第一話 入学
宜しくお願いします
崩壊していく世界の最中、確かに見た。
好きな人の顔。
慕っていた先輩の顔。
完璧超人の顔。
悪友の顔。
好意を持ってくれてた人の顔。
恐らく嫌われていたであろう顔。
守るべき人々の顔。
勇者になるとか、世界の半分が欲しいとか、そんな大層な夢や野望は持っていない。
ただ、自分の周りの人間だけでも、手の届く範囲の人間だけでも守りたかった。
腹部から流れる血はもうどれ程出て行ったか分からない。
身体から熱は消え、時期に意識も消える。
両腕に力は入らず、足は風に任せて揺れるだけ。
そんな状態でも、否、こんな状態だからこそ、少年は誓う。
「俺が....お前を.....助ける.....」
掠れ、消え入りそうな声でも確かに響いた。
その言葉と共に少年の意識は消える。
何の変哲もない世界に現れたイレギュラー。
そのイレギュラーに奪われた全てを取り戻す。
これは再生の物語。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
バリバリバリ!!と平凡な青い空に黒い裂け目が現れ、イタズラに墨を塗りたくったような黒からは、人型、異種型問わず様々な魔族が降り注いだ。
現実世界に異世界が侵攻した日から50年の時が過ぎた。
「くそ、初日から遅刻はありえねぇぞ!」
桜が乱吹く坂道を駆け登るのは、『垣根 真也』。
黒い髪に目付きの悪い目がチャームポイントの普通の高校生。
今日から晴れて高校生なのだが、その入学式に絶賛遅刻寸前である。
『ユグドラシル学園』
異世界が侵攻してから人類が設立した多国籍能力者育成機関。異世界が侵攻した影響か、各個人に特殊能力、超能力が芽生え始めて諸国家はこれの育成に着目。最たる目的は異世界の打倒、及び個人で軍を圧倒する存在の確立。
(背に腹はかえられねぇ!空中なら危険もないはず)
垣根は走る足を動かし、タイミング良く屈む。
膝を伸ばし、勢い良くジャンプの行動を取ると、垣根の身体は有に三メートルは跳躍した。
さらに繰り返し常人ではありえない跳躍を重ね、入学式を行う体育館との距離は縮まる。
空からヒロイン宜しく降ってきた垣根は、校門から少し離れた人がいない所へ着地し、辺りを見渡す。
(よし、何とか間に合った!後はこのまま何食わぬ顔で校門に行けば!)
そう思い校門の方へ身体を向けると1人の少女が立っている。
少し不安そうに辺りを見渡し、見るからに困っていると言った風貌だ。
垣根は少し考えた後、はぁ〜っと、ため息を吐きながら少女へ歩き出す。
「あのー、俺と同じ新入生ですかね?確か校門ならこっちの方にありますけど」
「え?あ、ああ。すみません。校門の場所が分からなくて困っているんじゃないんです。ただ....」
「ただ?」
「学生証はコピー出来なくて困ってたんだよォ!」
「うおゎ!!?」
その言葉と共に少女は、いや、少女だった者は口から何かを射出し垣根の首に巻き付ける。
収縮自在、ピンク色の捕食機関『舌』だった。
少女の顔が一瞬にして霧散し、その面はカメレオンを凶悪にした物へと変わる。シルエットは人のはずなのにあまりにも人間離れしたその見た目はとてつもない拒否感を覚える。
「クククハハ!学生証が無いからどうやって中へ入ろうかと考えていた所なのに、まさかこんな馬鹿が降ってくるとはな」
「なんだこれ!?なんかベトベトしてクセェ!」
「このまま舌で首をへし折り丸呑みした後、お前に成りすまして学園に潜入すれば、俺らの目的達成に近づく!」
意気揚々と垣根を殺した後の計画を話したカメレオンの怪物は、垣根の首に巻き付けた舌を手繰りよそうとカメレオンの怪物が力を込めるも、思いどうりにはならない。
グググッと垣根の身体が少し前進したが、すぐに拮抗状態へ戻る。いや、微々たる差ではあるが、若干垣根の方が優勢だった。
「俺の舌が!?どうなってやがる!」
舌を伸ばし舌足らずな口調でカメレオンの怪物は驚愕する。自分の自慢の舌で獲物の首は折れず、巻き取れないことを。
垣根は気道が狭まり呼吸しにくい状況でも冷静だった。首に回っている舌を右手で掴みそのまま体を捻る。まるで背負い投げの様な体勢で舌を地面へ叩きつけるように投げると、カメレオンの怪物は弓のようにしならせ空中から地面へ叩きつけられる。
「グはっっっ!?」
「ゲホ!ゲホゲホ!!!あぁ、苦しかった〜」
背中から落ちたカメレオンの怪物は呼吸に支障が出ているのか不規則に空気を吸い込もうとするも上手くいっていない。
対照的に垣根は新鮮な空気をたらふく取り込み、カメレオンの怪物へと視線を送り歩き出す。
「いやー、お前が催眠だとか触ったら死ぬみたいな能力が無くて良かった」
「ハッ!?ま、待て!もうこの学園に近付かない!大人しくしてる!だから命だけは!!」
カメレオンの怪物は渾身の土下座の体制をとり、必死の命乞いをする。垣根はその命乞いに対し足を止める。
その一瞬の隙をカメレオンの怪物は見逃さなかった。
「ケッ!馬鹿が!!テメェの顔は覚えたぜゴミカス!!絶対殺してやるからな!」
カメレオンの怪物は景色に溶け込むように消えていく。
姿は見えないが、声が垣根を罵倒し、今後の平穏を壊す宣言をしながら。
垣根はその声には反応せず、動かない。
カメレオンの怪物が話し終え、静寂が支配したかと思えば、垣根は突然何も無い空間へ動く。
ボン!!!!!!!!
巨大な水風船が破裂したような音が鳴り響き、何も無い空間から鮮血とカメレオンの怪物が姿を表す。
「カッ、な、なんで....?」
「見えなくても足音は一瞬聞こえたし、お前がいる場所だけ光の反射が違う」
「お、俺の擬態がァァ...バレ.....る....ナン....」
腹を貫かれたカメレオンの怪物はそのまま力尽きる。貫いた右手を引き抜き、血で濡らした右手を見つめる。
(この力をここまでするのに六年掛かった。ただ一つの目的の為に)
血で濡れる右手を握りしめ、その中に決意や覚悟も握りしめる。
その瞬間。
キーンコーンカーンコーン
「あ」
入学式が始まったチャイムが鳴り響き、垣根は自分の置かれた状況を再認識した。何故自分が校門より離れた場所に居るのか、何故こんな人気のないところで急いでいたのか。
高校入学初日は完全な遅刻からスタートした。
「や、やべぇ!流石に手洗ってからだよな?事情説明したら何とかして貰えねぇかなぁ?」
垣根はダッシュでその場を立ち去り、教師陣へ今回のことを報告し、遅刻を無かったことにして貰おうと画策する。
「......」
その立ち去った垣根の場所へ一人の人間が近付いてくる。
髪は赤く、伸ばした髪を三つ編みにしている。
端正な顔立ちをしており、髪型も相まって男か女か見た目だけでは分からない。
学校指定の制服を着ていることから学園の生徒である事には違いなさそうだが、その人間は垣根が撃破したカメレオンの怪物の死体へ近づき、観察する。
「腹部の1発、凄いな、まるで大砲みたいな穴だ。彼、どんな能力なんだろ」
見た目通り中性的な声が脳内の思考を現実へ落とす。そしてその赤い人間の視線と興味は走っていく垣根へと移されている。
既に垣根だけじゃなく、世界を巻き込んだ運命が廻っていた。
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『垣根 真也』
身長:170
体重:78
好きな食べ物:ラーメン、唐揚げ、オムライス
嫌いな食べ物:納豆
趣味:筋トレ、能力開発、
最近の悩み:流行り廃りが速すぎて着いていけない!




