8/やはり博麗の巫女は勘が鋭い。
即興でやった、頑張った。
たぶん設定とか忘れて、今までのと矛盾する点がありそうな気がしないでもない。
「あぁもう、無駄にチカラ使っちゃったじゃない……」
目的としてまずは人間を探すはずだった。
が、今の戦闘でどうしようもなく気分が優れない上、かなりの霊力を消費してしまっている。
そのため、また妖怪と鉢合わせになってしまうと、いくら私でも逃げ切れる自信がない。
さて、なら、どうしようかしらね……。
隠密行動を繰り返しながら、当初の目的を遂行すべきだろうか。或いは、霊力が回復するまで息を潜め続けるか。
安全を確保するなら後者だけど……、身の危険から早く解放されたいのなら前者よね。
要は、この時代の人々の集落を見付けさえすれば、どちらにせよ安全は確保できるのだ。
ただこの場合だと、『集落を見付けるまでの道程が計り知れない』ということが問題として浮上してくる。
短ければ短いほど良いが、長ければ最悪だ。
「……とりあえず、結界くらいは張っておくべき……、よね」
幸いなことに、ちょっと周囲に結界を張れる程度には霊力が残っている。
もし移動するとなれば能力を使えばいいし、どうせこんな微塵にしか残ってないなら、いっそ使ってしまった方が清々しい。
念のため御札で強度を上げつつ、手早くドーム状に結界を張る。
「これで一先ず安心ね、っと」
でも、結界に込めた霊力は本当に微塵だ。強化しているとはいえ、内部の霊力が切れてしまえば結界はいとも簡単に消え失せる。
時間はそこまであるわけじゃない。
となると、必然的に決断は急がないと駄目……、か。
(あんまり動きたくないのよね、面倒だし。正直そろそろ眠くなってきてるし……、もう寝ちゃおうかな)
おっと、いけない。いつもの面倒臭がり屋な性格が裏目に出てしまっている。
どうみても真面な理由じゃないわよね、これ。
というか、寝てしまったら間違いなく死ぬでしょ。結界が消えたことに気付かずに寝続けて、妖怪に襲われて何も知らないまま喰われる……、うわ。
(よし、人を探そう)
このまま息を潜めるほうを選んだら、きっと私はそのまま眠ってしまう。―――で、どうなるかは想像の通りだ。
転生してからものの数時間で死ぬとか……、龍神もびっくりでしょうね。
もちろん、そんなことになりたくない私は、出来るだけ静かに空を飛んだ。
§ § §
久々に能力使ったわね……。
ふわふわと緩いスピードで空を飛びながら、ふとそう思った。
最近はめっきり霊力依存だったし、そもそも能力を使わないといけないほど危険なやつとか出てこなかったし―――。
あれこれしている内に、もう一年くらい使ってなかったんじゃないだろうか。
ま、そんだけ使ってなかったらこうもなるわねと、どうにも速度の出せない現状に呆れる。
「早く感覚取り戻さないと……」
あれこれ試行錯誤していると、ほんの少しだが速度が増す。
しかし、全盛期といってはなんだが、昔の頃と比べるとやはり頼りないものがある。
多少ぶれながらも飛び続けていると、
(……ん?)
何かに、袴が擦れた。
風か虫かが当たったのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
確認してみると、そこには傷付けられた跡が微かに残っていた。
でも、周りには何もない。
もしかして木の枝にでも引っかかった? だが、既に森の域からは飛び出ており、生い茂る木々は遥か下にある。
どう考えても引っかかるはずがなかった。
「何が……」
なんともいえない不気味さ。
寒気がした。思わず体がぶるりと震える。
「風……、鎌鼬? いや、でも鎌鼬が起こるほど風もスピードも……。じゃあ、何に当たって……?」
不可視の攻撃。
考え、行き着いた先に頭を過ぎったのはそれだった。
しかし、仮にそうだとして、どうして追撃がこないのか。
「―――まさか」
風でもなく、虫でもなく。
枝に引っかかったわけですらなければ、敵がいるわけでもなく。
それでいて、何かに擦れる。
それに加え、不可視である。
これらの条件が当てはまりそうなものを、私は一つしか知らなかった。
「結界?」
次回があれば、とりあえず構想はこんな感じ。
『霊夢さん→都市侵入→???』
はい、まったく決まってないですね、すみません((