↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第三話 実力行使

面白かったらいいねとブックマークお願いします

「うわぁー広〜い!」


「なんか見た事ない機械がいっぱいあるぞ。本当に身体測定なんだよな?」


「観測しずらい能力とかもあるからそれの為じゃない?私とかその部類だし」


垣根、リリ、美晴の三人は、別館の測定室に入っていた。

測定室という名前から病院の様な設備を想像していた垣根だったが、予想は大きく外れた。


広さは、視力一点.五の垣根が端っこの壁が微かに見える程度で、そこで何かをしている人間はよく見えない広さだ。白と黒の壁で覆われた広い空間で仰々しい機材が多く存在している。

六階の吹き抜けになっており、どうやら階層ごとに別の国々で検査をしているらしい。


「そういえば美晴の能力は何系統?私と真也は『人体系統』」


「私は『物理系統』だからあっちだ。じゃあ測定行ってくるね!また教室で」


系統事に測定する場所が違うのか、美晴は垣根達とは違う方向へ歩き出す。

垣根とリリはお互いに歩き、測定待ちの列に並ぶ。


「真也がどれくらい強くなってるか楽しみだな〜」


「去年より遥かに出力上がってるからな。強能力者くらいにはなってて欲しいけど...」


能力者にはランクが存在している。

能力系統、出力数値、能力の特異性、様々な視点から『弱能力者、中能力者、強能力者、特異能力者』に振り分けられる。中学の垣根は中能力者に振り分けられていた。


「リリは特異能力者確定だろ?羨ましいぜ」


「分かんないよ〜?中学と違って各国から能力者が集められてるから、私と同系統で出力が倍の人とか居るかもしれないし」


「そんな奴が居るかね」


そうこう話していると、二人の番がやって来る。リリが一歩前に出て測定を開始する。


「一年二組の小桜リリです。お願いしまーす」


気の抜けた自己紹介で観測員が名簿にチェックをつけ、能力測定が始まる。

タコ足の様な電極を頭、首、手首に付け、流れてくる脳波や様々な情報を読み取っていき、観測員が過去の測定結果を見ながらリリへ質問を開始する。


「具体的な能力は?」


「他人の治療ができます。メンタル的な治療は出来ませんが、大小問わず外傷なら全て治せます。」


チラチラと脳波と過去の測定結果を見比べ、測定員が当然のように話す。


「ま、コレは特異能力者だろう。もう行っていいぞ」


「はーい」


周りで見ていた他の生徒が特異能力者と宣言されたリリを見てザワザワと騒ぎ始める。


「おい、特異能力者だってよ」


「一年で特異能力者って、確か学園の歴史の中でも一昨年のアメリカとドイツだけっていう噂じゃなかったか?」


「顔ちっちゃ〜!可愛い〜」


「胸も意外と大きいぞ」


幼なじみが尊敬の眼差しを向けられ、誇らしい気になる垣根だったが、不躾な言葉が聞こえた方向へ目付きの悪い瞳をギロリと向けると周囲は少し静かになった。


ガルル、と威嚇するように睨んでいるとリリに頭を軽くチョップされる。


「こら、大人しくしなさい。次真也だよ、並んでるんだから早く行きなさい」


「へいへい、行ってくるよ母さん」


「アンタを産んだ覚えはない」


軽い冗談を言い合い垣根は測定を開始する。


「一年二組の垣根 真也です」


「あぁ、それでは....垣根?垣根真也か。ちょっと待ってろ」


「??」


垣根が名乗った瞬間、測定員がインカムで何処かとやり取りを始める。

チラチラと垣根を見てはまたインカムへ何かを報告していると、測定員が垣根へ告げる。


「上からのお達しだ。測定しなくていいぞ」


「は?」


「君の今朝の行動が認められた。君は特異能力者だ」


今朝の行動。

カメレオンの魔族を倒したことが何故特異能力者へ分類されることに繋がるのか。疑問が消えない垣根を他所に、「待った!」とをかけるのはそれを聞いていた一人の男だった。


「ちょいちょい!!なんで測定もせずに特異能力者なんだよ!!」


虎を彷彿とさせる金と黒の頭髪に、やはり猛獣のような鋭い目付きのいかにも不良といった風貌だが、ユグドラシル学園はかなり高偏差値の高校であるため、この生徒はオシャレの一環でこの様な見た見になっているだけで、不良行為は一切していないのだろう。

そんな少年が垣根へ詰め寄る。


「おいコラ一年。何かのコネでも使ったのか?測定もせずに特異能力者とかふざけてんじゃねぇよ」


「いきなり絡んで来てなんだ?口振りから二、三年だろうけど、八つ当たりはやめてくれ、俺も困惑している」


垣根は知らないが、ネクタイの色が赤いことから垣根に絡んだ少年は三年ということが分かるが、垣根がそれを知らないことをこの少年は知らない。

よって、少年から見た垣根は『何故か測定もせずに特異能力者へ分類され、あまつさえ先輩である自分に敬語も使わない一年』という事になった。


「マジで頭来るぜ。おい、学園支給のスマホはあるな?今から決闘申請を送るから承認しやがれ」


「はぁ?なんで俺が。コッチは入学初日で他にやることがあるんだ。受ける義理なんてないね」


垣根の言葉を聞いた少年は、垣根ではなく垣根の隣に居るリリへと視線を向ける。まるで群れの中から子供を狙う肉食獣の様に。


「テメェの連れ、いい面してるなぁ」


垣根ではなく、リリへ危害を加える可能性を孕んだ言葉。

先述の通り、ユグドラシル学園は高偏差値の学校であり、この少年が言ったセリフはただの挑発、脅しに過ぎない。


特殊能力を使う事を許可されているこの学校は罰則が非常に重く、在校生が他者へ意図的に危害を加えた場合退学や懲役で済まない場合がある。


それを加味しても。

その言葉が行動する気のない言葉だとしても。

垣根にはそれが許せなかった。

その怒りを垣根は隠そうともせず、周囲の人間も垣根の雰囲気が変わったことを察知した。


「分かった。受けてやる」


「ちょっと真也!」


「そうじゃねぇとな。化けの皮剥いでやるぜ」


リリの制止を振り切り、スマホに入った通知から決闘を承認する。

開始時刻は十分後。


周囲は測定もせずに特異能力者となった垣根の能力が見れると盛り上がっている。

その盛り上がりは垣根達のエリアだけじゃなく、上の階層の他国の生徒にまで伝播する。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「もぉ〜ほんと馬鹿!」


「うるさいな、もう何回も聞いたよ」


「言い足りないから何回も言ってるの!」


決闘の控え室で垣根とリリは話す。

話すと言ってもひたすらリリからの有難いお言葉(罵倒)を言われているだけだが、垣根は首や手首をコキコキと鳴らし準備運動をする。


「別に殺し合いじゃない。ダウンの総秒数が十秒超えるか、ステージから出すか、意識を奪うか、参ったの一言で終わる模擬戦だ」


「そういう事じゃない」と睨みを効かしているリリから逃げるように垣根は決闘のステージへ向かう。


レスリングのマット程の広さでステージへ上がる階段が数段。視界を遮るものはなく、ステージを囲むように観客席がある。


「まるでコロッセオだな」


垣根の言葉も観衆の騒音に掻き消される。

正面から先程の少年が垣根と同じステージへ上がり、独り言の様に垣根へ悪態つく。


「ケッ、慣習の奴らも俺より今年入った特異能力者の実力が知りたくて見に来てやがる。こいつが測定もしてないコネ入学って事も知らずによぉ」


「俺が勝ったら俺とリリの前に二度と現れるなよ」


「はっ、当然だよ。それじゃあ始めるぜ」


決闘開始のブザーが鳴ると、少年がステージ端から垣根目掛けて走り出す。


(俺と同じエリアで能力測定していた事から、コイツの能力は人体系統。どんな能力だ?)


垣根が思考している間にも少年はぐんぐんと距離を詰める。その距離が人一人分になった時、少年が垣根へ腕を水平へ振るう。


その腕には黒いブレード状の刃が生えており、その刃が垣根を襲う。すんでの所で躱し刃は空を切る。


「よく避けたな褒めてやるよ。ただし何度も避けれるかぁ?」


ブンブンと腕を振るい垣根を襲う。

当たれば大怪我は免れない。しかし、垣根は避けていた足を止める。


(ハン!諦めやがったか!?やっぱりコネ入学だったか)


その場に立ち尽くしている垣根に少年は飛びかかる。そして止まっている垣根へ刃を振るうも、垣根には当たらない。


「な!?避けた!?」


もう一度止まっている垣根へ刃を振るっても結果は同じ。腕に生えた刃は何も無い虚空をただ虚しく切っている。


それだけではない。

少年が瞬きをした瞬間、垣根の姿が消える。

少年の背後で砂が擦れる音が鳴り、振り返ると垣根は既に拳を握り、殴りかかっている最中だった。


拳は少年の腹部へと直撃し、みぞおちへ入った柔らかく心地良い感触が垣根の拳に伝わる。

少年は膝をつき思考する。急所へ攻撃されても思考を辞めず活路を見出そうとしているのは、やはり最高峰の特殊能力育成期間の三年生だろう。


(俺の攻撃を止まったまま躱す、遮蔽物は無い、俺の背後に一瞬で回る、こんな事ができるのは...?)


「テメェ、『瞬間移動』か?」


状況証拠で垣根の能力にアタリをつける。

それを聞いた垣根はゆっくりと言葉を吐く。


「そんな大層な能力持ってない。....俺の能力は『身体強化』。ただ身体の機能を強くするだけ。空も飛べないし、瞬間移動も出来ない、炎も操れない。言わば普通の人間だ」


「身体強化?....ふざけんな!身体強化の能力者は多い。その能力で動かずに攻撃を避けたり、瞬きの一瞬で背後に回れる訳ねぇだろ!必ず痕跡が残る!アクションの痕跡がな!」


「別に何も特殊なことはしていない。俺は身体強化で目を強化して攻撃を見切り、目にも止まらぬ早さで背後に回っただけ。アンタがそれを認識出来ない速度でな」


懇切丁寧に解説された少年はフラフラと立ち上がり、それでも納得のいかない子供のように言葉を吐く。


「なら、止まっている状態からどうやって避けた?それすらも俺が認識しない速度で避けたってか!?あぁ!?」


「アンタも気付いてるだろ」


「うおぉぉぉぉぉぉぉあああああああああああああああ!!!!!!」


垣根が言い切る前に少年は動く。

その先の言葉を言わせてはならない。

少年は気付いていた。最初こそ避けられていたが、足を止めたあの時、あの瞬間から。


(避けるまでも無く、俺の攻撃を受け切ってたなんて認められるか!当たった感触はあったのに傷一つ付いねぇなんて認められるか!こんな一年に負けるなんて...俺の二年間とこれからの一年は何のために!!!)


少年は渾身の力を使い垣根の首を狙う。

これは決闘。殺しは厳禁だ。当たれば垣根は大怪我では済まず、少年も必要のない重荷を背負う位置への攻撃。

そこに攻撃が来るとわかっていても垣根は動かない。


バギィィン!!!!!!!

ガラスが割れるような破壊音が鳴り響く。

少年が振るう刃は垣根に当たったと同時に空中で粉々に砕け散り、垣根はその場で拳を握る。


「さっきは能力使わずに殴ったが、今回はそうはいかない。加減はしてやる....返してもらうぜリリの安全!!」


グオン!!!

垣根の腕を空気の膜をまとい、その膜を突き破る速度で少年の腹部へ突き刺さる。


呻き声も出せない少年は遥か後方へ吹っ飛び、入場してきた入口扉の横へ衝突する。

壁にヒビが入り、少し埋まる形で少年は気を失っている。


場外KO。

垣根は特に何も言わずその場で振り返り、自分が入って来た入口扉へ歩く。

その数秒の後、試合終了のブザーが鳴ると同時に観客の歓声が垣根の全方位から衝撃波に近いエネルギーを持って沸き上がる。


「すっげぇェ!!!」


「人体系統だろ!?同系統だからモチベ上がるぜー!」


「しかも女の子守る為に決闘したんでしょ?性格も良いじゃん。ちょっと目付き悪いけど」


垣根からは『音』という事しか認識出来ない周囲の興奮は未だ治まらず、やいのやいのと連鎖していく。


その声に特に何をするでもなく、垣根は扉を開け、控え室へ戻る。

そこには備え付けテレビで決闘を見ていたリリがこちらに近付いてくる。


「おー、見てたか?華麗に決めてやっ...どぅわー!いってぇな!何しやがる!?」


「うるさい!!あんな危険な戦い方して!!もし通用しなかったら首チョンパだよ!?馬鹿じゃないの!?ほんとバカ!!雑魚!!!!」


「雑魚って....今勝ってきたんだけど」


控え室に入るなり、いきなり頭をはたかれ、ヒリヒリとした痛みが頭に残しながら「つーか」と垣根はリリへ言葉を並べる。


「あの人の刃が通る訳ないだろ。人間はそんなにヤワじゃない」


「それアンタだけね」


軽く言葉を交わしつつ、垣根はリリへ視線を向ける。

その視線から冗談のような態度を取るべきでないと判断したリリは静かに垣根の言葉を待つ。


「....俺じゃなくてリリに危害が加わるかもしれなかったんだ。逆恨みとかされないよう徹底的に上下関係を付けるしか無かった」


「真也....」


垣根の願い。

異世界から魔族が侵攻してきて以来、色んなものを奪われてきた。

家族、友人、故郷、平穏な生活。


それらの取りこぼした中で唯一残った垣根の大事な宝物。それがリリだった。


リリを守る為、垣根は血反吐を吐く思いで能力開発に望んだ。その結果手に入れた特異能力者という肩書き。

それすらもリリと並ぶため、リリを守るために使う一つのチケットに過ぎない。


(そうだ。もう奪わせない。異世界が侵攻して来て奪われた物を全て取り返す!その為に俺はこの学校へ入ったんだから)


垣根は苦しい特訓の末手に入れた自分の力を噛みしめる。




※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「今年の一年は豊作っぽいな、特能が三人なんて。日本のアイツ....『真也 垣根』。アイツはいい、女を守る為に戦うなんて。是非ともウチのファミリーに加わって欲しい人材だ」


垣根とリリが控え室から出て各々寮の自室へ帰った後、一人の少女が外の夜風を浴びながらスマホを見て呟く。


スマホに写っているのは校内掲示板で、そこには『一年生の新特異能力者華々しくデビュー!!』と、なんとも俗物的な見出しが映し出されてる。


少女のネクタイの色は赤色な事から三年生だということが分かる。

髪は薄暗い茶色の髪を肩ほどまで伸ばし、目鼻はクッキリと凹凸があるシャープなアメリカ人。アメリカ人を体現するかのようにグラマラスな体型でありながら、女性的と言うより少年の様に見えるのは言葉遣いのせいだろう。


「善い奴は大好きだ。人間やっぱり善い行いをしなくちゃな」


アメリカ人の少女は夜空を見上げる。背後に積み重なった魔族の死体を背に少女は笑う。

面白かったらいいねとブックマークお願いします


「小山 美晴」

身長:160

体重:54

好きな物:和食

嫌いなもの:虫、イヤホンから音を漏らす人

趣味:カフェ巡り

能力:「反発吸収」(ショックダウン)中能力者

触れた物の衝撃を和らげる。四十キロ走行以上の自動車レベルの衝撃は和らげれない。

最近の悩み:身長は変わらないのに体重が二キロ増えた



「日比谷 号」(垣根に決闘を申し込んだ少年)

身長:180

体重:77

好きな物:肉、パイナップル

嫌いな物:生野菜、諦めの早い奴

趣味:漫画(特にスポーツ漫画)

能力:「刃体硬化」(ブレードシールド)大能力者

身体を超硬質の物質へ変身させ、ブレード状の刃を生み出す。三年の研究では、理論上は戦車砲に耐えるという結果が出たので、実際に試しデータを提出しようとしている。

最近の悩み:どれだけ努力しても特異能力者へ上がる為の出力水準が足りない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。