1.はじまりの朝
1.はじまりの朝
―黎明暦七八九一年・四月
ステラ大陸において最大の国土を誇り、シリウス・ペンドラゴンによって治められている英雄国家・カルディア王国。
国の中心に位置する王都・シャングリラは、四大地方と呼ばれる東のセドナ地方、西のクロリス地方、北のホルン地方、南のバステト地方に囲まれている。四大地方は四大貴族によって統治されており、
それぞれが国と王都を守る要だ。
王都には流行を先取るブティック、劇場に人気の飯屋や大陸最大最強の冒険者ギルド、商業ギルドと職人ギルドが立ち並んでおり四大地方のみならず他国からも来訪する者が多い。
王都の中心部には国王が住まう王城・キャメロット城が威風堂々たる存在感を示していた。
剛健ながらも瀟洒な造りの王城は、四大地方や多国からの観光客も見物に訪れるほどだ。
さて、店主夫婦の人柄も良く料理も酒も旨いことで定評のあるキッチン・かまどは、王都の飲食街に店を構えている。
キッチンかまどは二階建て。二階が住居、一階が店舗という造りになっている。ちなみに本日は定休日。
二階にある一室が、リザードマンの女戦士・ヤモの居候部屋である。ヤモの齢は十八。
ヤモはいつも通り六時ぴったりに目覚めて身支度を済ませた。白い長袖シャツ、黒いベストと同色のトラウザーズ。簡素だが動きやすい服装だ。
ヤモはカーテンと窓を開けた。視界いっぱいに朝特有の清々しい朝日が広がる。
差し込む眩しい陽光にヤモは琥珀色の瞳を細めた。
四月の太陽の光が、リザードマンであるヤモのしなやかな筋肉質の身体を覆う銀色の鱗に反射してキラキラと輝く。
「おー、ヤモ!起きたか」
下から聞こえてきた声の方へヤモは視線を向けた。窓の下では、キッチンかまどの店主を務めるコンラッド・マクリールが手を振っていた。
強面のスキンヘッド。筋肉質な体格と褐色の肌には白いタンクトップと濃い色のジーンズが良く似合っている。
「コンラッド、買い出しか?」
「新メニューの試作しようと思ってよ、買い出しから帰って来たところさ。起きたなら、新作の味見を頼めねえか?」
コンラッドの背中には野菜と果物が入った籠が背負われていた。手には一目で鮮度が良いと分かるサモルの切り身が入った袋を持っている。




