友じゃねぇ④
我等は今、近所のファミリーレストランに来ておる。学生のお財布に優しい、手頃な価格で料理を提供してくれる所だ。ホームルームも含めて本日の授業が全て終了した途端、三人組に此方へ引っ張って連れてこられた次第である。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
丁度、店員のお姉ちゃんがオーダーを取りに来たところである。すかさずスコットが『ドリンクバー四つ』と頼んだ。
「ご馳走するから好きなだけ頼め」
彼は繋げてそう言った。何と、食べ放題とな。
「まぁ、この店は安いからな」
「ゼンブ注文しても一万円いくかいかないか、ってトコじゃない?」
折角の歓喜を、他二人が台無しにしおった。
「そう言われるとありがたみが薄れるな」
しかし、奢って貰える事に変わりはない。それに此奴等は貴族。金には困っておらん。
「これで完全に水に流そう」
成程、親睦会といったところか。これからの学生生活に向けて、昨日の事はリセットしておいた方が無難。更に、言葉だけでは実感に欠ける事も一つの要因である。
「まぁそういうことなら遠慮なく。えーっとすみません、ハンバーグステーキとカツレツとリブステーキと、ミラノ風ドリアとマルゲリータとカルボナーラ……」
立て続けにメニューを読み上げていく士。此処で夕食を済ませる算段の様だ。もう何品かとライスが付いたスープセットを頼み、最後にチョコレートケーキで締めた。
スコットは煮込みハンバーグとミートスパゲティとスープセットを、クリントはアラビアータとシーフードグラタンとガーリックトーストの付いたサラダセットを、バッキーはターメリックライスと若鳥のグリルとミネストローネ付きのベジタブルセットをそれぞれ注文した。デザートはコーヒーゼリーで統一。
寸刻して、テーブルに並び切らん程の料理が運ばれた。四人は食事を開始する
「そういえば、ちゃんとしたフルネームは言っていなかったな。オレはロップスコット・サイクス・マーズ・カイムだ」
「ボクはバロックキー・ナンブ・バーキャンズ・グラシャ=ラボラス」
「オレぁ、クリントホーン・アイシス・フランクバート・レラジェって名前だ」
ナイフとフォークとスプーンを一旦置いた三人は、気を取り直して正式に名乗った。学校では、先刻の偽名を用いておるそうだ。
《カイム》とは、魔界七十二柱の序列五十三番に格付けされる子爵家である。
先祖代々、“剣”を拠り所とする家だ。身体機能は全てがバランス良く高く、非常に戦闘向き。その中でも腕力に優れる。まともな武器を手にし、後述の能力と掛け合わせれば、我等の鋼の肉体も断ち斬るであろう。魔術で肉体を強化すれば、可能性は更に跳ね上がる。また我と同じく、肺とは別に気嚢も持っておる。
能力は、手にした武器の性能及び耐久性の強化。強化魔術とは別モノで、刀剣か否かは問わぬ。本人が『これは武器である』と認識できさえすれば良い。ただし、弓や銃等の飛び道具を握る事は滅多にない。プライドというか、アイデンティティに関わるからだ。また、女性のみに顕れる特性として、鳥類の言葉を解するというモノがある。昨日見た、両眼からのビームについては不明。突然変異か?
また、前述の二つを併用しただけで、悪魔化した際に腕を切断された事実の説明が付かん。武器は安物らしく、肉体強化の魔術も使用の兆候は見られんかった。予め施したおったのか?
上級悪魔らしく鳥類、鶫の翼を持ち、全力を出す時はそれを模した鳥人の如き姿を取る。
《レラジェ》とは、魔界七十二柱の序列十四番に格付けされる侯爵家である。
先祖は狩人であり、弓矢を扱わせれば悪魔の中でも一、二を争う程の名手。竜をも撃ち落とすという。獲物を発見する為の視力や聴力に優れ、それ等を逃がさずに追走する為の機動力や持久力も高い。我やカイムと同様、気嚢も所持しておる。
女誑しの家系としても有名。ただ惚れたら一途……らしい。沢山の側室やら愛人やらを囲っておる癖に、どの口が言うのか。これ程までに、信用に値せん評価もないな。いや、その全てに平等な愛情を注げる事は、ある意味で尊敬できるが。また代々緑色を好み、頭髪も緑である。
能力は、矢に特殊な効果を付与する、もしくは特殊な矢その物を生成。炎上・氷結・電撃・爆発・追尾等、様々な種類がある。他にも溶解や拘束、回復や逆に傷が治り難くなる物もあるそうだ。汎用性は高い。此度は後半に挙げた物を使用せなんだが、今後敵対する様な事があれば、士にとって脅威と成り得よう。
ハンターに相応しく翼は鷹で、真の姿も鷹を模した鳥人を彷彿とさせる。
《グラシャ=ラボラス》とは、魔界七十二柱の序列二十五番に格付けされる伯爵家である。
最大筋力や持久力はそれ程でもなく、直接的な戦闘力は上級悪魔でも低い部類に入る。といっても人間や中級悪魔よりは上。その反面、神経系の発達具合は悪魔随一である。故に神経発達による筋肉の動員数や瞬発力、運動神経や反射神経等はトップクラス。銃弾程度ならば回避は容易な程だ。
この家系は皆、滑舌が良くない。それ故、無口かつ人見知りになりがちである。この少年は、唯一の例外といったところか。
能力は、己の肉体や任意の物体の透明化。時間制限あり。実際に消えるだけでなく、気配を消す事も可能。極めれば、顔を合わせたくない相手と会わなくなる効果も付随する。如何いう原理だ?
翼はグリフォン、即ち鷲。真の姿は、その翼を持つ犬を模った獣人。




