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魔王領前線から戻った直後。

アルセリア郊外、臨時観測拠点。

まだ空気には、

“沈黙した世界”の余韻が残っていた。

魔導通信装置が低く唸り、

次の瞬間、青白いホログラムが展開される。

そこに映ったのは――篠原だった。

疲労の色は濃い。

だが、その目ははっきりとした決断を宿している。

『……第零班。聞こえるか』

「聞こえてます!」

悠真が即答する。

篠原は一拍置いてから、告げた。

『本部の総合判断だ。

お前たちは一度、地球へ帰還しろ』

黒瀬が思わず声を上げる。

「え? いま帰るのか?

 ちょうどヤバそうなの来てるだろ、ここ」

神谷も眉をひそめる。

「前線を放棄する判断にしては、早すぎる」

篠原は首を振った。

『逆だ。

ここから先は、お前たちだけの判断で踏み込む段階じゃない』

ホログラムが切り替わり、

地球側の複数拠点、各国支部の映像が並ぶ。

『アルセリア、魔王領、

そして“地球とエルテラが正式に接続された”という事実――

もう隠しきれん』

一瞬の沈黙。

『この件は、世界規模の判断になる。

十支族も、各国政府も、無関係ではいられない』

悠真は歯を噛みしめる。

「……逃げろ、ってことじゃないんだな」

『違う』

篠原は即答した。

『準備を整えるために、一度戻れ。

次に行く時は、“調査”でも“護衛”でもない』

黒瀬が苦笑する。

「本番ってやつか」

レオンが腕を組んだまま言う。

「ちっ……やっと面白くなってきたところだってのに」

篠原の視線がレオンに向く。

『グレンデル卿。

あなたは――アルセリアに残れ』

レオンが目を細める。

「俺は囮か?」

『外交窓口だ。

お前がいることで、向こうは“地球が本気だ”と理解する』

レオンは数秒黙り、

それからニヤリと笑った。

「なるほどな。

 ……じゃあ俺は、こっちで暴れすぎねぇようにしとく」

最後に篠原は悠真を真っ直ぐ見た。

『悠真。

お前は今、“世界の中心”に立っている自覚を持て』

『帰還後、すぐに本部へ来い。

話は――山ほどある』

通信が切れる。

沈黙。

悠真は、ゆっくりと息を吐いた。

「……帰るか」

黒瀬が肩をすくめる。

「修学旅行の帰りみてぇだな」

神谷は静かに言った。

「いや。

 これは――嵐の前だ」

レオンは背を向け、アルセリアの空を見上げる。

「安心しろ、相原。

 お前が戻る前に、この世界が滅ぶことはねぇ」

「……頼む」

「任せとけ」

こうして第零班は、

再び“門”へ向かうことになった。

だが――

彼らが知らないところで。


魔王領・深層。

黒曜石で築かれた円形の玉座室。

天井には、歪んだ星図のような魔導陣が浮かぶ。

そこに集うのは――

魔王たち。

深淵姫リグレアは、

一段高い玉座から静かに見下ろしていた。

「……ゼロは、地球へ戻った」

ざわめきが走る。

その中で、低く、愉快そうな笑い声が響いた。

「――なるほど。

 世界の座標が確定した、というわけか」

声の主は、

血色のローブを纏う魔王。

第3の魔王――

《覇界王ザル=エグザ》。

「育成だの観測だの、随分と悠長な話だな、リグレア」

リグレアは冷たく返す。

「ゼロは“育てる価値がある”。

 軽率に刺激すべき存在ではない」

ザル=エグザは肩をすくめた。

「だからこそだよ。

 ゼロが守ろうとする世界を、先に壊す」

魔族参謀が膝をつく。

「門は……双方向。

 理の揺らぎを辿れば、干渉は可能かと」

ザル=エグザの目が光る。

「なら決まりだ」

「準備を始めろ。

 侵略対象――地球」

リグレアは、ゆっくりと立ち上がった。

「……好きにするがいい」

「だが覚えておけ。

 ゼロは――強いぞ」

ザル=エグザは嗤った。

「それでいい。

 だからこそ、戦争は面白い」

魔王領の奥で、

新たな“災厄”が静かに動き出す。



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