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 正午ちょうど。

 世界中のスクリーンが、一斉に切り替わった。

 テレビ。

 スマートフォン。

 街頭ビジョン。

 地下鉄の広告モニター。

 どの画面にも映し出されたのは、同じ光景だった。

 ――帝都探索学園・地下。

 G.O.D本部の会見ホール。

 円卓ではなく、横一列に並んだ席。

 中央に篠原、その左右に各国代表と現場責任者が座っている。

 背後の巨大スクリーンには、

 「G.O.D 国際共同声明」の文字。

 ざわめきは、世界中に広がっていた。

 記者会見開始のアナウンスが響く。

 「これより、世界同時記者会見を開始します。

 発言者はG.O.D議長、篠原氏です」

 無数のカメラが、篠原に向けられる。

 彼は一度だけ深く息を吸い、

 静かに、しかしはっきりと口を開いた。

 「――本日は、皆様に重大なお知らせがあります。」

 形式的な挨拶。

 だが、誰もそれを聞いてはいなかった。

 次に来る言葉を、世界が待っている。


 「結論から申し上げます」

 篠原は、原稿を見なかった。

 そのまま、まっすぐ前を見据える。

 「異世界は、存在します」

 一瞬。

 音が、消えた。

 次の瞬間――

 爆発したような反応が、世界中を包んだ。


 「は!?」

 「異世界って、あの異世界!?」

 「フェイクニュースだろ!?」



 会場内の記者たちが一斉に立ち上がる。

 怒号。

 フラッシュ。

 同時通訳の音声が重なり合い、

 空間そのものが揺れているかのようだった。

 だが、篠原は続けた。

 「確認されている事実のみをお伝えします」

 背後のスクリーンが切り替わる。

 そこに映し出されたのは――

 新宿上空に出現した“門”の映像。

 「この“門”は、地球と異なる世界――

 我々が暫定的に“異世界”と呼ぶ領域へと接続されています」

 「現在までに、複数回の安全な往来が確認されており、

 調査は国際管理のもとで進行中です」

 記者の一人が叫ぶ。

 「異世界人は存在するんですか!?

 敵意は!?侵略の可能性は!?」

 篠原は、即答した。

 「知的生命体は存在します」

 どよめきが、さらに膨れ上がる。

 「ただし、現時点で地球に対する明確な敵意や侵略行動は確認されていません。

 我々は、あくまで“調査段階”にあります」

 別の記者。

 「門は日本にしかないんですか!?

 他国にも出現する可能性は!?」

 「門の出現条件については調査中です。

 特定の国家が独占するものではありません」

 その一言で、各国のSNSが一斉に燃え上がった。

 凛は、会場の端で静かにモニターを見つめていた。

 想定通り。

 それでも、現実として突きつけられると重い。

 悠真は、陪席の後方で、ただ黙ってその光景を見ていた。

 (……もう、戻れないな)

 世界は、確実に“門”を知った。


 記者の声が、鋭く切り込む。

 「異世界はどのような環境になっているのですか?」

 一瞬、会場の空気が張り詰めた。

 篠原は、慎重に言葉を選ぶ。

 「――異世界環境下では、地球とは異なる物理・エネルギー法則が存在します」

 「その影響については現在分析中であり、

 現在、一般の方が異世界に立ち入ることは、一切認めていません」

 「安全が確認されるまで、

 門は厳重に管理されます」

 この一言で、

 “誰でも行けるわけではない”という現実が示された。

 質疑応答の終了が告げられる。

 「これにて会見を終了します。

 詳細は、後日改めて発表いたします」

 マイクが切られた瞬間。

 世界は、完全に騒然となった。


 SNSは崩壊寸前。

 株価は乱高下。

 宗教団体、陰謀論者、科学者、軍事評論家――

 あらゆる立場の人間が、一斉に語り始める。

 異世界は存在する。

 それだけが、確定した事実だった。


 会見場を後にする途中、

 凛が悠真の横を歩きながら小さく言った。

 「……これで、もう隠せないわね」

 悠真は、ゆっくり頷く。

 「はい。でも――」

 彼は一度、言葉を切った。

 「繋がったんだと思います。

 世界と、あの向こう側が」

 凛は何も言わず、ただ前を見ていた。


 その頃――

 エルテラ、魔王領の奥深く。

 どこかで、誰かが笑った。

 世界は、扉を開いた。

 それが、祝福か。

 それとも、破滅への第一歩か。

 答えを知る者は、まだ誰もいない。



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