披露宴
「おめでとー!」
「おめでとー!」
フラワーシャワーが私達の上に降り注ぐ。
「それっ、それっ!」
人一倍高い位置から花びらを振らせているのはアレクだ。黒いスーツに艶めいたボルドーのドレスシャツがセクシーである。
挙式が終わり、その後は披露宴へ。やっぱり次々と運ばれてくる料理を食べてる余裕は無い。ドレス苦しいし。今、プロジェクターで映された来られなかったゲストのビデオレターが流れている。私側のゲストからは知ってる芸能人がでてくる度にどよめきが起きている。
「それではここで、サプライズです! 新郎新婦のご友人からのお祝いビデオをご覧頂きましょう」
「えっ!?」
「俺も聞いて無い」
会場が暗くなると、突然それははじまった。産まれてもない頃のトレンディドラマのオープニング曲が流れる。会場にふっと笑いが漏れた。
『かのんまき物語』
凝ったテロップが表示される。間違いなくプロの犯行である。
「どうした? 具合悪い?」
かのん君役として登場したのはアレクだった。ただメイクちょっと濃すぎないか。
「ううん、うわーん」
以外な熱演をしているのはさくらちゃんである。そこから同棲にいたるまでをダイジェストで都合の悪い部分は省いて作られていた。ちょいちょい二人が知りようのない事が混じっているのは、かのん君の仕業だな。
「あはは……アレク演技へったクソ……真希ちゃん? 泣いてるの?」
「……え?」
気が付いたら、涙が頬を伝っていた。ここまで、期間は短かったけど濃い毎日だったなって思い出してしまって。
「ありがとうございます。アレク! さくら! サンキュー!」
泣いている私の代わりにかのん君がお礼の言葉を述べる。ハンカチで涙を抑えながら、私も二人に会釈した。
それからは怒濤の記念撮影タイムに入る。特に私の会社の人達が殺到してきた。
「長田、おめでとうー」
「桜井さん、ありがとう」
「これから大変だけどがんばって」
「主任……」
かのん君も私もそこから身動きが出来ない。タイムスケジュールによればそろそろイベントの時間だ。
「さて、本来ですとここでケーキカット……と言いたい所ですが、どうもお二人は違う事がやりたいみたいです」
さぁ、これも会場に我が儘言って用意してもらったんだ。私と言えばかのん君。かのん君と言えば……。
「先程のビデオでもありました通り、新婦は最初新郎をクリームソーダと間違えており……」
会場がどっと笑いに包まれる。
「そこでご用意いたしました! 巨大シャンパンタワーならぬメロンソーダタワー!」
ワゴンに乗せられたシャンパングラスとペットボトルのメロンソーダ。
「それではお二人の共同作業です!」
ドレスで昇る脚立が怖い。おそるおそるメロンソーダを注いで行くと会場からは笑いと拍手が挙がった。
会場のスタッフはメロンソーダタワーが完成するとバニラアイスを乗せて会場に配って回った。
「それではファーストバイトはどうしましょうかねー、みなさん見たいですかー?」
見たーい、とお決まりの反応の後に用意されたのはケーキじゃなくてバニラアイス。
「それでは真希さん、大きく一口! お願いします」
「あーん」
渡されたスプーンに目一杯のアイスをかのんくんの口に入れたが冷たくて飲み込めないみたい。
「さて、次は新婦へのお返しですが……かのんさん大丈夫ですか」
「らいじょうぶ、こうひまふ(大丈夫、こうします)」
ぐいっとかのん君に腰を引き寄せられ、キスをされる。冷たい冷たいバニラ味のキス。会場はキャーという喝采と拍手と口笛が飛び交っている。もう、恥ずかしいじゃない。
「このとおり『キスでも落ちない』ので」
「おっと、スポンサーへの忖度! ぬかりない」
大いに盛り上がる会場と裏腹に私は冷たい唇を真っ赤な顔で押さえていた。
「それでは新郎新婦は一度退場いたします、拍手を」
ああ、やっとお色直しの時間だ。私達は笑顔で会場を後にした。




