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第37回

この物語は、フィクションです。登場する団体や個人は、実在しません。

   また、登場する団体や個人は、実在の物と関係ありません。

この作品の著作権は、相良 凌が保有しており、このサイトの利用者に、何らの権利も与えるものでは、ありません。(要するに、読むだけにして!ということです)


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  闇探偵 西園寺 美園2(37)  相良 凌      


   3 解けゆく謎(15)


「お暇を頂きたく存じます・・・」

 小夜子の部屋に入って、富士田奈々子は、開口一番に言った。小夜子は、ゆっくり息を吐くと、

「分かりました。長い間のご奉公、心より感謝いたします・・・」

 作り笑顔の微笑みを満面に湛え、応じた。

 二人の会話は、それだけで、あった。

 キャリーケース持って、富士田奈々子は、屋敷をあとにすると、夜の油壺のバス停を目指した。

 最終のバスには、まだ間に合う。

 車内の蛍光灯の光を、生暖かく漏らしながら、バスがバス停にやってきた。バスの車体色である赤と白のコントラストが、宵闇で目立たなくなっている。

 富士田奈々子は、キャリーケースを持ち上げると、後ろの乗車口からバスに乗り込み、整理券をとって、後ろの席に座った。

 バスの車内は、閑散としており、乗っているのは、運転手と富士田奈々子だけである。

 蛍光灯の生暖かい光が、薄暗い影を作る。

 彼女は、有栖川家当主、有栖川只仁が、なくなる前の事を思い出していた。

 黒光りした肌に汗が輝く只仁が、

「奈々子! 今日も凄いじゃないか!」

 感嘆の声をあげた。ベッド上で起き上がった富士田奈々子が応じる。

「それほどでも・・・」

「今日は、奈々子にプレゼントだ!」

 と、言って、只仁は、全裸でベッドから立ち上がると、書斎の机の引き出しから、大きめの封筒を出した。

 その光景を見た富士田奈々子が尋ねる。

「プレゼントって、一体何ですか?」

 その、大きめの封筒を富士田奈々子に渡す只仁。

「その封筒の中身見てごらん」

 と、只仁が言う。

 富士田奈々子は、封筒の中に入っている文書を手にとって見る。

「遺言書?!」

「わしが隠した遺産を一番早く見つけたものが、遺産を手に入れられる! 君へのプレゼントだ!」

 笑顔で言う只仁。

 バスが、急停車し、富士田奈々子は、現実へ引き戻された。


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