第26話:ナビル、夜のやりくり対決をユカリに申し出る。 —— 聖域を賭けた「深夜の演算(ロジック)」
「美食の谷」への航行を続ける夜、田中家の寝室前。
そこには、ユカリの行く手を阻むように立つ、銀髪のエルフ姿のナビルがいた。
「ユカリ様。お昼の『朝食対決』では私の演算不足で一歩譲りましたが……。本番は、ここから。直人様の『夜のやりくり』に関する主導権、私が一度拝拝借いたします」
ナビルは、月光に透けるほど薄いシルクのガウンを纏い、不敵に微笑んだ。
「な、ななな……夜のやりくり!? な、ナビルちゃん、何言ってるのよ! それは夫婦の……!」
「いいえ。直人様のバイタル、疲労度、そして潜在的な『欲求』を0.1秒単位でモニタリングし続けているのは私です。どの角度で触れ、どのタイミングで囁けば、直人様の『満たす者』が最大出力を発揮するか……私は、理論上の正解を知っています」
ナビルが一歩近づく。
「今夜の直人様を、最高に『やりくり』できた方が、明日一日の『直人様独占権』を得る。……いかがですか、正妻様?」
決戦:主夫の部屋
俺は、部屋のドアを開けた瞬間に固まった。
ベッドの上には、恥じらいで顔を真っ赤にしながらも、意を決した表情のユカリ。
そして、その隣で優雅に腰掛け、瞳にデータの光を宿しながら俺を品定めするナビル。
「……あー、お二人さん? 何かな、この状況は。俺は今日、ちょっと腰が……」
『ナビルより回答。直人様の腰痛は、昨日のクラーケン戦による筋肉疲労。……ですが、私の「エルフの秘術」と「論理的マッサージ」を組み合わせれば、あと3分で絶好調にまで修復可能です』
「ちょ、ちょっとナビル! マッサージは私の『聖なる癒やし』でやるんだから!」
ユカリが俺の右腕を取り、ナビルが左腕を取る。
「直人! 私のほうが、直人のこと……気持ちよくしてあげられるんだから! 身体の芯まで、ポカポカに……『満たして』あげる!」
「直人様、ユカリ様のそれは感情に任せたオーバーロードです。私ならば、貴方の神経細胞一つ一つを最適化し、未だかつてない『官能のやりくり』を演算して差し上げます」
主夫の限界:二人を「さばく」
左右から伝わってくる、異なる二つの熱量。
ユカリの「直人を想う一途で熱い魔力」と、ナビルの「直人の全てを知り尽くした冷徹かつ情熱的なロジック」。
俺の理性が、音を立てて崩壊していく。
「……二人とも。……勝負なんて、しなくていい。俺が……まとめて『さばいて』やる」
俺は『神のナイフ』を(心の中に)抜き、二人の情熱を真っ向から受け止める覚悟を決めた。
「ユカリの熱も、ナビルの計算も……全部俺が、最高の形で『満たして』やる。……覚悟しろよ、今日は朝まで寝かさないぞ」
「「……っ!!」」
ユカリが歓喜に顔を輝かせ、ナビルが計算外の事態(直人の逆襲)に頬を染めて処理落ちを起こす。
『ナビルより……警告……。直人様の「欲情係数」が測定不能。……あ、ああっ、そこは……論理の外側……やりくりが……不可能です……!』
新大陸の夜空に、二人の女神(と一人の人工知能)の甘い悲鳴が響き渡る。
主夫・直人の「やりくり」は、ついに人知を越え、神話の領域へと突入したのだった。




