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29.そっくりだ


「シオン、ダメだよ!女性が着飾ったら褒めないと!」

と殿下が言う。どこにいたのだろうか。


「・・・その、綺麗だ・・・」

とやっとの思いで口にする。

こんな見られた状態で急に褒めろと言われても!

いや、もちろん心の底から綺麗だとは思っている。

綺麗すぎて声にならなかっただけだ。


「ありがとう。シオンもかっこいいよ」

とローレライ嬢もさらりと褒めてくれた。


「ああ!もう!シオンはもっと褒めないと!

俺の色が良く似合ってる。会場で一番綺麗なのはきっと君だ!

ぐらい言わないと!」

そうか。そうなのか?確かに女性は褒めるべしと教えられてはいるが。

「ライ、それシオンが言うと思う?」

「思わない」

「そうでしょう。言ってたらそれはもうシオンじゃないよね」

と2人で笑っているが、俺のイメージ何なの?


「まあまあ。シオンはそのままでいいよ。さあ行きましょうか」

とローレライ嬢。

腑に落ちないものの、手を差し出す。


「父様が無理言ってごめんね。エスコート引き受けてくれてありがとう」

「いや光栄だ」

「シオンは女性が苦手?」

「あー。側は美しくても中身が伴ってない令嬢を見すぎている」

「ああ。騎士は仲裁することが多いもんね。幻滅するよねー」

とローレライ嬢は笑っている。

「でも、私をエスコートしちゃったら婚約者だと思われちゃうよね」

といたずらっぽく笑った。


伯爵そっくりだ。

殿下の時とは違って、殿下よりやや垂れ気味の目を生かしたメイクをしているローレライ嬢は色気のあるガオナー伯爵にそっくりだった。

デビュタントしたばかりなのにこの色気は危険だ。

しかも、目のやり場に困る。


「シオン、別に減るものじゃないし見てもいいよ」

「・・・っ!何を」

「だって目のやり場に困ってるんでしょう?焦点が定まってない」

バレてた。

だって、殿下の時には無い豊かなものがそこにあるんだ。困るだろう?

「ライも言ってたし、いつも無いからねぇ」

と笑う。

「それは紳士の振る舞いではない」

「まあ見たかったらいつでも見ていいよ」

とまた揶揄われている。伯爵そっくりだ!


「私は病弱な令嬢だから、そのフォローよろしくね」

「ああ。任せてくれ」


俺は忘れていた。

『幻の令嬢』をエスコートするということがどういうことなのかを。




「シュバリエ侯爵令息シオン様、ガオナー伯爵令嬢ローレライ様」





会場入りした瞬間、静寂に包まれ会場中がこちらを見ているという初めての感覚。

突き刺さる視線。

会場中を魅了するということはこういう事なのだと。

それを感じても嫋やかに微笑むローレライ嬢は流石だ。

一方の俺は、何も感じてませんよと表情を取り繕うのに必死だ。


会場中の視線を攫いながら、ファーストダンスを踊る。

ダンスを踊るの自体久々だ。


「シオン、ダンス上手いのね」

「一応嫡男だからな」


嘘だ。

本当は母上に練習に付き合ってもらった。


そう言うローレライ嬢もさすがの腕前だ。

普通は男性がリードし体を預けてもらい支えるものだが、ローレライ嬢の場合体幹が良いのもあって支えてないみたいだ。

もうちょっと体を預けて欲しかったと思わなくも無かった。



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