日本が裂けた日
日本はなぜ、ここまで腐りきってしまったのか。
赤川総司は、常に心の中で呟いていた。
まだ軍隊が存在していた頃の日本は、大和魂が燃え続けており、どんな状況にも屈することが無かった。
だが、今はそんな面影はない。
戦後、アメリカのGHQが幾多の制限をかけ日本は弱体化し保守的になってしまった。
このままでは、いつか日本という国が無くなる可能性もある。
消えてしまった大和魂に再び火をつける事が俺の使命。
いや、俺たちか。
私は今、革命組織「日本解放戦線」の代表としてここに立っている。
長年、各地の街頭や地下で演説し共鳴してくれた仲間達が今ここにいる。
煙草を吸いながら思い耽ていると、扉を小突く音が聞こえた。
「入れ」
「失礼します」
「おぉ、鴨井か。待ってたぞ」
「報告します。配備が完了しました」
「よし。ついにこの時が来たか」
「いよいよですね」
鴨井永人は、背筋を伸ばしたまま、固い決意を宿した目で赤川を見つめ返した。
まだ、二十代半ばの若さであるが、その身に纏う血のように紅い日本軍服は、彼の鋭い体躯により馴染んでいる。
赤川の思想を最も早く傾倒し、革命組織である日本解放戦線の現場を指揮してきた右腕だ。
「西日本各県の県庁に襲撃隊を配置、ならびに東経138度線の東日本へ繋がる各道路に爆破隊を配置。すべて予定通りです。各部隊、革命声明の合図と同時にいつでも動けます」
「……ご苦労だった」
赤川は煙草の煙をゆっくりと吐き出し、灰皿に揉み消した。
「あとは帝がここ東山区の地にお入りになるのを待つだけか……」
「はい。先代帝に参拝するのが午後二時の予定となってます」
赤川は、椅子からゆっくりと立ち上がり、後ろに手を組みながら鴨井に告げる。
「各部隊に告げろ。合図とともに速やかに実行せよ。たとえ警察でも抵抗する者は射殺しろ。そして爆破隊は、たとえ車が通っていても構わず東日本に繋がる道路を爆破し遮断せよ。と」
「わかりました。失礼します」
鴨井は赤川に一礼し、静かに部屋を出た。
「まもなく、新たな時代が来る」
赤川は誰もいない部屋で静かに語り、再び新しい煙草に火をつけた。




