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プロローグ
薄暗く、ひんやりとした湿気が肌——いや、全身の皮膚感覚を包んでいた。
蓮が最後に記憶していたのは、深夜のオフィスで心臓を抉られるような激痛に襲われ、デスクに突っ伏した瞬間だった。次に意識が覚醒したとき、視界は真っ暗で、手足の感覚は完全に消失していた。
(動けない……いや、違うな。骨がないのか?)
思考は驚くほど冷静だった。蓮は自身の変化を確かめるように、内に向かって意識を集中させる。手足の代わりにあったのは、弾力のある、粘性を持った肉体。地面の凹凸が、体表を通じてダイレクトに伝ってくる。泥の塊になったような感覚だが、それよりも遥かに滑らかで、瑞々しい。
ゆっくりと力を込めると、体が「ずむり」と前方に這い出た。
それは、かつてファンタジーゲームで見た、最弱の魔物——スライムそのものの動きだった。




