夢人 saki 2
何でなのか解らないけれど嘘っぽいと感じるあの笑顔がとにかく嫌いだった、だから藤田が言ってる事なんて信用したくはないのが本心だ。
……まぁ、今回だけは例外にしてあげるわ。
圏外設定したばかりの携帯を握り直し、ふっと短く息を吐く。
どうせネットの噂、信じ切っている訳じゃないんだから、どうせ…無理に決まってるわ。
メモしておいた番号10ケタ、異様に多いと感じる数字をひとつひとつ確認しながら押していく。
「…5、89っと」
すぐ寝られるように暗くして置いた部屋の中、明るいパネルの光にはちゃんとメモ通りの数字、…試しだからね。
躊躇いがちの指をスライドさせて…発信。
「…」
……ぷるるるるる、ぷるるるるるる…
少し間をおいて直ぐに、絶対に鳴るはずの無い機械的な音が部屋に響き渡る。
画面には黒縁の圏外の文字が浮かんだままで点滅する数字がうごめく。
眠かった霧かかった脳内がすと晴れ、真黒な空間の中に浮き出た電子機器、なんでだろうか、
「…気持ち悪」
「何か言ったか」
「!!?」
不意に聞こえた声に顔を上げる、慌てて枕元のスタンドライトを付けて部屋を見渡すが誰もいない、そりゃあそうだ、独り暮らしだしテレビも付けていないし。
「お~い、聴いてる?…んだ、痛電かよ」
ちっ…と舌打ち、聴き間違いない、電話から聞こえてきている。
スピ-カ-フォン設定を解除し慌てて握り直して耳に当て待って、と思ったよりも小さくなった声は何とか届いたようだ、ぷつん、と切るような音は聞こえない。
「も……もしもし…」
「…貘屋日本本部の新嘗だ、ご用件は?」
「ば、くや」
「…痛電か」
「だから、違うわよ!!」
少し高めな男の人声、ばくや、当たると思わなかったくじで1等賞を取るときっとこんな感じにドキドキするんだろうな、なんて他人事のようにぽーっと考えながら、溢れた生唾を呑み下す。
藤田が言ってた通りの名前に少し動揺しつつも咳払いする。
カウンセラ-っぽくない口調からは悩み解消なんてこれっぽちもしてくれる気がしないのが不安要素だが…。
「え、ねぇ…本当に相談に乗ってくれるの?」
「あ~…まぁ気にすんな、で、あんたの名前は?」
いやいや、そこかなり重要なんですけれど、濁さないでちゃんと答えてよ、
そう突っ込もうとするがちょいちょい中断していたら一向に話しが進まない、クレ-ム後で入れてやる、と考えながら渋々答える。
「…嘉川さき」
「10分待ってから寝ろ、直ぐ行く」
「は?何処に?」
「夢の中、だ」
ぷつん、つー…つー…つー…
「夢の…中?」
ナニそれ、頭の中大丈夫?
眠ったら家に来るってこと?うっわ、本格的に気持ち悪い!!!
変な寒気に襲われ、玄関の鍵とチェ-ンをしっかり閉まっていることを確認、ベランダの鍵もキッチンの窓の鍵もきっちり閉めた。
その数分の間に思ったが、名前しか知らないんだし、来れる訳無いよね。
夢の中で待ち合わせなんて、なんか現実超逃避したロマンチストみたいだ。
ちらりと見えた壁の時計はあと10分と言われた時間まで2分、
「…まさか、ねえ」
かちりかちり、とリズム良く時間を刻む時計を見つめたままで、ベッドへと横たわる。
鼓動とシンクして響く音は高ぶっていた心に落ち着きを運んできて、
声だけはかっこよかったなぁ、と目を瞑り頭の中で繰り返し繰り返し、電話越しの声を思い返していた。
20110825




