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 夢人 saki  1


ああ今日もやってくる、頭を鈍器で殴られているような鋭い鋭い痛みが、


何も見えない真黒な世界が広がるだけの、夢と一緒に。














ふと、浮かび上がった意識の中で、体中が痺れた様な感覚と吐き気、むさ苦しい息がし難い様な感覚に襲われる。


うすらと開いた視界は当然ながら見慣れた天井、そして部屋の中、枕元に置いておいた目覚まし時計の針はやはり3時を指していて、それほど熱いわけでもないのに汗だくになったTシャツを脱ぎ、寝る前に準備しておいた新しいシャツを被る。


こんな行動を決まって3時に行っているのは、決して故意的なものじゃない。


何故か起きてしまうんだ、一週間と少し程前から欠かさず毎日毎日毎日。


寝苦しいわけでも、目覚ましをわざわざセットしているわけでもないのに。


アロマのお香を焚いてみても、リラックス効果のあるCDを流したまま眠っていても、何も効果なし、逆に日を追うごとに酷くなっていっている気がする。


ふらつく情けない足取りで通学するのも、もう流石にきつかった。




「おっは…」


「ねぇ、また駄目だったんだけど」




遅刻ギリギリにいつも通り、前の扉から入ってきて一番後ろの席へ座り項垂れている私のもとへすぐやってきた小さな友人、桃が元気よく挨拶を投げかけるのを阻み文句を投げ返す。


そう来ると予想していなかったらしい、言葉に詰まり、う、と固まる、


…いや違う、私の顔を見て現在進行形で固まってんのかなこの子は。




「えぇ!?かなり重症じゃないのそれ、ってか、さきの眼…っ…ふふ」


「酷いなぁ!人がすっごく悩んでいるのに!」




眼の下に出来てしまったクマを指さされスイッチが入ったように大爆笑、いらっときたのは仕方が無い。


一連の不眠症?の解消法は今、目の前にいる友人が全て考案してくれたもので、睡眠不足により苛立っていたのもあり少し嫌味っぽく腕を組み眉間にしわを寄せる。


鞄を開き差し出したCDを受け取りながら、これ結構人気でテレビで取り上げられてるのになぁ…と零す声が聞こえるが、効かないんだから仕方が無いでしょう、個人差があります、って書いてあるでしょと返す。


気を抜いていると心労で寝てしまいそうになるのを耐えるために購買で買ったばかりの冷えたブラックコ-ヒ-を煽る、


う、…まずっ、苦。




「無理して嫌いなもの飲むと身体に悪いよ~さきちゃん」




高い声、なんでだろう、口の中が一層苦くなった。


馴れ馴れしく頬に触ってくる白く長い指、冷静に缶を置いてから思いっきり腹部に裏拳を噛ましてあげるが異様な堅さの何かに当たる、いや、暖かいから腹筋か。


痛い痛い、危ないよと笑い余裕そうに当たった部位らしいお腹をさする。


…本当に高校生かよこいつ、師匠並みじゃん。


顔をひきつらせながら上を向くと、やはり予想通りの長身の影。




「…何か用?」


「うわ、さきちゃんが冷たいよ、ってか怖いよ!」




おいこら顔に向かって指さすな失礼な、親に教わらなかったかおバカ。


桃と同じ部位について言っているのは良く分かったから、ああもう見ないでと両手で目を塞ぐ。


帰国子女のイギリスとのハ-フらしい、腹筋ムキムキ男藤田、朝からハイテンションで聴いていてとても疲れる声の持ち主はコイツ以外誰もいない。


目の前に飛んできたハエや蚊を叩き落とすように指を平手打ちしてやる、フルスイングで。


敵意識剥き出しで睨み上げているが相変わらずの能天気な笑顔、金髪の無駄に長い髪が少し動くたびにふっわふわと揺れる、うわそれすら嫌味ったらしい。




「藤田くん、あのさ、さきが不眠で悩んでるんだよね、何か解消法無い?」


「なんでコイツに聴くのよ」


「あ、だからか、可哀そうに…」




う~ん、と真剣に考え出す藤田に邪魔だからどっかいけ、何て言えず、早く考えなさいよと急かす。


あともう少しで先生が来る時間だ。




「あ、ネットで流行ってるのなら1個あるよ!」


「…ネットぉ?」



胡散臭い、と思わず顔をあからさまに歪ませてしまった。










20110822





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