表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/40

第1話:死んだと思ったら、隣に嫁がいた件


「直人さん! 直人さん、しっかりして!」

耳元で響く、聞き慣れた愛する妻の声。

けれど、俺の意識は泥のように重かった。連日の深夜残業、休日出勤。心臓が嫌な音を立てたのを最後に、俺の記憶は途切れている。

(ああ、俺……死んだんだな……。ユカリ、苦労かけてごめんな……)

最後にそんなことを思いながら、俺の意識は真っ白な光に包まれた。

……はずだった。

「ちょっと、いつまで寝てるのよ。会社じゃないんだから、いい加減起きて」

「……え?」

頬をペシペシと叩かれ、俺は跳ね起きた。

そこは会社でも病院でもない。大理石のような床が広がり、天高くそびえる柱が並ぶ、幻想的な神殿のような場所だった。

そして目の前には、パジャマ姿で仁王立ちする妻・ユカリの姿。

「ユカリ!? なんでお前がここに……。まさか、お前まで死んだのか?」

「あんたが玄関で倒れるからよ。慌てて駆け寄ったら、急に目の前が真っ白になって……気づいたらここにいたの」

困惑する俺たちの前に、ふわりと光が集まっていく。

そこに現れたのは、羽を生やした天使のような美青年だった。

「お目覚めですね。田中直人様、そしてユカリ様」

「誰だ、お前?」

「私は神の使いです。不慮の事故で命を落としたあなた方に、新たな人生――異世界への転生を提案しに来ました」

異世界転生。

ネット小説でよく見るあの展開か。正直、ブラック企業に戻らなくて済むなら、願ってもない話だ。しかも夫婦一緒だなんて、神様も粋なことをしてくれる。

「あの、転生したらやっぱり『チート能力』とか貰えるんですか?」

「ええ。あなた方の魂の特性に合わせた『ギフト』を授けましょう。さあ、光の門をくぐってください。その先が、新世界ゼルディアです」

ユカリと顔を見合わせ、俺たちは手を繋いだ。

「……行こうか、ユカリ」

「そうね。あんた、今度はちゃんと休みを取りなさいよ?」

こうして俺たちは、希望に胸を膨らませて光の中へと飛び込んだ。

――が。

その数分後。俺たちは王宮の玉座の間で、ステータス画面を見つめて絶句することになる。

「【田中直人】レベル1。スキル……『やりくり上手』? 『根性』? 以上?」

「はい。大変……生活に役立ちそうな能力ですね」

神官が同情の視線を向けてくる。いや、いいんだ。これでも頑張れば……。

だが、神官の視線がユカリに移った瞬間、その場にいた全員の顔が凍りついた。

「ひ、ひぃぃ……!? 【田中ユカリ】レベル99! HP99999、MP無限大!? スキルは『神威』に『創造』に『破壊』……職業は……『女神の化身』だとぉ!?」

「なによそれ、怖いんだけど」

ユカリが怪訝そうに眉をひそめた瞬間、王様を含むその場の全員が、まるで重力に叩きつけられたように床にひれ伏した。

「おお……伝説の“白き神嫁”よ! どうか、我が国に慈悲を!」

「だから誰が嫁よ! 嫁だけど!」

俺は、あまりの威圧感に震える王様の横で、そっと自分のステータス画面を閉じた。

どうやら、俺の異世界チートライフは、開始5分で「最強の嫁に養ってもらう生活」へとジョブチェンジしたらしい。

「ねえ直人、なんか外に魔物がいるみたい。夕飯の買い物ついでにちょっと片付けてくるわね」

「あ、ああ……。頼むわ、ユカリ」

こうして、俺たちのとんでもない異世界生活が幕を開けたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ