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プロローグ

場所はドワーフ達の国家ジレーザ。

首都イーディンの寂れた宿屋で、二人の男女がテーブルを介して話し合っていた。


一人は着崩した神父服を身に纏った、金髪で顔にまだ幼さを残した青年。

そしてもう一人は、男物の毛皮と綿で作られたジレーザ固有の防寒着を着た赤い髪の女性だ。


「で、ホントなの?クリフがここに来るって」


赤髪の女性は口を開き、眉を顰める。


「勿論だよ。彼はここに来る、旅をしにね」


青年は貼り付けたような笑みを浮かべ、飽くまで社交的な口調で話した。


「で、なんでアタシにそれを伝えた訳?」


一方で女性は疑り深く、渡されたメモ書きを片手に青年を睨んでいた。


「僕も彼を殺したいからね。君だってそうだろ?技術保全課のソフィヤさん?」


青年が赤髪の女性の名を呼んだ時、彼女は懐から自動拳銃を引き抜き、青年に銃口を向けた。


「どこでアタシの正体を知った?アタシたちの存在はこの国の最高機密だ。無事に帰れると……」


ソフィヤが言い切る前に、巨大な樹木の触手が青年の袖から飛び出し、ソフィヤの首を絞める。


「僕が聞きたいのは、彼を殺したいかどうかだ。立場を弁えなよ?この会話の主導権を握っているのは僕だ」


青年は触手の締め付けを強める。

その瞬間、ソフィヤの左袖から金属の短い筒が飛び出し、彼女はそれを掴む。

瞬間、光の刃が筒から形成され、振り回されたそれが触手を溶断した。


「へえ、ビームソードか……やっぱり、この国にも古代のヒトが居るんだ」


人知の及ばぬ高度な古代兵器、その出自を青年は知っていた。


「お前っ……何者だ!」


ソフィヤは分厚い上着を脱ぎ捨て、緊張しつつも、怒りの表情を作った。


「自己紹介も前に銃を向けたのは君だろう?それじゃあ改めて、僕はアルバ・クアリル」


青年は仰々しく一礼をし、頭を下げる。


「かつてアウレアを滅亡寸前に追いやった魔神、バルツァーブの息子だよ」


彼は顔を上げ、不敵に笑った。


「半神っ……!」


ソフィヤは額に汗を滲ませ、出口に目線をやる。しかしそれを読んでいたようで、出口を樹木の触手に塞がれた。


「逃亡は許さないよ。ささ、こっちに、話はまだ終わっていないじゃないか」


アルバは物腰柔らかな口調で微笑を浮かべ、倒れたソフィヤの椅子を起こし、座るように促す。

ソフィヤは光刃を消失させ、筒を握り締めながら、席に着く。


「……何をさせたい訳?」


「僕はこう見えて顔が割れててね、あまり表だって活動したくないんだ……そこで、彼に恨みを持つ君に殺しを頼みたくてね」


「お前の言う″クリフ″は、二年前の戦いで私を捕虜にした、人間のクリフで間違いないな?」


アルバは頷く。


「勿論。君が殺したくてたまらない、クリフ・シェパードその人だよ」


ソフィヤは憎悪の籠もった瞳でアルバを見つめる。


「請け負った、あいつは私が殺す。でも、この復讐は私だけのものだ。もし他人を殺す事になったり、私の仲間を裏切るような事になるなら、私はこの件から離れる」


「構わないよ、連絡は追ってする。それじゃあ、良い狩りを」


アルバは樹木の触手に包まれる。


「尤も君、そんなに辛抱強くないだろう?」


触手が閉じる一瞬、彼は嘲笑った。

そして、触手は枯れ落ち、積み上がった枯れ葉のように崩れ、床に散った。

彼の姿は何処にもなく、ソフィヤがただ一人残された。


「……言ってろ、せいぜいお前を利用してやる」


ソフィヤは歯軋りをし、宿の扉を蹴立てるように外へ出た。

その瞳には、確かな憎悪と覚悟が宿っていた。

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