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3 やくざ 後編



     3



―こ、これはヤバいゾ!

左手でうんこをぬぐったTETU。

それはつまりうんこに抵抗感をあまり感じていない、ということだ、脳内のアドレナリン分泌によって。

あいつはここ数週間、練習した。

固形のうんこを肛門から飛ばす技術を。

排泄物を武器として使うのであれば、飛距離を稼いで攻撃に転用するのがいちばんと考えたからだ。

尿は話にならない。

そこで糞を放屁によって、飛ばす技術を体得するよう努めたが、そこまで腹の調子を調整することは人間の分際では限界があった。

あいつは羞恥心を消し、糞を敵になすりつけ相手が七転八倒する姿を見るのが嬉しいという個性的な精神以外がフツーの人間。

柔道の素養とたまの運動することだけで、後は三十路のフリーターである。

それが冷酷にして、今怒りでたけり狂っているやくざに勝てるとはとても思えない。

そしてそのあいつの心持ちをTETUは昔年の修羅場学から密かに悟った。

コイツは怯えていやがる、と。

右ローキックをあいつにTETUは3発食らわす。

あいつは太ももに喰らい、よろめくことは自尊心でしなかったが、「痛い!」という表情はしてしまった。

TETUはつけ込む。

更にキック!

そして逃げようとしたあいつに足をかけ、転ばす。

倒れるあいつ。

非常階段の下の階の踊り場まで転がる。

TETUはジャンプして、下段に飛び込み、それはあいつを襲うカタチとなった。

―今だ!

あいつはクルっと下半身をねじり、尻を正面に向け、両方の臀部をそれぞれ右手左手で開き、校門を露出させる。

―ゲリビーム!

TETUはほぼ水分の下痢便をまともに顔面で浴びた。

そう、最初は何を浴びせられているのかが判らなかったのだが、0.2秒後くらいにそれが下痢便の超高密度の噴出だと理解した。

これはあいつが肛門内で生成した第二の糞で、放屁による糞の発射は失敗に終わったが、腸内に違うジャンルの糞を生成して準備しておくには成功していたのだ。

そして間髪入れずに、第三の糞!

その噴出する下痢便が止む前に、その水分を割るようにあいつの右手が伸び、TETUの口内にその第三の弾が放たれる。

右手の人差し指と薬指に粘土の高い糞を付け、口内、ひいては喉内に押し込む。

これはもう脳内物質でごまかされる類いの質と量ではなかった。

TETUは何をされているか理解が追いつかない。

そして落涙さえしていた。

気がつくと、サブだけでなく、向かいのビルにいたたけしもこの非常階段にいて、二人でこの闘いを注視していた。

野外、風が強い。

だから、糞の香りは二人の鼻孔を突かない。

剣や銃ではない、人間本来が体内に蓄える武器で敵を倒すというアノニムな現象に二人は圧倒されていた。

崇高、そんな単語を知らない二人がその概念を頭ではなく心で理解していた。

サブとたけしは知らず知らずのうちに右手と左手で手をつないでいた。

TETUは、この業界にも20年もいる男だ。

中学生の時にグレ、実家から鉄道で30分くらいの距離にある名古屋・栄でゴロをまいていた。

腕っぷしが強かったのは、女にいかなかったからだと言われていた。

ある日、少年課の一斉検挙があって、TETUは店の倉庫に追い込まれた。

だが、その強さから、狭い地形を使い、TETUはその美青年の刑事をノした。

そして気を失ったことをいいことに、その刑事をレイプしたのだ。

これが本当にオレがやりたかったことだ!とTETUは自分の性癖を理解した。

仲間のカンパで直ぐに栄を後にして、この歌舞伎町にやってきたのだ。

〈刑事犯しのTETU〉の名は直ぐにこの街でも広まった。

ノンケは生理的にTETUを怖がったので、この街でTETUは〈番外〉とまで称えられた。

このオレがうんこマンに負けたと、糞をなすりつけられ負けたと知れたら、オレのこの20年は無駄になるぅぅぅ!とTETUは立ち上がった瞬間にハイキックをあいつの左頬にブチ当てた。

そして右頬にスピードパンチ!

顎にアッパーカット!

涙と鼻水は止まらないTETUだったが、理解した。「素人にこれだけヤれば、もう勝ちだ」と。

だが、あいつはその殴られた反動でワザをのけぞり、非常階段から上体を投げ出した。

「や」

これはサブが「ヤバイ」と言いかけた発音。

更にアイツは両かかとで軽く飛んだ。

そう、ワザとこの高所から身を投げ出したのだ。

4階。

落下したら、良くて大けが、悪くて死亡。

たけしがもう無意識であいつに手を伸ばす。

だが、あいつのたけしへの返答は笑顔、であった。

第四の弾を、比較的に柔らかな糞を落下途中に両手になすりつけるあいつ。

縦の鉄骨をその両手で掴んだ!

そう!軟便を!グリスや油の代用にして!その鉄骨で回転を始めた!

TETUは、喉と口の鼻に詰まった糞を爪と指で取り出すことで精一杯、気づいていない!

回転により、浮力と遠心力が膨大に高まっていく。

そして、回転の数とスピードからあいつの両手から摩擦で火がつくと思われるような状態から、その両手を話す。

そして、決まる!ヒットする!

足を揃えてのドロップキックがTETUの首から鎖骨にかけて、決まる!ヒットする!

ちょうど、決まった時にTETUは右鼻穴の人差し指を入れていたので、その指が更に奥へめり込む。

しかも後頭部を背後に鉄骨に強打するTETU。

さすがのあいつも素早く立ち上がり、蹴るではなく踏んで、TETUの肋骨を数本折った。

だが反応はない。

―しめた!遂にアレができるゾ!

あいつはグロッキーに倒れるTETUの顔面に思いのほか白い尻を出した。

第五の弾、普通の糞。

つまりTETUの顔を便器に見立て脱糞を始めた。

―ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。

そして糞の先頭が、TETUの指がハマった鼻先に垂れる。

―クソ!喰らえ!

たけしは当初、あいつから聞かされていたことを思い出して、外食産業でよく出るようなおしぼりを投げ渡した。

肛門をぬぐうあいつ。

右足でTETUの顔を思いっきり踏み、あいつは彼の前歯を数本折った。

そのおしぼりはまだまだいっぱいあり、ビニール袋からたけしはあいつのために出してやり、その都度、あいつは受け取って、両手やその他の糞のついた個所をふき取る。

パンツとズボンをズリ上げて、ベルトを巻き直す。


あいつは非常階段の下へと降りて行った。

当初、あいつはたけしに自動車を出してくれるように頼んでいた。

だが、おしぼりの準備を頼まれて、初めて糞を多用するケンカと聞いて、車内が臭くなるという理由から断った。

タクシーも使えないので歩いて帰ることにした。

サブが横でスマホをいじっている。

現場から離れる前、これよがしなシャッター音を鳴らして、スマホでTETUが顔に大便を乗せている姿を撮影した。

そして、今サブはビルの名を明記して『このビルにTETUが糞まみれ負けている!』とSNS上で上げて、10分も経たずに歌舞伎町内で拡散し、バズった。

だが三人は無言。

アイランドタワーの前あたりで、その沈黙に耐えられなくなったかのようにサブが云い出した。

「オレも、うんこ格闘技をやりたいです!師匠!」

師匠と呼ばれたのはあいつ。

あいつは単純にこのサブがなんで着いてくるのかがフシギなだけだった。

「俺、もう芸人も起業家も目指しません!目指すのはうんこ格闘技だけです!師匠!」

これはたけしの発言。

たけしも何故に着いてくるかがあいつにはフシギだったのだが、これで二人が着いてきた理由が知れた。

「それはいいがな、二人とも。糞なすりの道は外道よ!人外よ!もうフツーのニンゲンには戻れないってことだゾ!?」

「いいんス!」

「覚悟してるっス!」

とたけし・サブの順番で答えた。

あいつとしては百戦錬磨のやくざ相手に勝てた、しかもここ最近練りに練った戦法、五弾装填、ゲリビーム、軟便懸垂と技を駆使して。

今度やるならば、奇襲や暗殺でなく、向かい合った試合形式に移行するしかないし、そうでなければ始めた意義がない。

そのためには練習試合をする用意が必要だ。

門弟が出来たのならばスパークリングができる、ということだ。

お互い、糞を繰り出す、その糞がヒットするかが、最初の戦法課題。

そしてヒットして糞が口腔内や目に入った時にどれだけガマンして戦えるかが第二の課題だ。

他人を糞を塗られるなんてそうとうなストレスのハズだ。

―オレが、こいつらにl糞を塗られ、食べさせられる?

そう思うと楽しくなってきた。

あいつはサブとたけしを実家に誘った。

シャワーを浴び、糞を落とすと二人は申し合わせたように発泡酒の缶を大量に持ち込んでいた。

その酒を飲みながら、三人で新しい格闘技団体について次の日の昼まで話し合い、疲れて寝た。


TETUにも後輩や舎弟と呼ばれる者が何人かいたが、その糞まみれの姿に誰もが敬遠した。

馴染みの闇医者の隠れ病院まで這って行ったが、その糞まみれの姿に追い返された。

常連をしていたサウナに行ったが、入り口で止められた。

ようやく気付き、児童公園の蛇口で洗い、乾かし、ユニクロで簡素な服を素早く買い、公衆便所で着替え、サウナに行き、湯当たりと傷による熱でTOHOシネマズの前で倒れた。

救急病院に搬送された。

付け加えると、TETUは東京に来てから、その日暮らしで、サウナやカプセルホテルに泊まり、家ナシであったのだ。

その病院であの深夜暴漢に襲われ・糞まみれにされ、この数日間に糞まみれのためサウナや病院に断られ、街をさまよった内情を画像や動画で拡散され、笑い物にされていたことを初めて知ったのだ。

栄のホストクラブで犯したイケメンの刑事からあの非常階段で犯したサブとか呼ばれていたチンピラに辱しめを味合わせてことを心から悔いた。

そしてその夜、TETUはその病室の窓から飛び下り自殺を決行し、成功した。

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