第十話
「よぉ〜、朝起きて家に行ってみたら居なかったからこっちに来たが、アリスはぐっすりみたいだな。」
「あ、団長さんおはようございます!」
「おはよう、修理は終わったのか?」
「はい、終わってます。」
アリスさんのアトリエに来た団長さんと軽く会話を交わし、私はアリスさんの背中を叩いて彼を起こしました。
「んぁ、何さ…眠いんだけど…」
「よっ、もう朝だぜ。」
「ダンテ…昨日の宿探しは大丈夫だった?」
アリスさんは大きなあくびをして机に突っ伏していた上体をゆっくり起こすと、目をこすりながら団長さんに話します。
「あぁ、問題なく泊まれたさ。お前こそ夜中まで作業して、朝方に倒れるのは健康に悪いぞ。」
「へいへーい、善処はしませーん。」
仲が良いんだなぁ、と思いながらダンテさんの後ろに続く皆を確認しましたが、誰もいません。他の皆はどこにいるのでしょうか。
「一旦家に帰らないとかな。朝ご飯も食べてないし…」
「おう、それがいい。」
団長さんの様子から考えて皆が居ないという事は無いはず、ならアリスさんの家でしょうか。それが一番しっくり来る気がするのですが、違ったら…?
「さ、行こうか。セブンちゃん。」
「はっ、はい。」
考えても仕方のない考え事は一旦やめてアリスさんの家へと一度戻る事になりました。
「修理してもらった身体の使い心地はどうだい、セブンちゃん。」
「それそれ、僕も凄く気になってるんだ。一人の技術者としてどうしてもね…!」
「まぁ…その…まだ分かりませんよ。家に向かって歩いてるだけじゃないですか、何かを掴むにはあまりに早すぎますって。」
男の人たちというのは皆こう気が早いんでしょうか。修理への期待感がとても高い事を感じ取りつつも私は特に何も言えませんでしたが、もしかして「使い心地最高!」とか言ってたほうが良かった…?
「ははは、それもそうか。悪い、早すぎたな。」
「いえいえ、むしろそうやって私の事を考えてくれる事が嬉しいので。」
さて、そんな話をしている間にアリスさんの家に到着し、団長さんはドアを蹴破る勢いでバァン!と開けました。
「ただいまーっ!」
「ちょっダンテ、僕の家壊す気かよ…!」
「力加減くらいは分かってます…よ……」
…えっ?
…誰も、誰もいない…?
…もしかして、奴隷商?誘拐犯?強盗?何があったの…?
「お、おいダンテ…なんで…」
「あいつら…ッ!」
やっぱり、やっぱりそういう事なんでしょうか。…そう考えた瞬間、再び私の心を恐怖と不信が覆い被さって…
「3人とも帰ってきましたか。おかえりなさい。」
後ろから知っている声が聞こえました。振り返るとそこには
「セシル…お前なぁ!」
「それ、ケバブ?」
「そうですよ、アリスさん。」
ケバブを手に持ったリカオンの団員とベラトリクス、そしてクロでした。
「先に買い行ってんじゃねぇよ…ッ!」
「団長の分も買ってますよ。ホットソースたっぷりがお好みでしたよね。」
「おう、流石副団長分かってんな。」
ほんの今さっきまで凄い怒ってるような雰囲気だったのに、一瞬でその火が消えた…。それで良いんですか、団長さん…。
「アリス、あんたの分もあるよ。」
「あ、うん。ありがとう、ジルヴァーナ。」
そうして流れるように私達は室内に入り、皆で朝食を食べる時間となりました。私もアリスさんにコップを借り、水を一杯頂き核を潤します。
「さて、と…」
団長さんが口を開きました。今度は何のお話でしょうか。




