66.宝飾店マリアージュ
66.宝飾店マリアージュ
ヤモとマオが向かったのは商業街。
ここには商業ギルドの他にも様々な商店が軒を連ねており、もちろん指輪といったアクセサリーを扱う店も多くある。
商業街にある宝飾店は全部で四店。この四店舗は
王都だけでなく四大地方にも店舗を構えている有名店だ。
四軒のうちのどれかにニックが訪れている可能性がある。
ヤモとマオは一軒ずつ訪ねて聞き込みを開始することにした。
期待を胸に調査を開始したヤモとマオだったが…。
「ニック様というお客様は、当店には来店したことがございません」
四店中四店の店主全員が同じ答えだった。
顧客名簿を何度も確認し他の店員にも聞いてくれたが、ニックは四軒の宝飾店のいずれにも訪れていなかったのだ。
糸口になりえるはずだった手がかりは、呆気なく途切れて霧散していまう。
一縷の望みをかけていた最後の四軒目、老舗宝飾店の『マリアージュ』の店内で、ヤモとマオは打ちひしがれたように肩を落とした。
店内のきらびやかな宝石に反して、ヤモとマオの周囲だけどんよりとした雲に覆われているようだ。
そんな淀んだ空気感は店にとっては迷惑極まりないはずだ。
にも関わらず、女性店主のガーネットはむしろヤモとマオを案じてくれた。
「お力になれなくてごめんなさい。あの、もしかしたらなんだけどね…」
見るからに落ち込むヤモとマオを不憫に思ったのか、ガーネットが気遣うように口を開く。
「ニックさんという方は、個人で仕事をしている宝飾職人にオーダーメイドをしたんじゃないかしら」
「宝飾職人に…」
「おーだーめいどですか?」
「そうよ、オーダーメイド」
ふくふくしい顔を優しい微笑みを浮かべて、ガーネットは教えてくれた。
「うちもオーダーメイドを受け付けてはいるけど、それなりのお値段がかかっていまうのよ。ただ、個人で仕事をしている宝飾職人に頼めば宝飾店よりも値段をおさえつつアクセサリーを作ってもらえるわ。それに…!」
ガーネットは、ぴんっと人さし指を立てて続ける。
「依頼主自身が宝石や銀や金といったアクセサリーの材料を持ち込めば、さらにお値段をおさえられるのよ。もしかしたら、あなた達がお捜しの方はそれをしよとしているんじゃないかしら?」
ガーネットの話を聞き、ヤモとマオは顔を見合わせて頷いた。
ニックが四軒の宝飾店に訪れた形跡がないのは、個人で仕事をしている宝飾職人に依頼したから。
確かに、その可能性が高い。
ニックの蓄えがどれほどかは定かではないが、高級宝飾店で買えるほどの資金はなかったのだろう。
加えて、仕事は解雇になってしまっているのだ。
だとすれば、自身で材料を入手して宝飾職人に依頼するという可能性は納得できる。




