不確かなもの。
「よく来たね?」
「今回はやはり衝突の件ですか?」
「ああ、そろそろ起きそうだよ」
貴族と庶民の衝突。
サファイアの思惑通り。
「しかし、どうも雲行きが怪しい」
王子は視線を逸らさない。
「どう言うことですか?」
「起きるのは貴族と庶民ではなさそうだよ」
「どう言うことだ?ヴィンセント」
王子は人差し指を立てて告げる。
「王族と庶民だよ」
「な!?」
やはり………
想定はしていた。
もしあの調子で貴族と庶民を緊迫させていたらこうなる可能性もありえた。
貴族に不満持つ庶民。
だが、その貴族の支配者は王族。
つまり自然とヘイトは王族に行く。
「だけど、彼女がその可能性を考えないとは思えない」
「だな………」
王族のと庶民の衝突。
それが意味するもの。
「そこで、この新聞さ」
「これは、今日の新聞か?」
「ああ、これを見てくれ」
そこには大きく書かれている記事があった。
____王族は貴族からもそして、庶民からも搾取する気だ。
王族は徴収をあげる決断をしたそれは王族の懐を潤わすためだ。
そう書かれていた。
「そう繋がるのですね………厄介極まりない話です………」
これでは、いくら否定しても疑いははれないだろう。
「彼女は初めから彼の模倣なんてしてなかったと言うことか……」
「ええ、宣戦布告自体がフェイクだったと言うことですね」
空気は重く張り詰める。
事態はもう目の前だ回避はできない。
「彼女の勝ちということになるね」
今のままではそうなる可能性が高い。
王族への不満を爆発させて王族に庶民を対処させる。
それが彼女の真の狙い。
そうなればおのずと庶民からも貴族からも批判の声は上がる。
しかし、対処しないわけにもいかない。
「八方塞がりというわけか………」
「そういうことになりますね」
これは政治の問題ではない。
正解はない。
「なあ、リア、庶民に還元としてお金を一定額配布するとかしたらどうだ?」
「多少は治ると思います。しかし………」
「解決にはならない。だろ?」
「はい」
これは感情問題だ。
どこかで鬱憤を晴らさなければ同じだ。
「はあ、こういう時はお酒を飲んで忘れたいものだな」
「ヴァン、無茶言わないでください…………お酒ですか」
疑いを晴らす。
そのためにできること。
それは簡単にいうと財源の有効活用方法を示すこと。
だが、それは庶民の溜まった不満を解消はできないだろう。
しかし、もしその方法が庶民も納得して、尚且つ喜ぶことなら?
「王子、提案があります」
「ふふ、何かいい案が出たのだね?」
「それは庶民次第ですが、おそらくは」
王子は口元がニヤけていた。
手は楽しみなのか過敏に動いていた。
「さあ、なにかな?」
「新種のお酒を作りましょう」
「え?お酒?」
「ええ」
王子は予想外の答えに戸惑っているのか口が開きっぱなしだ。
「リア、お酒は飲みたいが現実逃避はいけないぞ?」
あ、割と本気で心配されている………
「ち、違います。お酒を開発。そして庶民の人たちに振る舞うのです」
「コストも時間もかかるよ?」
「はい。分かっています」
「なら、どうしろと?」
「庶民に伝えるのですよ。今はそのお金を庶民に還元すべくお酒を開発していると。そしてそれが完成した時には皆に振る舞うと」
「庶民は信じるかい?」
普通なら信じないだろう。
しかし、振る舞うと確約することで庶民は思う。
_____本当かもしれない。
これは彼のやり方と逆だ。
彼は人の心を信じてない。
だがこれは人の深層心理。
それを信じるやり方。
不確かでとても確実性はない。
「ですが、やる価値はあります」
「いいね。とても君らしい。今すぐ準備をしよう」
そういうと王子は部屋から去っていく。
「リアらしいな?」
ヴァンは微笑みながらこちらを見てくる。
「楽しくていい案でしたよね?」
「ああ、とっても」
握られた手からは確かにヴァンの体温を感じる。
この温かい人という生物を信じたい。
それから数週間後。
王都で発表があった。
その結果庶民はその報告の掌を返して喜んだ。
しかし、疑いは晴れてない。
あくまでいい報告によって一時的に奥にしまわれただけだ。
それは奥底からいつまでもこちらの様子を窺っている。
「ふふ、なんとも俗物らしいやり方ですね」
彼女は笑う。
滑稽だと。
「いいでしょうか。なら、試させてもらいましょう」
彼女は次の新聞の記事を決めていた。
彼女は書き綴る。
____契約結婚の証拠見つかる!?
大きくそう書いた。
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