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デビル・ミュータント  作者: 竹林十五朗
12/194

    女王降臨、頭が高い!③

(ん? どっかで聞いた様な音が?)

 この音は……骨が擦れ合う音? またスケルトンでも出たか? 

「石森君! 上っ!」

 士は屋根を見上げる。美咲の、今まで聞いた事が無い程に必死な声と、指された人差し指に導かれて。

「なんだ……?! ありゃ……!?」

「デッカイ骸骨……?!」

 其処(そこ)に居(お)ったのは、確かに巨大な人。ではあるのだが、如何(いか)せん皮膚も肉も無く、唯の巨大な骨だけが其処(そこ)に在った。

「巨大スケルトンか?!」

 外に居(お)った奇怪な巨大骸骨に、我々は呆気に取られておった。すると、桐箱に取り憑いた園崎 清彦の霊が突如として現れ、こう言い放つ。

『きた。あいつがきた。ガシャドクロがきた。わたさないわたさないわたさない……』

「が、ガシャドクロ……?!」

 巨大骸骨の出現に、感情を露(あら)わにして叫ぶ清彦の幽霊。それを聞いた霊能者は激しく狼狽し出した。というか、付いて来ておったのだな。全く気付かんかった。

「ガシャドクロ……聞いた事があるわ。確か、死んだ人の魂が集まって生まれた妖怪、だったかしら?」



 《ガシャドクロ》とは、怨霊と同じく戦死や事故死、他者による殺害、自殺等の非業の死を遂げた人々の霊。それ等が大量に寄り集まった結果、巨大な骸骨として半実体化した妖怪の一種である。

 一応実体は有る為、物理攻撃は有効。しかし、ただ単に死者の骨と魂、そして怨念が寄り集まっておるだけなので、破損した箇所はすぐに修復されてしまう。

 因(ちな)みに、此奴(こやつ)等は常に四つん這い。その理由は『筋肉が無い為に立てないから』である、と言われておる。



「実体があるんなら……!」

 士は屋根に登ったガシャドクロを見て、実体があると判断。殴れば壊れると思ったのであろう。庭の土が捲(めく)れる程の跳躍力で、三階建ての屋根まで一跳び。ガシャドクロの手の骨を殴り付けた。

「折れたっ! これならイケる……!」

(いや待てっ!)

 確かに、士の殴った部分は真っ二つに圧(へ)し折れておった。それがパンチの威力を物語っておる。

「え……?! がっ……!?」

 ところが、ガシャドクロはその様な事を意にも介さぬ。折れておらぬ反対側の手で、完全に油断し切っておった士を打ち払う。ビンタをモロに受けた士は、不様にも庭の土の上を転がった。

「石森さん! ガシャドクロは死者の魂と骨の集まりに過ぎません! 壊しても片っ端から修復されますよ!」

 霊能者の言う通りだ。士にブチ折られたガシャドクロの手の骨は、ものの数秒で修復された。

『がえぜ~。わじのぼね、がえぜ~』

「きゃ……?!」

「うわっ……?!」

 ガシャドクロは汚い声を吐き出す。桐箱の傍に居(お)った美咲と霊能者を払い退け、桐箱を手中に収めた。

「美咲さん?! 大丈夫ですか?!」

「え、ええ……大丈夫よ」

「わ、私の心配は……?」

 あ、霊能者の事、スッカリ忘れておった。存在感が幽霊みたいに薄いから。

『わじのえざば、どごだ~?』

 ガシャドクロは園崎邸に、その大きな骨の手を掛け、激しく揺らす。

「エサ? って香奈ちゃんの事か?!」

(園崎 清彦の霊が言っておった『娘は渡さない』とは此奴(こやつ)に渡さないという事であったのか!?)

「なんであの子を狙う?!」

『アイヅど、どりびぎじだ。ぼねやるがら、だいじょうばらえ、っで……』

 骨をやるから代償として娘を差し出せと?! そういう事か!? 

『わじのぼね、もづ、じあわぜ、なる』

「石森さん! ガシャドクロの骨にそんな効果はありません! 奴の言ってる事はデタラメですよ!!」

 霊能者が有益な情報を教えてくれた。まあ、確かに死者の魂と骨、そして怨念の集まりに過ぎん此奴(こやつ)の骨を持っておっても、不幸しか訪れんであろうな。何故、園崎 清彦はこの様な輩と取引を? いや、分かり切った事だ。大方騙されたのであろう。

「チッ! ただ単に、勝手に骨渡して対価を取ろうっつー押し売りじゃねーか!」

『うるざいっ!』

 士の言葉が癇に障ったらしいガシャドクロは、屋根から飛び降りた。その巨体によって地面を僅(わず)かに揺らす。

(こういう輩は力で黙らせるに限る)

「でもこいつ壊してもすぐ治るんだろ?」

(貴様と一緒ではないか?)

「こんな化けモンと一緒にすんなっ!」

 貴様は悪魔と融合した魔人ではないか。似た様なモノだ。

(まあ、その様な事は如何(どう)でも良い。それよりも奴の骨の再構成を止めるには、再生力の源である妖力を掻き乱してやれば良い…筈だ)

「妖力を掻き乱す? どうやって?」

(我の魔力を流し込む。貴様は今まで通り壊しておれば良い)

「え? それだけで良いのか?」

(ああ。……おい! 奴が来るぞ!)

「え……!?」

 ガシャドクロは肉の付いておらんスッカスカの拳を、士に向けて鉄槌打ちの要領で叩き付ける。士はそれを避けられんかった。

『だあいも、ない』

「石森君!?」

 美咲が珍しく心配そうな声で、士の安否を気に掛ける。

「ぐっ……! 大丈夫…! です……!」

 が、その様なモノは士には無用。この程度の輩に後れを取る様な奴ではない。士は両腕を頭の上で交差させ、奴の拳を防いでおった。

(士、悪魔化しろ。その方が魔力を注ぎ込み易い)

「はぁ?! いやでも、美咲さんと霊能者の人が見……!」

 と、その時、ガシャドクロは庭の土を二人に掛けた。それは、犬が後ろ足で小便の上に土を掛ける様な動作であった。

「キャ……?!」

 それは、士が変身を渋っておる間に起こった。

「ううっ……?!」

 奴の大きさが大きさなだけに、かなりの量の土が二人の上に被さる。二人は一時的に身動きが取れん様になった。

 最早(もはや)、悪魔化しておるところを二人に見られるのが嫌と、言っておる場合ではないぞ。

(士! 今の内に!)

「あ、ああ……!」

 士は我の言葉を受け、二人が見ておらぬこの隙に、悪魔化を完了させる。そして、その場を走り出した。ガシャドクロの体を潜り抜け、二人の元へと駆け寄る士。

「二人共! 大丈夫ですか?!」

 士は、二人の上に覆い被さっておる多量の土を掻き分ける。二人を外に出し、新鮮な空気を吸わせた。

「ぶはっ……!」

【ちょっと失礼】

 土の山から出した二人を、士は急いで肩に担ぐ。そのまま園崎邸の玄関を蹴破り、二人を中に放り込んだ。

「え?! あ! ちょっと!? 石森君?!」

 当然、美咲は抗議の声を上げたが、士はそれを完全に無視。霊能者は気絶しておった為、沈黙。今、何か違和感があった様な気が。

【危ないからそこに居ろ!】

「ちょっと君! いま私に向かってなんて……!」

 バタンッと扉を閉め、喧(やかま)しい声をシャットアウトする。同時に中から開けられん様に、ドアノブを曲げて固定。動かせん様にする。

【ふぅ~。これでこいつに集中できるな】

 美咲の奴、かなり怒っておった様だが、大丈夫であろうか。まあ、怒られるのは士であるし、別に良いか。

【で? 普通に殴ったり蹴ったりして壊してりゃ良いのか?】

 (ああ。貴様が壊した箇所全てに我の魔力を流し込んでやれば、骨の再構築は阻止され、何(いず)れ活動は止まる筈だ)

【本当にそんなんで良いのか? なんか不安になってきたぞ?】

(これで良いのだ。ほれ、奴も戦闘態勢に入った様だぞ)

 ガシャドクロは此方(こちら)に向き直り、全身から並々ならぬ妖気を漂わせておる。

『おまえ、じゃま、どげ』

【ハンッ! 退かしてみろ!】

 士はガシャドクロを挑発しつつ、その場から跳び上がった。奴の側等部に廻し蹴りを叩き込む為である。その蹴りは過(あやま)たず、奴の蟀(こめ)谷(かみ)辺りを砕いた。更に蹴りの衝撃により、ガシャドクロは少々グラついた。

『ぐおっ……! む、むだだ。わじ、じじゃの、あづまり、ずぐに、もどる』

 奴は自らの再生力を誇るかの様に余裕をカマす。しかし、それは脆くも崩れ去った。

『あで?! なんで!? もど、らない?!』

 クククッ。やはり、我の目論んだ通りの結果になったな。我が士の廻し蹴りに合わせ、魔力を流し込んだ。その所為(せい)で、奴の妖力は正常に機能しなくなる。それにより、破損した箇所が修復されなくなったのだ。

【ふぅ~。上手くいったみたいだな。よし、この調子で行くか】

『がっ……! ぐっ……! や、やめ……! がはっ……!』

 ガシャドクロを構成しておる骨。士はそれを、拳や蹴りで体を起こせぬ位に圧(へ)し折り、元に戻り難い様に頭突きや体当たりで砕いていく。当然、我によって骨の再構築が出来ぬ様になったガシャドクロ。奴の動きは次第に鈍くなり、終いには全く動かん様になった。伝承では強大な妖怪と伝えられておるが、此奴(こやつ)はまだ成り立ての模様。所詮はこの程度だな。

【なぁ? こいつってさ、このまま放っといたら勝手に消えんのか?】

(いや、このまま放って置くとその内妖力も正常に機能し出すであろうから、暫(しばら)くすると元に戻るであろう)

【ダメじゃねーか。どうすんだ?】

(ふむ。霊能者に祓(はろ)うて貰うしかないな。これだけ弱っておればできるであろう。奴を起こせ)

 士は動かぬ様に捩じ曲げ、固定したドアノブを引き千切った。扉を開けて中に入ると、士は気絶しておる霊能者を叩き起した。

【ちょっと! 霊能者さん! 起きて下さい! 出番ですよ!】

 士は無慈悲にも、霊能者を往復ビンタで叩き起こした。

「……ん?! ……痛っ?! ……え!? ひぃ?!」

 士の往復ビンタによる痛みで跳ね起きた霊能者。彼は突然目の前に現れた化け物、悪魔化した士を認識すると途端に顔色を変え、恐怖した。

「あ、あわわわわわ……!? こころさないで……!」

 士の奇怪な風貌を見て腰砕けになり、霊能者の声は震えておる。

【なに言ってるんですか? んな事より、ガシャドクロをボコボコにして弱らせたんで、あなたの力で早く祓ってください】

「へ……?! あ、は、はい!」

 事態を理解したかは分からぬが、霊能者は外へと飛び出した。霊能者は己の本業である力を存分に奮い始める。彼はガシャドクロを形成しておる数多の魂を浄化し、或いは成仏させていく。ふむ。仕事はちゃんとできる様だな。

「ねぇ石森君、きみ……」

 と、すぐ傍で地べたに座っておった美咲も立ち上がり、士に近付いて来る。

【え? なんですか?】

(あ! おい! 馬鹿! 貴様まだ悪魔化したままだぞ!)

【え? あ! しまっ……!】

 うおぉっ、拙(まず)いっ。士の正体が遂にバレるかっ。

「やっぱりタダの人間じゃなかったのね」

【へ!?】

 やっぱり、彼女はそう言った。まるで、士が人間ではない事を予(あらかじ)め知っておった様な素振りだ。

「桜に見せて貰った資料にね、君は普通の人間じゃないかもしれない、って書いてあったの」

【そ、そうなんですか……?】

 ふむ、彼奴(あやつ)は悪魔化した士を見知った上で組織に勧誘した。加えて、初めて会った時も士の正体は如何(どう)でも良い、的な事を言っておったしな。というか、沢渡は士の正体が魔人である事を知っておるのか。いや、それ以前に何故、美咲に士が人間ではない事を態々(わざわざ)教えたのだ。一体何(なん)の為に。

【えーと、なんで俺が人間じゃないって知った上で、俺をど、部下にしようと思ったんですか?】

 確かに、人外と分かっておるモノをど、部下として傍に置くなんぞ、普通の人間であれば到底せんであろう。余程、酔狂な奴なのか。或いは……いや、これはないな。

「それはね、桜が君を『大丈夫』って言ったからよ。それと君は“部下”じゃ無くて“奴隷”だから」

 あ、其処(そこ)は譲らんのだな。

【美咲さんはなんで沢渡さんの言葉をそんなアッサリ信じたんですか?】

「桜はヒトを見る目があるの。特に男のね」

 何だ、それは。根拠としては薄いな。士は喜んでおるが。

【ち、ちなみに、俺がどんな存在か聞きました?】

「え? 改造人間でしょ?」

 成程、そう来たか。いやまあ、確かに改造はされておるけれども。ま、勘違いしてくれておるのならばそれで良いか。

【い、いやぁ~、実は子供の頃に謎の組織に誘拐されまして……】

 士が適当な作り話を美咲に聞かせておると、ガシャドクロを処理し終えた霊能者が戻って来た。

「うおっ! やべっ!」

 此方(こちら)に近付く霊能者に気が付いた士は、咄嗟に悪魔化を解く。だが当然、服は着ておらん状態。結果は見えておる。

「キャァァァァ――ッ!!」

 バシンッという頬を張る音が響く。士の裸を間近で見てしまった美咲が、士の頬を引っ叩いたのだ。それも、これまでの様子からは想像も付かぬ、甲高くも可愛らしい悲鳴を上げながら。

「ブフゥッ!!」

「な、なんで服着て無いのよ?!」

 この反応、まだ(・・)だな。

「しょ、しょうがないじゃないですか! あの姿になったら服が破けるんですよ!」

「イイから早く隠しなさい!」

 と、その時、士と美咲が揉めておると、幽(かす)かな男の声が聞こえてきた。

『ありがとうございました。娘を護って頂いて。これで私も安心して成仏出来そうです』

「うおっ!? なんだ?!」

 士が振り向くと、其処(そこ)には園崎 清彦の霊が立って、いや、浮いておった。

「貴方……!?」

「パパ?」

 一体何時(いつ)から居(お)ったのか、其処(そこ)には園崎夫人と香奈嬢が立っておった。恐らく、霊能者が連れて来たのであろう。

「あれ? なんかさっきまでと雰囲気ちがうような……」

 確かに、今の清彦は先刻までとは異なり、流暢に喋っておる。

「恐らくですが、ガシャドクロの邪念が影響を及ぼしていたのでしょう。今はもう居なくなったので、正常に戻った様です」

 ふむ。成程、そういう事か。

「そう言えば、石森さんは何故裸なんですか?」

「え?! あ、いや、その……! 闘ってたら破けちゃって……」

『でしたら、僕の服を差し上げます』

「い、良いんですか?!」

『はい。石森さんには娘を護って貰いましたのでその御礼、と言ってはなんですが……。どうせもう使いませんし』

「あ、ありがたく使わせて頂きます」

 清彦の言葉に甘えた士は、亡くなった彼の服と靴を着させて、或いは履かせて貰った。これ全部とは……結構高そうな物ばかりではないか。それも、新品同然の物を上下合わせて三十着程ある。些(いささ)か貰い過ぎの様な気もする。まあ、くれるというのであれば、士は有難く貰うであろうがな。

「あ、ありがとうございます!」

『御礼を言うのはこちらの方です。この度は本当にありがとうございました』

「ありがとうございました」

 三人はお互いに深々と頭を下げる。それを見た香奈嬢も母親の真似をしておるのか、士に向かって頭を下げる。

「服は後で届けますので住所を教えて頂けますか?」

「あ、はい。えっと……」

 ふぅ。これで一件落着か。それにしても士の奴、最近騒動に巻き込まれ過ぎではないか? この先大丈夫であろうか? 

 ○●○●○

 そして、遂にその時がやって来てしまった。

「もう、時間の様です」

 霊能者がそう言ったので、清彦の方を見る。彼の体はドンドンと透けて逝く。娘を狙うモノが居(お)らぬ様になった為、この世への未練が無くなり、向こうの世界へ逝く時が来たのだ。

『紗枝、香奈、どうやらお別れのようだ』

「あなた……」

『ゴメンね……もう一緒には居られない』

「パパ……? どこかいくの?」

『遠くにね……。紗枝、香奈を頼んだよ』

「……ええ、」

『香奈、紗枝、どうか幸せに……』

 そう言い残し、清彦は天へと昇って行った。愛する妻と娘を残して。最後に一目会えて、良かったな。

「……では、我々はこれで失礼します。もしまた何かありましたら御連絡下さい」

 奥方にそう告げ、我々は園崎邸を後にした。そして、庭に散らばった士の私物も回収しつつ帰路に着いた。制服、また買わんといかんな。

 それにしても、今回は何故、清彦の気配を感じ取れんかったのであろうか。先日の怨霊は、遠方からであったのにも拘らず、察知できたというのに。邪念を抱いておるか否かの違いか。いや、だが、ガシャドクロの妖気に当てられておったしな。

 しかし、士はその事に対して、特に疑問はない様である。

「奥さんと娘さん大丈夫かなぁ?」

「ま、実家が裕福なんだし、大丈夫でしょ。それより……」

 士が園崎家の今後について考えておると、美咲が唐突に聞いてきた。それもかなり怒りながら。

「そういえば石森君、さっき私に向かってなんて言ったか覚えてる……?!」

「え?! お、俺、なんか失礼な事を……?!」

「へぇ、そう……! 覚えて無いんだ……!」

 何か分からぬが、途轍もない怒気を美咲から感じる……! 

「君、私に向かって『そこに居ろ』って命令したわよねぇ……! 奴隷のクセに……!」

「え?! あ! いや、そのぉ……」

 美咲の怒りに、士はただ狼狽(うろた)えるばかりである。

「しかも……! その後私を放り投げたわよねぇ……! 物みたいに……!」

「き、緊急事態だったもので、つ、遂……」

「ふ~ん……! そうなんだ……!」

「あ、あの……す、すいませんでしたぁー!!」

 士は頭が地面に着くのではないかと思う位、頭を低く下げて謝罪した。

「ねぇ、悪いと思ってるんなら明日からのゴールデンウィーク、私に寄越しなさい」

「え?! あ、はい。それは構いませんが……」

「じゃ、明日の朝九時に私の家まで来なさい。あ、住所は君のケータイに送っておいたから」

 そう言い残した美咲は、颯爽と車まで戻り、そのまま走り去って行った。む、住所、は資料に書いてあったのであろうな。

「……って、あれ? 俺置いてかれた?!」

「私が送って行ってあげますよ」

 帰りは霊能者が車に乗せて行ってくれるそうだ。霊能者よ、感謝する。先程は『幽霊みたいに存在感が薄い』とか思って済まん。

「あ、ありがとうございます」

(さっきはビンタしてゴメンなさい)

 士は口で礼を言い、心の中で先刻の非礼な行いについて謝罪する。

「明日、何すんだろ?」

 知らん。だが、どうせ面倒な事になるであろう、と我等は思ったのであった。

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