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デビル・ミュータント  作者: 竹林十五朗
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第12話:友じゃねぇ

 物凄い今更ではあるが、《魔界》と《悪魔》、《七十二柱》について解説しよう。幾つか重複して語るところもあると思う。だが、心して聴け。

 《魔界》とは、地球とは異なる次元に存在する、もう一つの世界の事である。主に悪魔や魔物、アンデッド等の地球には存在せんと信じられておるモノが数多(あまた)住んで、或いは棲んでおる。それと対比して、地球を指して《人間界》と呼ぶ者も居(お)る。其処(そこ)に生きる主たる種族が人間であるからだ。

 地球=人間界との行き来は、基本的に不可能。そもそも二つの世界の次元が異なる故、往くのも帰るのも難しい。ただ、完全に断交しておる訳ではなく、正規の手続きを踏めば一応可能である。我もそうして此方(こちら)にやって来たのだ。

 広さは地球とほぼ同じ。ただ、地球の陸地と海の割合は、三:七であるのに対し、魔界は七:三と逆になっており、陸地の方が広い。

 この広い土地には何人もの王、何十人もの貴族によって複数の国や地域に分かれて治められておる。封建的・前時代的な体制ではあるが、上手く統治はされておる。人間では恐らくこうはいかんであろうがな。

 一般的には魔術、もしくはそれを利用した道具がよく使われておるが、人間が創り出した多種多様な科学の賜物も幅広く利用されておる。魔力が不要な上、便利であるからな。ただ電気を供給する施設が少ないのが玉に瑕(きず)か。

 昨日も釈義したが、念の為に。王とは別に十人の魔王が居(お)るが、彼(か)の方々は日本でいう天皇の様な存在だ。魔界全土の象徴であり、政治的な権限は一切持っておらん。異なるのは、個人レベルでの最高戦力であるという事だ。幸い、その力を必要とする状況には久しく遭っておらぬ。

 以上が魔界に関する基本事項である。その他の諸々については、その都度講説してやる。


 《悪魔》とは、魔界に住む知的生命体であり、地球におけるヒトに相当する存在である。

 下から順に“下級”“中級”“上級”に分かれており、外見上は人間と区別が付かぬ。ただ上級悪魔の大半は、それとは別の姿を持つ。“家”によって風貌は異なり、解放すると各能力は跳ね上がる。詳しくは後記にて。

 “級”は身分や階級による差だけではなく、根本的な種族の違いによる意義も含まれておる。大抵この順に身体機能が高く・魔力が多く・より長生きし、そして繁殖力が弱い。寿命は下級が約百年、中級が約千年、上級が約一万年となっておる。ただ最近は混血も増えておるし、この法則に当て嵌まらん場合も多いがな。

 骨格や筋繊維、靭帯等の強度や神経の伝達速度等といった肉体の構造が人間とは異なる。その為、筋力や敏捷さ、視力や聴力を始めとした各身体機能は人間よりも優れておる。身体の強靭さや自然治癒力も相当なものだ。また、暗闇を見通す眼を備え、精神力も強い。更に、下級や中級はコウモリの様な翼を用いて飛行し、上級になれば鳥類の翼を持つ家もある。

 身体機能の例を挙げるならば、下級は精鋭部隊の軍人やオリンピックレベルのアスリート位、中級は人類の限界ギリギリいったところである。唯の人間が対抗するには、かなり厳しい。一方の上級は皆が皆、文字通りの意味で“超”人と表せる。ただし、“家”によって差が激しい。銃弾を回避あるいは得物で弾き飛ばす者、重戦車を持ち上げる者、戦車砲弾の直撃に耐える者、遥か遠くのモノに狙いを付けられる者、超音波を聞き分ける者、他にも沢山。まあ、その辺は追々。

 知能には差がない。寧(むし)ろ、“級”を超えられる可能性のある数少ない要素である為、皆勉学に励む。よって下級の方が賢い事もしばしば。我の部下にも優秀な下級・中級悪魔達が何百人と居(お)ったわ。

 聖水や日光には弱い。前者は、悪魔であれば例外なくダメージを受ける。後者は、下級や中級が浴びれば皮膚が爛れ、度が過ぎれば死に至り、上級や魔王クラスでもやる気がなくなる。聖書や十字架は……大丈夫だな。

 最上級と呼ばれる悪魔も居(お)るが、これは称号の様なものだ。我も魔界に居(お)った時はそうであった。


 《魔界七十二柱》とは、魔界の民達を纏める王侯貴族の総称である。遥か昔に勃発した大規模な戦争において活躍した者達、その子孫で構成されておる。各々が魔王の名の下に領地を与えられ、治めておるのだ。因みに、上級悪魔とは専(もっぱ)ら彼・彼女等を指す。

 各家にはそれぞれ、特長がある。バラム家の様な圧倒的な怪力であったり、アモン家の様な鋼鉄の如き強靭な肉体であったり、或いは気配の遮断・特殊な矢の生成・破壊光線等々、実に多様である。これ等は魔術とは別モノ、人間で言うミュータントや超能力者に類似しておる。前者は根本的な肉体構造が異なり、後者は“術”ではなく、魔力によって感覚的・本能的に用いるモノなのだ。



 ブルースとその部下による襲撃の翌日。あれから数時間の睡眠は取れたものの、疲れは抜け切らず多少のダルさは残った。とはいえ、士は小学校から継続される無遅刻・無欠席、つまり皆勤賞を目指しておる。“サボる”という選択肢は、元よりない。故に、今日も今日とて学校に向かう。

(ふむ、少々長くなってしまったが、キチンと記憶できたか?)

(概要は)

 眠気が未だに襲い掛かるも、それを何とか抑え込む士。登校に支障を来(きた)しはせん。

(それと、七十二柱の初代にはそれぞれ、大魔神(だいましん)様より賜(たまわ)った二つ名があるが、聞くか?)

(要らん)

 我は今、昨日までにできんかった分を、この時間に講説しておる。知識は共有しておる筈であるのに、士にはそれが無かった故。

(はぁ~、えーと、つまりアレか。下級悪魔がパニッシャーとかバットマンで、中級がキャプテン・アメリカで、上級はビーストとかスパイダーマンも居れば、コロッサスとかハルクも居るってことでイイのか? ざっと言えば)

 例えがアレだが、此奴(こやつ)が理解できておるのであれば構わんか。付け足すと、身体機能のみを抜き取れば、下級も中級も大方これで合っておる。戦闘能力については、また別の話だ。上級もこれ位であり、ただ先述の通り家によって偏りがある。流石に、怒りの度合いでパワーが無限大に増大したりはせぬが。というか、これは我とブルースの事かね。

(クソッ、ただでさえ起きんのが遅かったのに、急がねぇとこのままじゃマジでちこ……!?)

 マンションの階段を、競歩並の速さで駆け降りる士。飛び降りた方が早い気もするが、自重した。程なくしてエントランスに到着。ところが、出入り口となる自動扉を通り抜けた所で、停止を余儀なくされた。

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