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55.バカップル

途中でバート視点に変わります。


メリッサがクッキーを配り始めるとバートが

「ガオナー嬢、このクッキーはなぜこんなに大きいので?」

「皆訓練してたらお腹すくでしょう?あんな小さなクッキーじゃ食べた気しなくない?」

「確かに。少し食べると余計にお腹が空くんですよね」

「でしょう?だから大きくしてみた」

にっこり笑う。とすかさずシオンに手で顔を隠された。


「その顔は見せてはいけない」

「どうして?」

「バートを見てみろ」

顔を覆われていた手が少し開く。するとバートが赤くなった顔を手で隠しているところだった。

「あらあ」

「あらあ。じゃなくて、レイはもっと自覚を持とう」

自覚を持てと言われても、バートは私が殿下だったことを知っているのに何故・・・。


「レイ様あとはシュバリエ卿の分です」

メリッサがハートクッキーを持ってきてくれたので

「はい。シオンはこれね」

「・・・これは」

「シオンのはハート形にしたの。可愛いでしょう。はい、あーん」

クッキーを差し出した瞬間、顔を真っ赤にして固まるシオン。

「シオン?」

バクリとクッキーを齧ったシオンに

「・・・かわいい」

と抱きしめられたのだが何故に。

「シュバリエ卿ご愁傷さまです」

となぜかメリッサがお悔やみを申し上げていたのだけれど。




そんなやり取りを見ていた騎士たちは

「何あれ」

「あれ誰」

「本当に隊長か?」

「っていうか可愛すぎない?」

「隊長ずるくない?」

「独り身には目に毒なんですけど」

「いちゃいちゃすんな」


と口々に不満を口にしていたが最終的には

「「「「爆発しろ」」」」

と意見が一致していた。



そしてクッキーの後のスポーツドリンクは好評だった。

「これ手っ取り早く、体から失われたものが補えるから訓練中は飲んだ方がいいと思う」

と助言し、スポーツドリンクが騎士団へと常備されることとなった。




◇◇◇


何なの?

今まで殿下だったはずのガオナー嬢。どうして令嬢姿になったらあんなに可愛いんだ。


隊長を慕う令嬢達を、うまく躱しているあたりはさすが殿下だっただけはある。

しかも撃退方法が、『隊長といちゃつく』なのだからまともに取り合う気が無くなるというものだ。


容姿を最大限に生かした天然麗し令嬢。

指輪を騎士が付けるなど言語道断だと言いたげな令嬢に対して、『固い素材でできている』と素っ頓狂な答えを叩き出し隊長といちゃつきだした時には吹き出しそうになったぞ。

何の違和感も無くそんなことをしだすもんだから、ご令嬢も見てるのが馬鹿らしくなったのだろう。

バカップルと捨て台詞を吐いて去って行った。

俺は思った。バカップルとは誰も傷つけずに諦めさせるいい方法なのだと。


その後のクッキーのやり取りなんか見れたものでは無かった。

何あの隊長。

俺の知ってる隊長じゃない。

いや最近片鱗はあったけども。膝の上に乗せてたの見たりしたけども!


可愛い可愛い言ってずっと抱きしめて何してるの?訓練場で。

確かに!可愛い!

殿下だったことを知っていてもあの笑顔を向けられると固まってしまうほどには可愛いし美しいと思ってはいる。

だが、周りを見てみろ!皆ぽかんとしているだろう!

口々に愚痴が出てくるのも仕方ない話だ。


爆発しろ!

俺もそう思う。


ガオナー嬢が帰った後、隊長に

「隊長もあんなに可愛い可愛い言うんですねえ」

と言ってみた。

「だってかわいいだろう!」

と開き直っている。

「それにレイが倒れた時俺は決めた。思ったことは思ったときに口にすると」

そんなキリッとカッコイイ顔で言われても。

確かにガオナー嬢が倒れた後の隊長は酷かったからな。


「そんなに可愛くて離れがたいなら、侯爵家へ迎えてしまえばいいじゃないですか」

と言うと、隊長はハッとした顔で

「それだ!!」

と駆けて行った。


俺は思った。ガオナー嬢が絡むと隊長は別人になる。



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