B-58 第5番ハ短調
「聴覚障がい…アイツ耳聞こえないのか?」
「一応補聴器は着けているのでござるが…」
「そこら辺、詳しく聞かせてもらえるか?」
--------------
エヴィリゴンの攻撃から拙者達は何とか逃げ延びた
やっとの思いで逃げ延びた
が、本物の地獄は、幼い拙者達にとって始まったばかりだった。
食料も、水も
まともに取ることができなかった。
周囲に居る小動物や虫を捕まえて食べる
まだあの頃は、火を自力で起こすなど出来なかった
そのため、食べる時は基本的に
そのまま千切って食べ 千切って食べ
そんな生活が続いたでござる
ただ苦しいだけの生活
兄上は大分疲れ切っていたでござる
そんなある日
兄上に声を掛けても振り向いてくれなくなった
兄上の耳は、聞こえなくなったでござる
保護されてから解ったことにござるが
あまりの苦境によるストレスと
不規則かつ不清潔な生活による耳内部の腐敗
これが原因でござった。
保護されてからも、今のような優しい兄上に戻るまでは
大分時間がかかったにござる。
人工内耳での治療も可能ではござったが
リハビリによる、これ以上のストレスを避ける為に
拙者から頼んで補聴器を付けさせて貰うようしたのでござる。
あと、兄上が拙者の髪が青いのは
染めてるからでござる。
兄上、自分の髪の色を見ていると苦境を思い出すからと言って
自ら髪を染めたのでござる
~続く~




