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プロローグ
食べ物には、その時々の流行りがある。
例えば、
ティラミスや
ナタデココ。
最近ではタピオカ等々。
そんな危うい砂の楼閣のようなブームを、蓮見慶太もその城を作った一人である。
香川の厳格な名家に生まれ、父から強要されたエリートの道を拒絶した彼が、自らの腕一本で築き上げた「蓮見餃子」。それは一時期、日本中を席巻し、時代の寵児として彼を頂点へと押し上げた。
だが、風はやがて猛烈な逆風へと変わり、彼を奈落へと突き落とした。不祥事、倒産、そして親族からの絶縁。
すべてを失った彼が、最後に辿り着いたのは、かつて逃げ出した故郷・高松の路地裏。
そして、かつて愛し、一度は壊してしまった女性・恵美の隣だった。
「味は、人で決まる」
亡き義父が遺したその言葉を胸に、彼は今、流行り廃りのない「本物」を求めて、泥にまみれ、粉にまみれ、地に足をつけようとしていた。
これは、虚飾の城を追われた男が、一皿の餃子に魂を込め、本当の「人生」を取り戻そうとした物語である。




