。

「初めまして、ワタシはスコット・サイクスと申します」

「ボク、バッキー・ナンブ」

「く、クリント・アイシス、だ」

 此処(ここ)にきて、三人はやっとこさ自身の名を告げた。散々っぱら勿体(もったい)付けた割には、やけにアッサリだな。士が受けた印象は、クールで凛とした男前・あどけなさが残る無邪気な美少年・ハンサムな軽薄野郎、である。

「ほぅ。あ、俺、光 健児。で、こっちは妹の美輝」

「光 美輝です」

 兄妹は頭を下げ、自身の名前で返した。

「今後ともよろしくお願いします。先輩、光さん」

 紳士な金髪、もといスコットは、再度お辞儀をした。

「ん? クリントどうしたの?」

 バッキーと名乗った銀髪は、対面(といめん)に座る偽茶髪ことクリントの顔を覗き込んだ。彼らしくないのだ。彼の素性を鑑みれば、即行で美輝を口説きに掛かっても不思議ではない。しかし、彼はその素振りすら見せんかった。

「い、いや、なんでもない」

 クリントとそう言うと、豚骨ラーメンを(すす)った。箸を運ぶ姿がぎこちない。

「そういえばいつのまに仲良くなったの? クラスも違うし……」

 共通項が見当たらぬ四人の()()りを見て、美輝の中に潜む疑義が頭を(もた)げた。

「面倒なヤツらに絡まれていたところを助けてもらったのだ」

 スコットは質問に答えると、豚の生姜焼きを口に運ぶ。先程とは打って変わり、箸を使の方が様になっておる。

(絡んできたのはお前らっ!)

 その叫びは我以外に聞こえる筈もなかった。

「そうそう、なんだっけアレ? キャッチ?」

「あ、ああ、ウゼェ客引きだったな」

「今時あんなのあるんだねぇ~」

 バッキーとクリントが粗雑に(こしら)えた架空の話をする。前者はカツカレーを頬張り、後者の様子に少し違和感が見受けられた。

「ふ~ん、外人さんだから不慣れなのかな?」

「まぁ、東京は日本でも一等メンドくせぇトコだからな。魔都だよ、魔都」

 二人は如何(どう)やら、此奴(こやつ)()が悪魔である事に気が付いておらん様子。魔術師ならば敏感に反応すると思ったが、杞憂であったか。

 それからは食事を中心に、当たり障りのない話をした。十分程すると、昼休み終了の合図が鳴りそうであった為、お開きに。次の授業が移動教室の健児とは、その場で別れた。

 寸前までは同じ道を往く為、士と美輝は三人組と一緒に歩く。目的地が近付き、金髪が士だけにこう言い残して隣の教室に入って行った。

「では、また後で」

 という事で放課後、学外で会う事になった。都合の良い機会を設けて貰ったと考えるべきか。

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