133.キッチン・かまど
133.キッチン・かまど
キッチン・かまどに帰って来たヤモとマオを、マクリール夫妻はこれでもかとばかりのごちそうとともに盛大に出迎えてくれた。
テーブルには、カウタウルスのランプ肉とそら豆のカルディア風グリルに具沢山ラタトゥイユ。
トゥーナとアボカドのタルタルサラダにボアピッグルの生ハムとミルティアクリーミーチーズをはさんだバゲットが並んでいる。
「おかえり、ヤモ!マオちゃん!」
「二人とも、おかえりなさい…!」
本来ならば今日は営業日のはずたが、臨時休業にしてヤモとマオを待っていてくれたのだ。
「コンラッド、ジーナ。ただいま、心配をかけてすまなかった」
「コンラッドおじちゃん、ジーナおばちゃんただいまです!」
ヤモの肩に乗っていたマオは、ぴょんっと跳んでコンラッドとジーナの胸に飛び込んだ。
コンラッドとジーナはマオを抱きとめると、慈しむようにして頬ずりをする。
ヤモが微笑ましく見ていると、マクリール夫妻はマオを抱きとめたまま片腕を横に広げた。
マオも振り返ってヤモを待っている。
「ほれ、ヤモ!お前さんも!」
「ヤモ、あなたもいらっしゃいな!」
「え、いや、私は…」
恥ずかしくてもじもじしていたヤモだったが、むうっと逡巡した後、そろそろとマクリール夫妻の腕の中へと歩み寄った。
マクリール夫妻はマオとヤモを力いっぱい守るように抱きしめる。
「みんなでなかよしです!」
マオが幸せそうに笑った。
マクリール夫妻の腕はヤモに腕に比べたら逞しいとはいえない。
けれど、なぜだろう。
どうしてこんなにも力強くて温かいのだろうか。
ヤモは実の家族に抱きしめられたことは一度もない。父母の腕は、いつもヤモを痛めつけるために使われていたから。
マクリール夫妻の腕もぬくもりも、実の父母のそれとは全く異なる。
血も繋がっていない、ましてや種族も違うのに。
二人は心からヤモてマオの身を案じて祈り守ろうとし、満ち溢れる愛情でヤモとマオを包みこんでくれている。
無意識にヤモは赤子が眠るかのように目を閉じた。
凍てついてこびりついていた過去が、じんわりと溶けてなくなっていくような気がする。




