第九十五話「世間の反応ですわ、おほほほほ」
記者会見の様子はラジオ中継されている。
ストリーミング配信もされている。
テレビに関しては、作ると色々面倒なことになるからとハルカが作らなかったので中継の前にそもそも存在していない。
「婚約破棄された時と今とではやはり心境の変化がありますか?」
「ええ、あの時は『絶対後悔させてやる』と思っておりますわ。
ちゃんと後悔していただいて『ざまぁ』となったので今はなんの遺恨もありませんのよ、おほほほほ」
別室でアカリは「言い方が完全に悪役ですわ」と頭を抱えている。
たまたま巷でラジオを聞いた国民達は「落ち着くところに落ち着いた」と思っていた。
因みにここ数年、誰が広めたか不明だが、黄鉄鉱のネックレスが流行していた。
世間の反応はだいたい祝福ムードであった。
もとよりヨシチェックが「ハルカ嬢がいないとダメ」になっていたのと同様に、国家としてハルカが作った成果物全てに依存していたので当然ではある。
中継が切り替わりクラウディア中央政府広報室から、ボブ・エンクリプションが祝辞を述べた。
「まさかクラウディアを代表する大企業を立ち上げた後に星の裏側まで行って、最終的に王太子の婚約者に戻るとは思っていなかったぞ!」
「おほほほほ、オン・ザ・クラウドホールディングスは引き続きわたくしが経営いたしますのよ。
ところで、クラウディアの中央銀行で温泉に出資しませんこと?」
ただ、唯一慌てた集団がいた。
アプリシア最大派閥の宗派である。
突然ハルカが「義務教育ですわ、おほほほほ」と言って協力させられた。
結果、傘下の礼拝院は「こっちの方がちゃんとしたビジネスになる」と教育事業に転換し、布施が中央に集まらなくなった。
病人に対して効果の有無に関わらず祈ってるふりをしていれば金が入ってきていたが「国民皆保険制ですわ、おほほほほ」「地域医療ですわ、おほほほほ」「王立病院ですわ、おほほほほ」「電子カルテですわ、おほほほほ」「ペニシリンですわ、おほほほほ」
挙句に神の聖域とされる空を飛び始めた。
「奴は今アプリシアにいる!
放っておいたらまたすぐに国外に行ってしまう!
この機を逃すな!
異端審問にかけて殺してしまえ!!」
そうして異端審問官と武装僧侶の部隊がベニー家王都邸を無断捜索し始めた瞬間にラジオ中継が始まった。
国内最大宗派が王家に反逆したことが確定した瞬間であった。
中継の裏で文部科学大臣が緊急招集されていた。
解散命令まで秒読みである。
ラジオ中継がアジャイリアと繋がった。
ヤムが祝辞を述べる。
「俺の目には、お前さんたちはずっと婚約者同士にしか見えていなかったぞ?
なんだかんだ言ってお前さん、腹の中ではアプリシアの国益を天秤にかけてるのバレバレだったからな!」
「おほほほほ…まぁ、うちの陛下にも同じようなこと言われましたわ」
「続いて、外務大臣のストラッツさんです」
アジャイリア日日新聞の記者が凍りついた。
「この流れ、聞いてねぇよ!」




